ああ、カラスよお前に居場所はなし
カラスは人間からも、そして鳥からも嫌われる鳥なのです。人間からしてみればカラスはずる賢く口うるさい声で人間の住民を眠れなくさせゴミを散らかす悪い鳥だからです。
そしてハトや雀からも嫌われているのです。それはあの黒い羽根で覆われた大きな体で彼らを苛めるからです。
人間たちはあの手この手でカラスを追い払おうと躍起になり、ハトや雀もカラスを近づけさせないようにしているのです。
ですが、カラスたちだってみんなそうしたからやっているわけではないのです。とあるカラスの家族の先祖を覗いてみましょう。
このカラスのご先祖達はずっと昔からここに住んでいました。ずっと昔といっても鉄筋コンクリートの家や電柱などないぐらいの昔のことなのです。ご先祖カラスたちはほかの大きな鳥たちと変わらず虫や小さな鳥を餌にしていました。小さい鳥たちからすれば怖い存在でありましたが、このご先祖カラスは小鳥たちを怖がらせないように小鳥は食べないように戒めてきたのです。
ではどうやってこのご先祖カラスたちは腹を満たしていたかと言いますと、それは人間の残飯を食べていたのです。ここの村落は比較的豊かでしたので残飯が出ることが多く土に埋めるかカラスたちの餌にしていたのです。
カラスたちが来るとわかると、人間たちは残飯を置いて邪魔をしないように去ります。残飯をきれいにしてくれるカラスたちと小鳥を襲わなくてもご飯にありつけるカラスたち。この関係はいつまでも続くと思われていました。
しかし、この村も時代が進むと近代化の波が押し寄せ。藁づくりの家は鉄筋コンクリートに、山林は切り倒されて山は削られ昔の村の様相が変わってしましました。草木に生息していた虫たちは消え、それを餌にしていた小鳥たちもいなくなり大型の鳥たちもつられてどこかへ行ってしまいました。
さて、ご先祖カラスの子供や孫たちはどうしたかと言いますと、住み慣れたこの場所を捨てることができず生活を改めました。
今まで小鳥の代わりに食べてきた人間の残飯を主食にすることにしたのです。幸いにも人間の数が増えたことにより残飯の量も増えて十分な量を確保できました。今まで人間の残飯を食事にしてきたのは他のカラスたちもしてきたので、他のカラスたちも同じように生活を改めることができました。
巣作りの材料であった枝が少なくなったのでカラスたちは代わりに金属片やプラスチックといった人間の物を使うようにしました。人間が作ったものはどれも丈夫で、巣が今までよりもしっかりとしたものになり木々が少ないものの安定した生活を送れるようになりました。
カラスたちは都会の生活に適応できるようにしたのです。
さて、話は戻りまして今のカラスの家族です。カラスの家族には一匹の子供カラスがいました。カラスに名前はないのですがわかりやすくするためにヤタと呼称します。
ヤタはもう自分で餌を探せるぐらいの体つきで今日も餌のありそうなゴミのある場所へと電柱を伝いながら探し回っています。すると、ちょうどよくネットしか張っていないゴミのたまり場を見つけました。
カァカァと喜びとここは今自分があさっているのだと他のカラスたちへの警戒の鳴き声をあげます。カラスにとってこのカラス除けの網は手間がかかるものの決して取れないわけではありません。ヤタはくちばしでひょいと網をつかむとそのまま少しだけ飛び上がりネットの下にあるゴミをさらけ出します。
ヤタがパンパンになっているゴミ袋をつつくとゴミ袋の中身がどさりと中身を出します。色々なものが混ざり腐乱臭が漂いますがヤタは我慢して餌を探します。すると、賞味期限切れの蓋が開いていないサバの缶詰を見つけました。これはラッキーです。缶詰は蓋さえ開けてしまえば中身が柔らかく多く小骨もない栄養満点な食べ物が入っているご馳走です。
ヤタは、缶詰を足で持ち上げて高く飛び上がり、空中で缶詰を離します。地面に落ちた缶詰が少し変形しました。もう一度落とすと蓋がへしゃげて中身が少し出てきました。これならあとはくちばしで蓋を開いて中身を食べるだけです。
