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ホラー

学校のトイレには、やはり何かいるようです

作者: 鞠目

 先日、久しぶりに実家に帰った時に通っていた小学校の側を通りました。その時に思い出した不思議な話をさせてください。




 私が小学3年生の時の話です。

 給食後の昼休みに私は5、6人の友だちと運動場でドッチボールをしていました。そろそろ休み時間が終わりに近づき、汗だくだった私たちが教室に入ろうとした時です。


「トイレの花子さんが出た!」


 突然廊下に女の子の叫び声が響きました。当時、学校の怪談のような怖い話が好きだった私や友だちは、声がした方へ走りました。すると、他にも叫び声が気になった子どもがたくさんいて、廊下の端の女子トイレの前に人だかりができていました。

 私は何があったのか気になり、私よりも先に女子トイレの近くにいた人たちに話を聞いてみたのですが、みんな叫び声を聞いて集まっただけで、誰も何もわかっていないようでした。


「トイレの花子さんってマジで?」

「私見たことないんだけど」


 気がつくと私のように叫び声を聞いた子たちがはしゃぎながらどんどん集まってきて、私は女子トイレの中に押し込まれていました。不思議なもので、トイレの前にはたくさんの人がいるのに、誰もトイレの中には入ろうとせず、入り口の手前でたくさんの子どもが揉みくちゃになっていました。

 何があったか気になったものの、自分の目で確かめる勇気がなかった私はトイレに入るつもりなんて全くありませんでした。だから、私はすっかり慌ててしまい、周りをきょろきょろと見回しました。

 トイレの中を見回すと、一番奥の個室の前に隣りのクラスの女の子が3人いました。1人は床に座り込んで泣きじゃくり、それを2人が必死になだめているようでした。


 3人とも話したことがなく、名前も知らない子でした。話しかけにくいなと思った私は、一刻も早くトイレから出て友だちの所に戻りたくなりました。

 私はすぐにトイレから出ようとしたのですが、トイレの前には30人以上子どもが集まってきており、後から来てトイレに入りたがる子、授業が始まるから早く教室に戻れと怒る子、押されて痛いと叫ぶ子など、たくさんの子どもでごった返しになっていて身動きが取れませんでした。

 どうしたものかと途方に暮れていると、ふと、背後から視線を感じました。視線が気になって振り返ると、トイレの奥にいた3人の女の子が、真っ白な顔をしてこっちを、いえ、私の後ろ見ていました。

 女の子たちの視線を追って私は人混みを見ると、今度は廊下側から大きな叫び声が聞こえました。


「知らない赤いスカートの女子が廊下を走っていった!」


 叫び声が聞こえた途端、トイレの前にいた子どもたちは一斉に叫び声が聞こえた方に走って行きました。何が起こったのか分からず、戸惑った私はもう一度3人の女の子たちの方を見みましました。すると、3人とも叫び声がする前と変わらず真っ白な顔で呆然としていました。


 怖くなった私は走って教室に戻りました。私はビビリだったので、怖がっていた女の子たちに話しかける勇気も、見たことがない女子が走っていったという方向に走る勇気もありませんでした。


 その後1週間ほど私の周りの友だちはみんなトイレの騒ぎのことばかり話していました。実は女の子3人の嘘だったという話や、別の階の2年生も同じタイミングで騒いでいたという話など、男の子も女の子も朝から放課後までずっとその話で持ちきりでした。

 私はトイレで見た3人の怯え切った表情からきっと何かあったんだろうなと思いつつも、なんて言えばいいかわからず、誰にも何も言わずみんなの話ばかり聞いていました。

 2週間もするとトイレの騒動は誰も口にしなくなり忘れ去られていきました。また、それ以降不思議な騒ぎが起きることはありませんでした。


 月日は流れ中学生2年生の時、初めて同じクラスになった女の子と仲良くなりました。

 夏休み前に2人で学校から帰る途中、怖い話をすることになり、私は小学3年生の時にあった女子トイレの一件を話しました。


「あ、それ私だ」

 彼女は驚きながら言いました。

 彼女は、私が見たトイレにいた3人の女の子の中の1人が自分だと言いました。彼女はあの時パニックになった友だちをなだめていたそうです。




 以下は彼女から聞いた話になります。

 

 あの日、一緒にトイレに行った友だちが突然「こわいこわい」と言い出して泣き出したの。


 何がこわいのか聞いても答えてくれず困っていた時、私が使った後、誰もいなかったはずの個室から赤いスカートの女の子が急に出てきて、廊下に向かって「トイレの花子さんが出た!」と叫んだの。


 私と友だち含めて3人ともびっくりしちゃって固まっていたらいっぱい人が集まってきたの。みんな花子さんが出たって聞いて走ってきたみたいだった。


 何が起こったかわからないままとりあえず泣いていた友だちを落ち着かせようと思ってだんだけど、しばらくしたら誰かに見られてる気がしたの。


 それでトイレの入り口を見たらさっき見かけた赤いスカートの女の子が人混みの中にいたの。こっちを見つめてにっこり笑ってたわ。本当に真っ白な顔だった。


 今まで学校で絶対に見た事がない顔だった。

 その子は私たちに笑いかけた後、するする人混みを抜けて廊下に出ていったと思ったら「知らない赤いスカートの女子が廊下を走っていった!」て叫んでいたわ。そしたらトイレの前いた子たちみんな叫び声につられて廊下を走って行ったわ。


 本当に意味不明な話だけどすごくこわかった。泣いていた友だちは早退したんだけど次の日には何も覚えてないし。本当に意味不明よね。




 結局のところ彼女が見たという赤いスカートの女の子が誰なのかはわかりません。私が直接見た訳でもないので本当の話ですとも言い切れません。


 ただ1つ言える事は、私が女子トイレで見た3人の女子の怯え切った表情は子どもが演技でできるような顔ではなかったという事だけです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 小学校の七不思議、懐かしく思い出しました。耳で聞いた怪談話の何が嘘で何が真実かは分からなくても、自分の目で確かに見た、怯える子達の表情はきっと嘘じゃない本物……ということは?? 目撃者の目…
[良い点] 怪異はお前だったんかい!子供たちは見事に扇動されましたな。
[一言] これは怖い!!!! 結局不可解なものが一番怖いってことなのかもしれないですね( ˘ω˘ )
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