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【Web版】追放幼女の領地開拓記~シナリオ開始前に追放された悪役令嬢が民のためにやりたい放題した結果がこちらです~  作者: 一色孝太郎


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118/162

第118話 追放幼女、お出かけデートをする

2025/06/19 誤字を修正しました

「あれ? 誰だろう」

「応対して参ります」


 マリーがすぐに扉のほうへと向かう。


「どちら様でしょうか?」

「失礼いたします。私はニコラス殿下の専属執事をしておりますエルマー・サージェントと申します。殿下より、お嬢様への手紙をお預かりしております」


 へぇ。ニコラスの専属執事かぁ。そういえば名前はなかったけど、たしか専属執事が登場してたっけ。イケおじだったような記憶がぼんやりとあるけど、もしかして同じ人かな?


 そんなことを懐かしく思い出していたが、別にそのイケおじ執事が推しだったわけでもないのでわざわざ確認しようとは思わない。


「……ありがとうございます。確かに受け取りました」

「お返事をいただくよう、言づけられておりますので待たせていただいても?」

「わかりました。少々お待ちください」


 それからすぐにマリーが戻ってきて、封筒を差し出してくる。


「ニコラス殿下からだそうですが、開封してもよろしいですか?」

「うん」


 マリーが封筒を開け、中から手紙を取り出した。


「どうぞ」

「うん……なんか、明日また会いたいって」

「……そうですか。いかがなさいますか?」

「うーん……どうしようかなぁ」


 かなり気をつかわなきゃいけないから気乗りはしない。かといって邪険にするのもなぁ。


「お断りしますか? あまり気乗りしていないようですが」

「うん。そうなんだけど……あんまり良くないよねぇ?」

「はい。理由があるのであれば話は別でしょうが……もしや殿下が何か無礼なことを?」

「ううん。ものすごく紳士的だった」


 そう。子供とは思えないくらい紳士的で、まるでゲームのキャラクターみたいだった。


「であればなぜ?」

「なんかさ。ちょっと変っていうか……」

「変?」

「うん。なんていうか、こう、完璧すぎるっていうか、人間っぽくないっていうか、そんな感じなんだけど……」


 するとマリーは不思議な表情であたしのことをじっと見てきた。


「え? 何?」

「いえ。そういうことでしたら、明日のお誘いはお受けになられたほうがよろしいかと」

「そう?」

「はい」

「そっか。マリーが言うならそうするよ」

「はい。ではお返事をお書きになってください」

「うん」


 こうしてあたしはニコラスに誘いを快諾する手紙を書くのだった。


◆◇◆


 翌朝、約束の時間にやってきたニコラスに連れられ、あたしは城下町へとやってきた。あれからずっと雪が降っていないこともあってか、完全に除雪された路面はすっかり乾いている。そんな道を大勢の衛兵に囲まれながら、あたしはニコラスにエスコートされて歩いている。


 ちなみに今日の服はサイモンが手配してくれたシルクの外出用のローブの上にクレセントベアのコートを羽織り、幅広で造花の飾りがついたヴェール付きの帽子を被って髪を隠している。


 あたしはすでにスケルトンに乗って行進しているので、完全に目立っている。そんなあたしが第三王子と一緒に外出していると知られれば余計な憶測を市民に与えかねない。


 それに黒髪、嫌がる人は嫌がるらしいしね。最近はすっかり忘れていたけれど。


「オリヴィア嬢、あれがルディンハムの名物の時計塔です」


 ニコラスの指さした先には、まほイケで何度となく見た大きなとんがり屋根の塔がある。その屋根の少し下の部分には巨大な時計があり、今は十時三十五分ごろだと教えてくれている。


「まぁ、あれが……立派ですわね」


 ちなみにあの時計塔は魔法学園に併設された大聖堂の一部で、授業の開始と終了を告げる鐘を鳴らしている。そのため教会の鐘とは鳴る時間が違うのだそうだ。


「はい。塔の上部に二つの針と一から十二までの数字が書かれているのが見えますか?」

「ええ」

「あれは時計と言いまして、短いほうの針が時間、長い針が分を表しているのです」

「ええ。今は十時三十五分、ですわね」

「え? オリヴィア嬢はあの時計をご存じなのですか?」


 ……うん? どういうこと?


「ルディンハムに来たのは初めてですわ」


 するとニコラスは困ったような表情を浮かべた。


「いえ、そうではなく――」

「殿下」


 何かを言おうとしたニコラスにエルマーが耳打ちした。


 ちなみにこのエルマーという執事だが、雰囲気が似ているので多分まほイケで専属執事をしていたあのイケおじ執事だと思う。ただ、何を考えているのかよく分からないのであたしはちょっと苦手かな。


 そんなエルマーの耳打ちを聞いたニコラスはいつもの完璧な王子様スマイルに戻り、あたしに提案をしてくる。


「オリヴィア嬢、時計塔に登ってみませんか?」

「……ええ。喜んで」


 何を耳打ちされたのかは気になるが、この様子だと話してはくれなさそうだ。


 ちょっと困った表情は人間っぽかったんだけどなぁ。


「さ、足元に気を付けて」

「ええ」


 あたしはニコラスにエスコートされ、時計塔のほうへと向かうのだった。

 次回更新は通常どおり、2025/03/23 (日) 18:00 を予定しております。

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― 新着の感想 ―
時計塔 それほど背が高いのなら、展望は良さそうですね デートスポットになるのもわかる!
時計塔がデートスポット?
この王子何がしたいのかな 時計なんて見た事ないだろう時間の見方も知らないだろうと思ってたのはわかるけど 耳打ちされて時計塔に登って次は何を?国王の差し金なのかな。 マリーが乗り気じゃない幼女男爵に行っ…
2025/03/17 09:20 退会済み
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