ヤタが缶詰を食べているとハトや雀たちがヤタの周り子囲み始めました。
「おい、カラス。お前ここでないやっているんだ」
「どうせ、僕たちを苛めるどうぐでもあさっているんだろ」
全く身に覚えがありません。きっと他のストレスが溜まっていたカラスが憂さ晴らしに彼らを苛めたのでしょう。
「僕は何もやっていないよ」
けど、ハトたちは全く耳を貸さずヤタに向かって一斉に声を上げてそこから追い出します。
「あっちいけ、あっちいけ。よそ者カラスは出ていけ」
「お前たちカラスは俺たちを苛めるからこうなるんだ」
餌場を追いやられたヤタは失意のまま公園の滑り台の上で足を投げて彼らに対して沸々と怒りが湧きだしました。
自分は長年ここに住んでいた一族です。なのにハトや雀によそ者と言われる筋合いはありませんでした。
「どうしてだ。僕はご先祖の言いつけを守ってハトや雀たちを襲っていないのに僕がカラスだというだけで、やってもないことを言われるなんて」
そういってヤタが嘆いていた時に、今度は滑り台の下の方から声が聞こえます。腹の居所が悪いヤタはカァーカァーと下にいる奴に対して鳴き声を上げます。
声の主は人間の男の子でした。突然のヤタの鳴き声に驚いて泣き出しますと向こうからこの子の親でしょうか、その人が滑り台に近づいてヤタに向かって怒声を浴びせます。
「消えろ!いたずらカラスめ!」
人間の親の怒声に驚きヤタは急いで家に帰ります。
家に帰るとヤタは両親に引っ越すことを勧めました。もうこの町に居続けるのは嫌になったからです。
「ねえ引っ越そう。ここじゃ僕たちいじめられるよ」
ですが父親ガラスも母親ガラスも首を振って無理だと答えます。
「けどね。引っ越そうにもどこもこことおんなじだよ。そしてそこでも同じようにいじめられる。しかも土地勘がないから餌場を探すのに苦労するよ」
「わかってちょうだい」
さて、そんな頃人間たちの間ではカラスによるごみの散らかしに役所に文句を言いに来ました。全く効果がないCDをぶら下げても、ゴミに網を張ってもカラスがどかしてしまい意味がないから何とかしてくれと言いに来たのです。
役所の人間はある提案を思いつきました。カラスの天敵である鷹を、鷹匠でカラスを追い払う作戦を考え着いたのです。
さて、ヤタは今日もいつものように餌場を探しに電柱の上でじっと辺りを見回していました。前のごみ置き場はまたハトたちが集っていると考え別の場所を探していたのです。カラス除けのキラキラと回るCDがうざったいですがヤタは気にせず探しています。
すると、ヤタの体の傍を何かがかすめていきました。
「ほらこっちこっち、いたずらカラスはこっちだよ。僕らは善良なハトですよ」」
下にいたハトたちが電柱にいるヤタに翼をさし、誰かに言っていました。それは鷹でした。自分よりも一回りも大きい鷹にヤタは急いで自分の巣に戻ろうと飛び立ちます。
鷹が何度もヤタの周りに飛び回り何度もヤタを傷つけます。ようやく自分の巣がある木が見えてきましたが、そこには人間が何度も長い棒で木をつついていました
何をしているのだろうと木の周りを見ますとそこには、地面に落ちて潰されたヤタの巣と動かなかくなったヤタの両親姿がありました。
それを見てヤタは心臓が止まりそうになり、動きを止めてしまいました。その隙を逃さず鷹は一気にヤタに襲い掛かります。
「止めてよ。僕たちは何もしていないんだよ。ねえやめてよ」
ですがその声は鷹には聞こえず、ヤタは鋭い爪で捕まえられ、一気に地面に押しつぶしてしまいます。
ヤタはあっという間に生き途絶えてしまいました。こうしてカラスの家族はみんな死んでしまいました。
さて、このカラスたちですが、かわいそうなことに人間の役人によって害獣の死骸として処理されました。土の養分にも他の生き物の餌にもならずゴミのような扱いで燃やされてしまったのです。
生き残ったカラスたちは、あの家族を哀れに思いながらもその町を後にしました。
さて、これを見て皆さんどう感じましたでしょうか?
カラスが悪いのか、人間が悪いのかどっちが悪いと思いますか?




