司令官になるための準備
アリス曰くこの要塞は5つの大陸のちょうど中心にある半径300kmほどの人工島で海底火山の上にあるらしい。そもそもこの要塞は3000年ほど前に地球という星の生き残りが月にある基地とは別に作ったものらしい。当時月には宇宙艦隊がいたが他の宇宙にいる化け物と戦い、滅ぼすことに成功したが化け物の親玉の爆発に巻き込まれてほとんどがやられたらしい。前の司令官とアリスはその様子をこの要塞から見ており、絶望したと言う。その後、前司令官が置き手紙を残して失踪した。その手紙には『私はもう疲れてしまったから唯の一人の人間として生きていく。もし私の子孫がここに現れることがあったら仮司令官にするように。そして困っているようであれば助けてあげてほしい。その為にこの要塞の鍵を私は子孫に残すつもりだ。』と書かれていたと言う。それからアリスは残った施設をできるだけ復旧し前司令官の子孫が現れるのを待っていたということだった。
そして彼女が僕を助けに来れたのは僕が鍵を強く握りすぎて血が出てその血を鍵が認証し起動して僕の居場所が分かったからみたい。
それでさっきの暴挙は前司令官の最後の命令に従ったからってことか。
ちなみにアリスには「是非!アリスと呼んでください!」と言われたので気迫に負けて呼び捨てにすることにした。
「まあ話は分かったよ。正直話がデカすぎて理解度は高くないけどね。」
「ありがとうございます。」
「確かに困ってることはあるしこれから助けてくれたらありがたい。」
まあ困ってる事と言っても住む場所がない事なんだけどさ…
そもそもの始まりは村がキメラに襲われてから放浪せざるを得な買った事なんだけどさ。
聖教会の司教が乗った馬車が僕に突っ込んできた時に代々伝わる個人用防護シールドを使ったのが不味かったみたいで「魔法を使わずにそんな力が出せるとは異端である!」とかなんとか適当な理由を付けられて異端認定された挙句に国外追放で未開の森に放り出されて本当に困ってたからありがたい。
司教が怪我したとか知らんがな…こちとらちっさい教会しかない寒村出身の冒険者やぞ!!!!村がキメラにやられた時だって教会の奴らは先に逃げて助けたくれなかったせいで信仰心が薄かったのにもう完全に失せたわ!!!
未だに思い出すだけで腹が立つ、全財産没収だし我ながら仕方ないと思う。
今思えば里に突然キメラが現れて父さんと母さんが僕を逃してくれてからの10年間良いことがなかった気がするけどやっと運が回ってきたのかな…?それともこれは運命とか言うやつなんだろうか…
「もちろんです。ただ要塞の全機能を使うには仮司令官では権限レベルが足りないので正式に司令官になっていただく必要があります。」
「せっかくだから司令官になっておくよ。それでまずは何をしたらいいんだ?」
「ありがとうございます。まずはナノマシンを投与させていただいて地球連邦政府市民になっていただければなりません。その後連邦軍に入隊し、参謀課程を修了、その後いくつかの功績を挙げていただいたら司令官になれます。」
なんだかすごいことになっちゃったぞう…?
「…分かった。ただ勉強はそんなに得意ではないんだけど大丈夫かな?」
「問題ありませんよ。ナノマシンを投与すれば必要な情報はほんの数秒で全て脳に記憶させることができるので参謀課程は宣誓をすればすぐに修了できます。」
「それといくつかの功績って言うのは?」
「こちらは軍として司令官を正式に決定するには模擬演習もしくはなんらかの脅威の排除など多岐に選択肢が渡りますので参謀課程修了後にもう一度説明させていただきます。」
「分かった。なら早速始めよう。」
「はい、それではこちらの錠剤を15錠飲んでください。これで市民権を獲得できます。」
そう言ってアリスは半透明な箱に入った錠剤と真っ透明で透き通ったグラスに入った水をこれまた綺麗な模様の入ったトレイに乗せて持ってきた。
「わかった…」
飲んでってことは噛まないんだよな…?
なんか前にダンジョンで見つけた風邪薬って書かれた粒に似てるな、あれは白でこっちは真っ黒だけど形は似てる。
ーーー
「視界に何か映りましたか?」
「あ、あぁ…」
確かに視界にいろんな情報が映ってる、アリスの頭の上にはアリス(要塞管理アンドロイド)と表示が出ているし左下には自分の体の模様が浮かんでいてその下に体内魔力量の表記がある。アンドロイドなんて僕は聞いたこともないのになんで知ってるんだ…?
そんな僕の混乱を察したようにアリスが説明してくれたことによるとナノマシンが一般的な情報(地球連邦市民にとって)をリアルタイムで教えてくれるらしい。
すごいな!!
それからものの数十秒で軍人になるための宣誓と参謀課程修了の宣誓が完了。その時に連邦軍大佐の階級章のついた制服が支給されたので着替えたけど襟があって堅苦しいな…
「それではアマノ大佐、司令官になる為に必要な功績と頭の中で考えてみてください。そしたらそこにいろいろな候補が出てくると思いますのでその中から選んでください。」
「了解。」
今の僕は仮司令官なのでアリスよりも階級的には1つ劣るようで上官向けの言葉遣いをしないといけないようでアリスの口調もそれに伴って変化している。ちなみにアンドロイドに敬称は必要ないらしい。
やはりというべきか軍属になると同時にそれに必要な体の動きが自然とできるようになったのには流石に驚いた。
言われた通りに思い浮かべるとたくさんの項目が出てきた。説明によればこれらの候補にはポイントが振ってあり、100pt獲得すれば正式に司令官になれるみたい。
ちなみにこの功績を達成するにあたっては僕が指揮するなら1人で戦う必要はないらしい。
「それではこの100ptの真竜の討伐というものにしようと思います。そこで海兵隊からアサルトドロイドの2個分隊とスカウトドローン10機を抽出し真竜討伐特別変則小隊としたいと思います。」
真竜って言ったらそれこそ天災級のモンスターだけどこの要塞の戦力なら脅威にはならないだろう。
それに面倒臭いのは好きじゃないのだ。
「了解。それでは準備が出来次第、真竜討伐作戦を開始するように。」
「了解。真竜討伐作戦拝命致しました。それでは自分は準備があるのでこれで失礼します。」
参謀課程を終えた今、基地の構造が手に取るようにわかるので自分でドアを開け装備保管庫に向かう道すがらナノマシンによる通信で海兵隊(と言っても今はドロイドしかいないようだが)に指令を出しておく。