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第155話 追放幼女、魔力を見てもらう

 執務をこなしているとあっという間に時間が経ち、気付けば夜を迎えていた。そうして自室で休んでいると、メレディスがやってきた。


「我が主、夜の鍛練の時間です」

「うん、よろしくね。外に出る?」

「いえ、今日はここで問題ありません」

「そっか。分かった」

「はい。では早速ですが、普段はどのような訓練をしていますか?」

「普段? うーん、特に何もしてないよ。サウスベリーで軟禁されてたときは、練習代わりにあの世に行きそびれた魂を送っていたけど」

「なるほど。では、その魂を送る魔法を使ってみてください」

「え? いいけど、何も起きないよ?」

「問題ありません。我が主の魔力の扱いを見るだけです」

「分かった」


 あたしは窓に向かって葬送魔法を発動した。もちろん行きそびれた魂はいないので、何も起こらない。


「メレディス、これでいい?」

「ええ。肩を失礼します」


 メレディスはそう言うと、あたしの後ろから両肩に手を置いてきた。


「もう一度お願いします」

「うん」


 あたしはもう一度葬送魔法を発動しようとしたが、なんと何かに邪魔されて上手く発動できなかった。


「あ、あれ?」

「……」


 メレディスの手になぜか少し力が入っている。


「あ、あのさ。メレディス、なんだかよく分からないんだけど魔法が発動しなくて……何かに邪魔されてるような気がするんだけど……」

「……」


 メレディスはなおも黙っている。


「メレディス?」


 あたしは首を反らせてメレディスの顔を見上げる。するとメレディスは険しい表情であたしを見下ろしていた。


「ど、どうしたの?」


 するとメレディスは突然あたしの肩から手を放した。


「ひゃっ!?」


 いきなり支えが無くなりバランスを崩しかけたが、メレディスがすぐに支えてくれる。


「失礼しました」

「う、うん。ありがと」

「いえ」


 そう言ったメレディスの顔は険しいままだ。


「ねぇ、メレディス、どうしたの?」

「……いえ」


 メレディスは険しい表情のまま腕組みをした。じっと何かを考えているようだ。


「メレディス? 訓練をするんじゃないの?」

「……ええ、そうですね。そのつもりだったのですが、悩んでいます」

「えっ!? どういうこと!? 教えてくれないってこと? 命に(かか)わるって……」


 メレディスの表情は険しいままで、意地悪をしようとしているわけじゃなさそうなのは分かるけど……。


「はい。だからこそ、です」


 ……どういうこと?


「先ほど、我が主の魔力の流れに介入し、わざと魔法を発動できないように妨害しました」

「う、うん……」

「……」


 メレディスはじっと黙ってあたしの目を見てくる。


「メレディス?」

「……そうですね。端的に言って、我が主の魔力の器はあまりにも大きすぎるのです」


 え? あ! うん。それはそうかもしれないけど……。


「今はまだ、大人が抑えられる程度なので問題ありません。ですが、正しい訓練をすれば爆発的にその魔力量は増加するでしょう。そうなったときに、我が主の肉体は果たしてその魔力に耐えられるのか。それに、万が一暴走したら……」

「暴走? って何?」

「魔力が制御を失うことです。何が起こるのかは分かりませんが、アタシなら火の精霊たちが暴れ、周囲は焼け野原になるでしょうね」


 ……そんなことが!


 って、そういえばミュリエルが火属性で事故が起きたら大変だから鍛錬をさせてもらえないって言っていたけど、そういうことか。


「我が主の魔力は闇。神に通じる闇の魔力が暴走したとき、果たして何が起こるのか……」

「……禁書庫の本にはなんて?」

「いえ、何も」


 メレディスはそう言って首を横に振った。


 そっか。対応する属性の精霊が暴れるってことは、あたしの魔力だと冥界の神が暴れるってことかな?


 しかもあたしの意志なんて関係なしに暴れるとなると、一体どれだけの人が犠牲に……!


「……あのさ」

「はい」

「そっか。それで、どうなると暴走するの?」

「心が乱れることです」

「え?」

「特に強いショックを受けた場合などですね」

「強いショック……」

「はい。例えば……そうですね。我が主ですと、マリー嬢が目の前で殺された場合に恐らくは」

「っ!」


 マリーが!? そんなこと!


「我が主、そういうところです」

「え? あ……」

「まだ我が主はご自身の感情を制御できていません。その状態で魔力を伸ばすことは危険の方が大きいでしょう」

「……」


 何も言い返せない。けど、魔力が強くないと次に生物学上の父親が攻めてきたら!


「でも……あたし……」


 メレディスも困っているようで、険しい表情のまま腕組みをしながらあたしの目をじっと見てきている。


 そのままじっと見つめ合っているとメレディスは表情を崩し、小さくため息をついた。


「……我が主。約束できますか? 魔力を伸ばすための訓練はしないと」

「え? それって……」

「ええ。魔力の制御を学ぶことは我が主の命を守ることにもつながります。ですが、制御と魔力を伸ばすための訓練は表裏一体です」

「っ! うん! 約束する!」

「魔力を伸ばす訓練をしていないか、毎回確認させてもらいますよ。それでもよろしいですか?」

「うん!」

「……分かりました。それでは、魔力の制御についてお教えしましょう」

「ありがとう!」


 こうしてあたしはメレディスに魔力の制御を教えてもらうことになったのだった。

 次回更新は通常どおり、2025/10/19 (日) 18:00 を予定しております。

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― 新着の感想 ―
裏ボスにここまで言わせるなんて!(乾いた笑い)
ローレッタの授業を受けて言葉遣いも気を付けるように言われているのに、「あたし」「うーん、特に何もしてないよ」「うん! 約束する!」みたいな、平民みたいな?言葉遣いのままなのが気になります。 陛下の前と…
もしかして暴走したら死者生者問わず魂を送ることになる?
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