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第1章 第2話「運命の書」

────『運命の書 木田 雅也』


「なんだよ……これ!」


「見ての通り、あなたの『運命の書』ですよ」


「俺が聞きたいのは『運命の書』ってなんだよって事だ」


「わかってますよ。少しふざけただけです。『運命の書』には2つの種類があります。自分の運命がわかるものと自分の周りの運命がわかるもの」


「俺のは……っ」


「中身を見れば、わかりますよ」


仮面のそいつはボイスチェンジでも使っているのか、男声と女性の狭間なような高さの電子音のような声で性別が見分けられない。

ヒールを履いている事により身長は170くらいに見えるが実際は165前後だろう。


「なあ……これ、なんだ?」


「なんだ? とはどういう意味でしょう」


「なんでここに美緒の名前が……。それに来週の日付、美緒が死ぬってなんだよ」


あなたのは(・・・・・)周りの運命が見えるもののようですね。それにしても幼馴染を優先、ですか」


「それより優先すべき事柄なんて……これは」


『5月12日 桜木 康太。事故により死亡』


「5月……12。明後日? 明後日に康太が事故で死ぬっていうのか?」


「書いてあるのでしたらそうですね」


「バカバカしい。付き合ってられるかよ」


額から吹き出す大量の汗が頬をつたって流れながら声を震わせ否定をし、仮面のそいつに背を向ける雅也。

突然と終わりを告げようとする日常。そしてそこには友達、幼馴染の死が繋がっている。

その余りの突拍子のない非日常を受け入れるのは容易ではなかった。


「お好きにどうぞ。信じるも疑うもあなた次第です」


仮面のそいつが雅也の背中を見て微笑むようだった。


×××


あの不審な人物の言葉を信じられなかったが、夜遅くまで運命の書について色々試していたら目の下にクマを作ってしまった。

そして、その行為が結果的に運命の書が本物だと現実を叩きつけられるハメになった。

その非現実な現実を受け止めなければならなくなる最大の理由。

それは運命の書はどんな形でもどんな方法を使っても、決して傷付きはしない。

正確には治ってしまうのだ。完全に元の形(・・・)に。

つまりそれはこの世の物では考えられない何かであり、そこに書いてある事の信憑性も高まる。

運命の書の特徴として、過去の分も読み返したが大体多くて5列で運命が書かれている。

余白も多く、その中でも文と文の間が少し広いのが運命の書の特徴なのではないか。

だが、いくら書き込んでも字が消えてしまい。書き込みは不可能だという事だ。


「(明日には康太が死ぬ。それを何とかしなきゃならない。だけど打開策が思いつかない。このままじゃ……)」


「なーに怖い顔してんだよ!」


唐突に後ろから肩を組むように話しかけられて少し驚く。


「うわっ! って、康太……」


「なんだよ。そんなに俺に会いたかったのか? いやぁ、愛されてんね、俺」


「いや別に────」


「あ! 康太と雅也じゃーんっ」


肩組んで歩いてる俺らを見て後ろから指さしする光塚 心音。

ピンク色のツインテール、星型のアクセサリーが付いたゴムで縛っている。

流石は一応芸能人なだけあって、やっぱりオーラが少しばかり違う。


「なんで無視するのよ! あ、私が可愛すぎて眩しいから返事を返すのも烏滸がましいとか思っちゃったの? そうでしょ? わかるよ、わかる。その気持ちはわかるけど、無視はダメだぞ! さ、返事プリーズ!」


「(うざい。底知れぬくらいうざい。具体的に述べる脳が溶けきる程にうざい)」


「あ、おはよう。光塚……」


「(ほら見ろ、康太さんもドン引きだよ)」


「はーい! おっはよ」


鞄を持つ両手を後ろに回し、少し腰を曲げて上目遣いで二人を覗き込む心音。


「二人ってそんなに仲良かったけ?」


「まあ、付き合いは長くねぇけどな? 雅也」


「ああ。友達だしな、特別仲いいってわけじゃないけど」


「ははっ、それは素直に言われると傷付くな」


「ふーん、そっか」


そこから学校まで三人で笑い話をしながら登校した。雅也は康太が死んでしまえばこんな事も2度と出来ないのだろうか、と頭の片隅で考えてしまうのだった。


×××


「ダメだーっ!」


既に時間は12時を回り、タイムリミットは近づくばかりで、ただ康太を死なせないルートは全く思い浮かばない。


「えーと……木田、くん? どうしたの? 悩み事?」


「沙耶……原」


沙耶原にざっと例え話を作り、何か打開策がないかと聞いてみる雅也。

多分ここで何もないと言っても信じてもらえないだろうという判断だ。


「んー、決まった運命を知っててそれを回避する方法、かぁ」


「ああ。それがわからなくて」




「それってさ、その知ってる人がその運命に介入するとかじゃダメなの?」


それはあまりに単純で、想像しやすく、でも雅也が辿り着けなかった。当事者にはそんな容易いことで、という先入観から目に付かなかった方法だった。

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