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第122話 追放幼女、叙任式に臨む

2024/04/21 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました

2024/05/24 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました

 翌日の午後、あたしは再び謁見の間にやってきた。もちろん騎士の叙任式をするためだ。そこには王様や騎士たちだけでなく、ギャラリーらしき廷臣たちの姿もある。


 正直言って気乗りはしない。でもあたしは領主だ。あたしには領主として、スカーレットフォードを守る義務がある。


「オリヴィア嬢、見なさい。彼らがそなたに忠誠を誓いたいと志願した者たちだ」


 王様はそう言って誇らしげにずらりと並んだ騎士たちを指さした。そのほとんどは昨日見た若いイケメンたちだが、その中に数人のおじさんも交じっている。


 ふうん。あれが金鉱山を乗っ取るための文官かな。


 なんてことを考えているとバレないように、あたしは夢が(かな)って喜ぶ少女を演じる。


「はい! 陛下、ありがとうございます! とっても素敵な騎士様たちですわぁ」

「うむ。儀式のやり方は覚えておるか?」

「はい!」

「そうかそうか。では始めるとしよう」


 国王はニヤリと笑みを浮かべる。


「騎士の諸君! よくぞ集まった! この場に集まった諸君はこちらの麗しきレディに剣と忠誠を捧げたいと真に願う者たちで相違ないか!」


 すると騎士たちは一糸乱れぬ動きで一斉に顔の前で剣を掲げた。


 えっ!? 何あれ? もしかしてあれが敬礼のポーズなのかな? すごいなぁ。


 初めて見る本格的な騎士たちの仕草に思わず見とれてしまう。


「よろしい。では騎士爵ロイド・スカーフ!」

「はっ!」


 一人の騎士が剣を降ろし、前に出た。そして剣を鞘に納めると、まずは王様の前で(ひざまず)き、両手で鞘に納められた剣を差し出す。


 王様はそれをむんずと受け取る。


「うむ。これまでのそなたの忠義に感謝するぞ」

「はっ! 陛下に忠義を捧げられたこと、一生の誇りであります!」


 王様は鷹揚に(うなず)くと、あたしに剣を差し出す。


「さあ、そなたの騎士に剣を授けてやりなさい」

「はい!」


 あたしはもう一段テンションを上げて返事をすると、剣を受け取った。


 う……重い! でも持ち上げられないほどじゃない!


 あたしはなんとか剣を鞘から抜いた。するとロイドがあたしの前にやってきて両ひざをついたので、その肩に剣を載せてやる。


「ロイド・スカーフと言いましたね?」

「はっ!」

「お前は自らの意志で、わたくしに剣と忠誠を捧げるのですね?」

「はっ!」

「よろしい。ならばお前の忠誠を、王と臣民の前で神に宣誓なさい」


 あたしはそう言って、誓約の魔法陣を展開した。魔力の扱いにもかなり慣れたこともあり、ウィルたちのときよりもかなりコンパクトに展開できている。これならば遠目にはほとんどわからないだろう。


「一度宣誓をすれば、それを(たが)えることは(かな)いません」


 ロイドは少し驚いた様子だが、すぐに宣誓を始める。


「宣誓! 私ロイド・スカーフは! オリヴィア・エインズレイを主とし!


御身を守る盾となり!


御敵を討つ剣となり!


裏切ることなく!


欺くことなく!


礼節を重んじ!


己と主の品位を高め!


正々堂々と振る舞う!


騎士たらんことをここに誓う!」


 魔法陣はロイドの中へと吸い込まれていった。


 ロイドは騎士爵と呼ばれていたし、きっと貴族なのだろう。だが、もはやロイドはあたしを裏切ることはできない。


 そう。たとえロイドがどれだけ強い魔力を持っていたとしても。


「我が騎士ロイドよ。お前の働きに期待します」


 少しの罪悪感に無理やり蓋をして、剣を鞘に納めて差し出す。ロイドは恭しくそれを受け取った。


「下がりなさい」

「はっ!」


 ロイドは立ち上がり、下がっていく。


「オリヴィア嬢、先ほどの魔法はなんだね?」

「え? ええ。物語にこのようなシーンがありましたの。だからわたくし、ずっと似たような演出ができないか試していたんですわ。素敵だったと思いませんこと?」

「む? そ、そうか。そうだな。とても良かったと思うぞ」

「はい!」


 王様はあっさりと(だま)されてくれた。意外とチョロい……ううん。油断は禁物! ちゃんと最後まで演じきらないと!


「さて、次だな。騎士爵ジェイク・ガーランド!」

「はっ!」


 今度は乗っ取り要員らしきおじさんが呼ばれ、同じように宣誓をさせた。そのまま次々と誓約をさせていくうちに、騎士たちの年齢はどんどん若くなっていき、身分も騎士となった。


 そうして最後の騎士の誓約が終わる。


「騎士アリスター・エマーソン。お前の働きに期待します」

「はっ!」


 あたしが差し出した剣をアリスターは恭しく受け取った。


「下がりなさい」

「はっ!」


 アリスターが下がっていくと、王様があたしに声を掛けてくる。


「オリヴィア嬢、実に見事な叙任し――」


 バァン!


 王様が言い終わる前に、けたたましい音と共に入口の扉が乱暴に開け放たれる!


「何者だ! 神聖な叙任……げぇっ!?」

 次回更新は通常どおり、2025/04/20 (日) 18:00 を予定しております。

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― 新着の感想 ―
これは国を変えるかトップ層の首を変えないとダメだな
表面上は唯々諾々と従ってるけど、しっかりやり返してるのがいいなぁ。
げぇ!?関羽!!(違う) これは未来の悪役令嬢w
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