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「飛英 軍二」元自衛官の傭兵

元自衛官の傭兵である飛英ひえい 軍二ぐんじは、すばやく動く目をチラッと光らせただけで、隣の美人の女性を品定めした。(なかなか美人じゃないか・・・)


クールなタイプかもしれない。恋でも戦いでも、一歩もひかないだろう。無理やり犯してみるのも、悪くないなあ・・・。


飛英軍二は顔をしかめた。いや、だめ、だめ。今は地上じゃなくて飛行中だ。よけいなことを考えている場合じゃない。


それにしても、今度の仕事は、いたいどういうことなんだ。飛英軍二は不思議でならなかった。自衛隊のトップである元幕僚長で隠居の身であった老人の百船ももふね あゆむはやたら謎めいたことをいっていたなあ。


「飛英元陸曹長、嫌なら嫌で、いいんですよ」

そう言われて、飛英軍二は考えながら言った。

「1000万円かい」

彼は1000万円なんて金のうちに入らないような、軽い調子でそう言った。莫大な借金があるのに!でもあの元幕僚長にはそのことが、ちゃんとわかっていたにちがいない。しゃくにさわるのは、そこだ。


ことに、これに関する限り、やつらの目は絶対にごまかせないーーーすべて、お見通しだ!

飛英軍二は軽い調子のまま、続けた。

「それ以上はなにも教えてもらえないわけかい」

百船歩はハゲ頭をきっぱりふった。


「そうです。今お話したことだけです。飛英元陸曹長、あなたは逆境に強いと業界では評判だとか。『地獄島』に行って護衛の仕事をしてもらえるなら1000万お支払いするように言われています。


成田空港から八丈島空港に行ってもらえれば、空港から船着き場まで行き、私の船で『地獄島』まで送っていきます。島に着いたら例のあの人の指示に従ってください」


飛英軍二は出し抜けに質問した。

「期間は?」

「長くても、2日以上にはなりません」

サングラスを指でクイッと上げて、飛英軍二は言った。

「わかっているんだろうねーー今回はいつもの殺しが任務じゃなくて、護衛なんだよ」

そう言いながら百船歩は、相手をチラッと見た。真面目くさって答える百船歩の悪人面に、薄笑いがかすかににじんだ。


「もちろん、殺しをするように言われたら、臨機応変にしてもらって、かまいませんよ」

ネコっかぶりめ、笑いやがった!飛英軍二の過去の自衛隊や傭兵の経歴から推して、殺害命令でも喜んで引き受けることを見透かしたような、笑い方だった。


飛英軍二自身の唇も、ニヤリと笑いくずれた。

欲望のままに戦場を渡り歩いたことも、幾度なくあったけな。でもいつも、なんとか切り抜けた。彼の倫理観が欠如しているのは、本当のことだった・・・。


防衛大学を主席で卒業した後、自衛隊で活動していたが、部下への暴力、レイプ事件の訴えで職を辞職した。


その後は、海外の民間軍事会社の傭兵として戦果を上げて活躍する。民間軍事会社でも、拷問や虐殺が問題となり、現在ではフリーランスの傭兵としてあらゆる要人をクライアントに持ち仕事を請け負っている。

四の五を言う気はない。『地獄島』とやら、けっこう面白いことになりそうじゃないか・・・。そして、前の座席の美人に目線を移した。


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