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「神玉 零」ジャーナリスト

「地獄島」のある伊豆諸島に向かう飛行機のファーストクラスで、元日本放送局のアナウンサーのジャーナリストである神玉かみたま れいはシートの背に頭をもたせかけて、目を閉じた。今日の外の気温は暑すぎる!と思った。

こんどの取材許可がもらえたのは、本当にラッキーだった。あの返信メールがきたからだ。


『週刊雑誌

編集部 神玉零様

「地獄島」のオーナー 安野あんの 雲兵衛うんべえと申します。

「地獄島」への取材のご依頼をいただき、ありがとうございます。

取材の件、承知いたしました。私といたしましても、全ての悲劇の終わりの島である「地獄島」を取り上げていただくことは願ってもないことで、ぜひ取材をお受けしたいと存じます。

取材日程ですが、8月8日15時からのみ対応可能です。


「地獄島」の館は宿泊施設になっていますので、宿泊と食事をしていただき、翌日には八丈島空港へお送りさせていただきます。移動費はご負担していただきますが、食事と宿泊費に関して特別に無料の対応とさせていただきます。


当日は、八丈島空港のロビーから、船長の百船がクルーザーで「地獄島」までご案内申し上げます。

それでは当日、お待ちしております。


「地獄島」のオーナー 安野あんの 雲兵衛うんべえ


『地獄島』にはおもしろおかしい推測や噂が飛び交っている。どれもこれも、殆どは嘘っぱちな噂が多い。とはいえ、その島に大金持ちの元総理の四宗竜王が邸宅を建てていたことは今では有名だ。これ以上ないほどの、すばらしい豪邸という話だ。ぜひとも写真と映像に納めて独占スクープにしたい。


去年は、本当にしんどかった。神玉零はつくづく思った。ゴシップ雑誌で記事を出したってろくなことはないわ・・・・もっとましな雑誌で、仕事が貰えればなあ。


そう思ったところで、心がスーッと冷えた。でも、今の仕事があるだけ幸せだ。テロや事故と聞いただけで、世間は最初いやな顔をする。いくらか報道していくうちに民衆はどんなテロや事件にも慣れていき、前の事件も忘れて次の刺激を求めていく。


飛行機の中は快適な温度なのに、神玉は突然身震いした。頭の中に、ある光景がくっきり浮かんだ。渋谷で目撃した「渋谷スクランブル交差点交通事故」だ。この事故が次世代テロ集団「ネクスト・ジェネレーション」への疑惑に繋がる全ての始まりだともいえる。事故ではかなりの死者と重軽傷者を出した。


暴走した車がこっちに向かってくる。車が人をボウリングのピンのように跳ねては、次々とポンポン跳ねていく・・ぶつかって・・・跳ねて・・・・それはスローモーションに見えて、間一髪で車を避けることができた。


渋谷でアナウンサーとして撮影の生中継をしていたところに事故は起きた。

車の後を追ってアナウンサーとして事故を実況し続けた神玉は、けが人や死人の状況を実況している。ジャーナリストの役割として優先されるのは救助ではなく、現場の真実を伝える中継だ。


目の前に倒れている人はもう、助からないだろう。絶対に助からないだろう。

だめ、もう事件のことを、考えちゃだめ・・・。


この事故は、未成年者の薬物乱用の事故として処分され、その後に過激な「日本同時多発テロ」が起きたことで、すぐに人々の記憶から忘れられてしまった。


この時に使用していた薬物が、「四宗教」に使われていた疑惑が出始めた。これを追求した弁護士がいたため、「弁護士一家惨殺事件」が起きた。


さらに、「四宗教」に潜入捜査をしていた公安警察のスパイが次世代テロ集団「ネクスト・ジェネレーション」に捕まったことで「拘束動画公開射殺事件」が起きる。テロリストが公安のスパイを人質に取り、実況動画で射殺する動画を公開したのだ。


射殺されてしまった、一人のジャーナリストの被害者を出してしまったことは残念ではあったが、どうやっても良い結果は望めなかっただろう。

―――そして、例の事件―――この後のことは、衝撃的すぎた!


その後は、「原子力発電所爆破テロ事件」が起きた。さらに、「国会議事堂・都庁等同時多発テロ事件」により、 日本はもはや崩壊したといってもいいだろう。


神玉は目を開けた。そして、目根をよせて、隣の席の男を見た。浅黒く日焼けした、背の高い男だった。濃い色の目と目の間が狭いうえに、顔や腕には戦場で受けたような傷が多数あり、口元がふてぶてしくて、ちょっと冷酷な感じなので、絶対に関わってはいけない人間な気がする。


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