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【Web版】追放幼女の領地開拓記~シナリオ開始前に追放された悪役令嬢が民のためにやりたい放題した結果がこちらです~  作者: 一色孝太郎


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第159話 追放幼女、街壁の視察をする

 メレディスに魔法の鍛練をしてもらうようになってから一週間が経過した。


 一気にやることが増えて最初こそ大変だったが、今ではもうすっかり慣れてしまい、特に朝練はやらないと一日が始まった気がしないほどになっている。


 なんていうかさ。自由に体を動かせるって、やっぱり最高だよね!


 と、あたしの個人的な話はさておき、最近は執務がものすごくやりやすくなっている。というのもジェイクとアンソニーが本当に優秀なのだ。


 書類の形式を整えてくれ、さらに案件ごとにマリーを含めた三人のうち誰かが担当するという形で仕事が進むようにしてくれた。そのおかげもあり、あたしが執務に割ける時間が減ったにもかかわらず、以前よりもスムーズに政務が回るようになった。


 さすが、お城で文官をしていただけはあるね。


 と、そんな折、執務室で執務をしていると珍しくロイドがやってきた。ロイドは(ひざまず)いてから口を開く。


「閣下、ご報告申し上げます」

「うん。どうしたの?」

「はっ! ご命令いただいておりました、街壁の強化が完了いたしました」

「あれ? もう終わったの? 早いね」

「恐縮でございます」


 そう言ったロイドはそのままじっとあたしの目を見つめてくる。


「うん。ありがとう」

「はっ!」


 やはりロイドはじっとあたしの目を見てくる。


「……」

「……」


 ……どうしろと?


「あー、うん。そうだね。じゃあ……視察に行こうかな」


 沈黙に耐え切れず、予定にはなかったがついそんなことを口走ってしまう。


「かしこまりました。ご案内いたします」


 こうしてあたしはロイドたちが強化してくれたという街壁の視察に向かうこととなったのだった。


◆◇◆


 ロイドに案内され、あたしは南側の街壁にやってきた。


「いかがでしょうか?」

「え? うーん……」


 どうって言われても……。


 困惑しつつも、目の前の石積みの壁をじっと見てみる。


 あー……たしかに、なんか魔力を感じる……ような?


「なんだか、魔力を感じる気がするね」

「は。強化いたしましたので」

「そうなんだ……」


 でも、そんなこと言われてもちゃんとできているのかなんて分からないんだよね……。


「あ! そうだ!」

「なんでしょうか?」

「あのさ。土の精霊魔法って、どんなことができるの?」

「……そうですね。今ご覧いただいておりますのは、土の精霊による干渉を防ぐ魔法でございます」

「精霊魔法って、精霊に魔力を渡して発動するんだよね?」

「は。そのとおりでございます」

「じゃあ、この干渉を防ぐ魔法が掛かっていると精霊がこの壁に干渉できなくなるってこと?」

「は。そのとおりでございますが、絶対に干渉できなくなるというわけではございません」

「そうなんだ。じゃあどうすれば干渉できるの?」

「土の精霊に、より大きな魔力を与えれば無効化される可能性はございます」

「されないこともあるの?」

「は。そのとおりでございます」

「どうしてされたりされなかったりするの?」

「……説明が長くなってしまいますが、よろしいでしょうか?」

「うん」

「かしこまりました。まず、土の精霊魔法にはやりやすいこととやりにくいことがあり、やりにくいことをしようと思えば多くの魔力が必要となります」

「そうなんだ。例えば?」

「岩を動かすといったことは簡単にできますが、岩を変形させるにはかなりの魔力が必要となります」


 なるほどね。そういう感じなんだ。


「じゃあ、落とし穴を掘ったりするのはできるってこと?」

「可能ですが、あまり落とし穴を掘るという目的で使うことは致しません。やるとすれば、堀を掘るときぐらいでしょう」

「なんで?」

「残滓が残ってしまいます。ですから、魔力を扱う訓練を受けたものが見れば落とし穴の位置は容易に見抜けてしまいます」

「そうなんだ。その残滓ってどのくらい残るの?」

「そうですね。使った魔力の量にもよりますが、少なくとも数年は残るでしょう」

「そんなに? それじゃあ落とし穴にはあんまり使えないかもね」

「は」


 ロイドはそう言ってじっとあたしの目を見てくる。


「……あ、そういえばさ。水堀を深くする工事も魔法でやればすぐってこと? だって、精霊に堀の底を深くしてってお願いしたら、パッて深くなるんじゃない?」

「いえ。恐れながら、そのような魔法は不可能です」

「どうして?」

「精霊とて、万能な存在ではございません。土の精霊に魔力を渡したとしても、そこにある土や岩を消滅させることはできません。精霊にできることは概ね移動させること、そして形を整えることとなります」

「そっか。じゃあ、壁をパッて作ることもできないってこと?」

「仰るとおりです。もちろん、岩を移動し、変形することで壁を作ることは可能ですが、大きくなればなるほど膨大な魔力が必要となるでしょう」

「あ、なるほどね。で、横穴を掘るのなら割って移動させるだけだからそこまでの魔力は要らない。だから阻害する魔法を掛けるんだね」

「仰るとおりです」


 ロイドは真顔のまま、小さく(うなず)いたのだった。

 次回更新は通常どおり、2025/11/16 (日) 18:00 を予定しております。

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― 新着の感想 ―
領の外の方々の動向はどうなってますか? そろそろ動きがあるかと思います。 季節が変わり目に何かがありそう。
落とし穴が無いと思わせておいて スケさんや~作っておくれ が使えるわけですね 魔力残滓のある落とし穴の横に、残滓の無い落とし穴
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