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読了

作者: 海南 あらた
掲載日:2019/03/31

少しだけ窓を開けて最後の風を嗅いだ。

騒ぐ子供の声が何故か遠く聞こえる。

寄りかかった窓から顔を覗かせて、目の前の景色を眺めた。

ガランとした街並みは何処までも続くようで、見えない道の先にも誰かが生きているんだ。

当たり前の事を新しく知って、どうでもいいと思ったことを少しづつ捨てて。

なんて退屈な日々、だけれど僕達は生きていく。

少し開いた窓を閉めて、違う空気を吸った。

轟々と家を鳴らす音は、置いてきた昔の思い出。

冷たい窓から離れて、コーヒーを飲むためキッチンへ向かう。

聞きなれた音、いつもと同じ日々。

だけどもいつと違う日々。

ため息を漏らして、白い湯気を目で追う。

明日から変わることと、これからも変わらないこと。

どちらもきっと大切で、大切だったこと。

飲み終わったコップをシンクに置いて、読みかけの本を持ち指定席へ。

どうしても、今日のうちに読み終えてしまいたいから。

物語の主人公は、終わる世界を救うヒーロー。

僕が子供の頃になりたかった存在。

以外に展開は単調で、涙も笑いもない。

淡々と救われた世界でエンディングが流れる。

そして、今日も終わる。

感慨深くもない、少しも楽しみもない。

どうせいつかは訪れるもの。

誰かが亡くなっただとか、そういった訃報で聞くよりかは断然良いものだけれど。

もしかしたら凄いことなのかもしれない、大変なことかもしれない。

だけど僕には、よく分からない。

世間がやけに騒いでいて、有名人なんかは大慌てで。

僕にはよく分からない。全然分からない。

1つの時代が終わって、新しい時代が始まって。

それでも僕の明日は、何も変わらなくて。

安い月給で暮らして、セールの食品を買って。

温いシャワーを浴びて、冷たい布団で眠る。

何もいいことは無いし、悪いことだって無い。

読み終えた本は、『平成』の棚に仕舞った。






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