第3話 ダンジョンに棲まう大男
第1のダンジョンへとたどり着いた光はボスの姿を見てしまいます。
皆さんは1ボス目はどんなモンスターを思い浮かべますか?
そんなことを考えながらお読み下さい!
装置を外した僕は絶望感に浸っていた。
「こんなの、クリアできるわけない・・・」
ゲーム開始時に切りつけた指から滴り落ちた血を見て、さらに恐怖心にかられてしまった。装置を外しても広がっている世界は真っ白な元の部屋だった。
「クソッ、ツバキの言う通り、こんなところで怖気付いてたまるか!」
僕はまた装置を着け直して、またあの鉄の塔の前に戻ってきた。
「どうしたんだ?兄ちゃん。大丈夫か?数分かたまっていたから心配したぞ。」
「悪い、考え事をしてたら気分が悪くなって・・・」
「そうか、ならいいんだ。ともかく俺は案内したんでこれで帰らせてもらうぞ。兄ちゃんの実力でサッとやっちゃってくれや。」
男は他人事のように言って足早に去って行った。僕は少し憤りを感じてしまった。
『光様、ダンジョンに入る前に案内役の私から1つ忠告しておきます。』
男が去ったのを機にこことばかりにツバキからの忠告が飛んできた。
「なんだよ」
『光様が着けているその装置をむやみに外すのはお控えください。光様のそのバカな頭だと敵の攻撃を装置を外せば防げるなとでもお考えなのでしょう。』
「悪いがそんな名案は浮かばなかった。今のは咄嗟に外してしまっただけだしな。でも、その名案一理あるな。」
確かに装置を外せばゲームからい一度離れるため、敵からの攻撃を避けることができるはず、しかしそれなら外すなとそんな忠告をするはずがない。
『光様のバカな頭ではそんな姑息なことすらも思い浮かばないのですね。安心しました。』
「やかましい!そんな忠告受けなくてもクリアできる!」
『忠告を聞かないというのですか?わかりました。では一度、試しに私の攻撃を装置を外して回避してみてください。』
次は何をしようというのか・・・ツバキは僕の話を聞き流して装置をはずすことをうながした。
「やってやるよ!でもお前、姿がないのにどう攻撃するんだ?」
『バカな光様はすこし頭が回るようですね。私は案内役でAIアナウンス。攻撃の1つくらい打てないといけませんから。』
「意味がわからんが、まぁいい受けてやるよ。」
僕はむきになって頭の装置を外して、また白い世界へと戻ってきた。
『ここからはこの部屋に直接話しかけますね。』
「お前、そんなこともできるのか。」
『余談が多いですよ。ではいきます。 スフィア!』
「ちょ・・・待て・・・」
躊躇なくツバキは魔法のようなものを唱えた瞬間、体に強い衝撃波を感じたとともに部屋の壁に叩きつけられた。僕は恐怖のあまり体が動けなくなってしまった。
『これでわかりましたか?装置を外しても結局、こうなります。』
「・・・。それで僕はなんて反応をすればいいんだ。はいわかりました。今後、気をつけます。なんて言い得るわけがないだろ!」
『何をそんなにむきになっているのですか?まだ1ボス目も倒していませんよ。』
ツバキの冷静な反応に我に返った。
「そうか。僕はなんでこんなところで怖気付いているんだ。まだ1ボスも行ってないじゃないか。」
僕は吹っ飛ばされた時に手から離れた装置をまた付け直してダンジョンの扉を開けた。そこに広がっていたのはこの町を象徴する木々や花などが生い茂っており、真ん中には大木が天井まで伸びていた。その大木に巻き付くように螺旋階段が上へと伸びていた。
「ここが1つ目のダンジョン・・・これが町の人を脅かす?こんな植物園のようなところが・・・」
『光様、気を抜いてはいけません。この頂上にいる建物の主がこの町を脅かす存在なのです。』
「こんな自然を作りだすことのできるやつがそんなこと・・・」
僕はすこし疑問に思った。
『この塔を登ればわかることです。私はボス戦のサポートをいたしますので、気合いで頂上まで登ってください。』
僕はツバキの言う通りに木に絡まったツタのような螺旋階段を登っていく。
階段を登った行くと邪魔なツタやモンスターをなぎ倒して行くうちに剣や銃を使いこなせるようになってきた。
「だいぶ使えるようになってきたぞ。」
『でも、まだまだです。剣の振りなどがまだぎこちない。腕だけではなく腰も使って振るのです。』
ツバキのアドバイスを聞き、また意識する。腰と腕の力で剣を振り敵を斬りつける。
「こうか、なかなか簡単じゃないか。」
『飲み込みが早くて助かります。もう最上階まですこしです。』
頂上に近くなるにつれて綺麗な植物はなくなり、どんどん枯れた草や食虫植物の数が増えていった。
「おいツバキ、なんかこのフロア異臭がするんだがまだ頂上には着かないのか?」
『光様、その異臭の真実も全て頂上にたどり着くと全てがわかりますので異臭にやられて死ぬ前にさっさと頂上に行ってボスを倒してください。』
ツバキの嫌味を聞きながらまた長い螺旋階段を登って行く。
しかし、異臭は全然消えない、むしろどんどん異臭が強くなってきた。
「やばい・・・匂いが・・・」
『光様、あともうすこしです、アホな光様は、扉が見えないのですか?貴方の目の前にある扉が、それを開ければゴールだというのに。』
「それくらい、僕でもわかる!」
僕は目の前にある鉄の扉に手を伸ばし、恐る恐る金属の嫌な音とともに扉を開けた。広がっていたのは円型のフィールドの周りに大木の根が張り巡らされており、その中央には大男が棍棒を持ち、何かを貪り食っていた。
僕は咄嗟に扉を開け閉めてしまったのだった・・・
ボスの姿を見た光・・・
そこにいたのはいかにも危なそうな大男だった。
是非、次回もお楽しみ下さい!!
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ではまた、違うお話でお会いしましょう!!