「十角 玄武」医者
十角 玄武は、こちらの空港に着陸した豪華なプライベートジェットを眺めていた。
集合時間より早めの飛行機を乗り終え、伊豆諸島の空港周辺を散歩していた。飛行機では酒を30杯程頼んで飲んでいたので、酷く疲れながらも物思いに耽っていた。
十角玄武は東京大学医学部を卒業し、東京大学病院の外科医として勤務し実績を出していくことで、「ゴットハンド玄武」とも呼ばれていた。
その後、東京大学病院の勤務医と平行して、東京大学病院直轄の次世代人間研究機構による次世代の新人類を作り出す実験の主任としても仕事をすることになる。
しかしながら、実績も出せずに、予算の都合上廃止の研究の検討もされており、非常に居心地も悪く、酒にも溺れてしまっていた。
そこに、微量ながら超能力を扱える中学生の少年、四宗王と出会うことになる。超能力を解析し、薬物投与や脳への電気ショックを加えて四宗王の能力を強化していくことに成功する。
酒に関しては依存症の状態となり、東京大学病院での本業の手術は失敗を繰り返すことになる。そして、「渋谷スクランブル交差点自動車事故」で運ばれてきた女子小学生の手術では死亡事故を起こしてしまう。
それからは、「国会議事堂・都庁等同時多発テロ事件」での被害者の手術でも死亡事故を起こしてしまい、手術中に酒を飲んでいたことがバレて医師免許は剥奪となった。
その後は、闇医者として、裏の人間の怪我の治療や、犯罪者の整形手術などを請け負うようになった。日本で唯一の超能力者だった四宗王の事件に関しては私にも責任の一旦はあり、非常に残念な結果となったと思う。
医師免許を剥奪されてからもなんとか立ち直れたのは、運がよかった。あのときは危なかった。もう少しで訴えられて逮捕されるところだった。
上の空で道路を歩いていると、猛スピードで走る車がやってきた。耳をつんざかんばかりのクラクションの音が響き渡り、最新式の電気自動車が時速200kmで追い抜いていった。十角 玄武はあやうく垣根に突っ込むところだった。八丈島の田舎道を向こう見ずに突っ走る暴走族の若者だ。
十角玄武は、ああいう暴走族のような馬鹿な若者は嫌いだった。まったく危ないところだったじゃないか。いまいましいったらない!