第102話 追放幼女、再びシルバーウルフと戦う
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2025/06/19 誤字を修正しました
翌朝、回復した魔力で五体のスケルトンを追加で作り、残りはワイルドボアのスケルトンの背中に積んで出発した。
ちなみにこのシルバーウルフのスケルトンの分類はハスキーにしたよ。シルバーでも良かったんだけど、どうやら他にもシルバーなんちゃらって魔物がいるらしいんだよね。だからシルバーはそっちに残しておこうかなって。そう言って使わない気もするけど。
と、そんな余談はさておき、今日もあたしたちは丘を登っては谷底へと降り、川を渡ってまた登るというのを繰り返していた。
そうしてそろそろお昼ご飯にしようかと思っていたそのとき、再びあたしたちは襲撃を受けた。
昨日とまったく同じで、突然どこからともなく攻撃を受け、氷の塊が飛んでくる。
シルバーウルフだね。
そう思ったのと同時にシルバーウルフが姿を現し、先頭にいたフォレストウルフのスケルトンの首に噛みついた。
「ガウゥゥゥ!」
シルバーウルフは首をブンブンと振るとスケルトンの首は簡単に折れ、頭部と胴体がバラバラになって散らばった。
フォレストウルフの骨はそのまま塵となって消滅してしまう。その様子はゴブリンメイジのスケルトンが消滅したときとそっくりだ。
ううん。やっぱりね。じゃあ、シルバーウルフの攻撃にはきっと魔力が乗っているってことで良さそうだね。
「ハスキー-1から10、あっちのウルフたちを援護。シルバーウルフを倒して」
カランコロン。
うっすらと冷気を纏いつつ、シルバーウルフのスケルトンたちはものすごい速さで疾走していった。
すごい! 速い! フォレストウルフなんかとは比べ物にならないくらい速い!
「グルルルル!」
「キャウン!」
「キャンキャン!」
フォレストウルフのスケルトンと戦っていたシルバーウルフに次々に噛みつき、見る見るうちに倒していく。
「うわぁ……強いね……」
「はい。そうですね……」
なんだかドン引きするくらい強い。スケルトンは素になった動物の能力をある程度引き継ぐようなので、シルバーウルフはもともとあれくらい強いってことなんだろうけど……それを考えるとよくフォレストウルフのスケルトンたちで倒せたよね。
あ! でもそうか。数がこっちのほうがずっと多いし、ちょっとやそっとなら倒れたスケルトンって立ち上がるし、それにクレセントベアのスケルトンもいるし、それに何より、ちゃんと連携するもんね。
そんなことを考えつつも様子を見守っていると、スケルトンたちがシルバーウルフの群れをやっつけてくれた。
今回倒した群れの数は十五匹だ。昨日よりも少なかったけれど、こちらにも被害が出ている。
やられたのはフォレストウルフのスケルトンが七体、さらにクレセントベアのスケルトンにも一体の被害が出ている。
ただ、シルバーウルフのスケルトンが一体もやられていないのは朗報かな。
それからすぐに倒したシルバーウルフの死体が運ばれてきた。すぐさまゴブリンのスケルトンたちが解体を始めるのだが……。
「あれ? ねえ、マリー。なんだか様子がおかしくない?」
「どういうことでしょう?」
「ほら。なんか解体している動きがぎこちない気がしない」
「そうなのでしょうか? 私にはよく分かりませんが……」
「うん。ちょっとストップ」
あたしは解体作業を止め、シルバーウルフの死体に近づいた。
「うーん?」
とりあえず色んな角度から見てみる。どことなく違和感はあるのだが、その正体がわからない。
あたしはさらに近づき、そのうちの一体を人差し指でつついてみた。
「え?」
「お嬢様?」
「……」
あたしは手袋を外して触ってみた。
「冷たっ!?」
「え?」
「ねえ。この死体、凍ってるんだけど……」
「「えええっ!?」」
マリーとサイモンが同時に驚きの声を上げた。
「うーん、そっかぁ。そういうことなんだ」
「どういうことでしょう?」
「多分だけどさ。シルバーウルフのスケルトンたち、噛みついた相手を凍死させる能力があるんじゃないかなぁ」
「「えええっ!?」」
マリーとサイモンがまたしても同時に驚きの声を上げた。
あたしは他のシルバーウルフの死体を触って回る。
「ほら、全部凍ってるし。まあ、カチコチってわけじゃないけど」
「はぁ」
マリーがどうにも気のない返事をしてきた。どうやらマリーの理解を超えたようだ。
「スケルトンって、魔法も使えるってこと? ですか?」
「うん。そうだね。シルバーウルフだって氷の塊を飛ばしてきてたでしょ?」
「そうですね」
「なら、シルバーウルフのスケルトンだって同じことが出来てもおかしくないでしょ?」
「はぁ」
サイモンのほうもポカンとした表情でそう返事をしてきた。
ま、ゴブリンメイジのスケルトンの失敗作も同じ魔法を使ってたし……って、あれ? ちょっと待って? ということは、シルバーウルフもこの能力を持ってるってことだよね?
あ! そっか。なるほどねぇ。ちょっと噛みつかれただけで凍死させられるんだったら、そりゃあ普通の人は戦いたがらないよね。
でも、あたしたちとしてはラッキーかな。だって、ハスキーがいれば夏でも食材を冷凍出来るってことだもん。
やった! これで村での暮らしがもっと便利になるね!