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津軽藩以前 (1568-1576)  作者: かんから
偽一揆 永禄十二年(1569)正月
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第一章 第五話 初めての策謀

 ……入る機会をうかがう。


 障子の向こうからは光が漏れる。中にいるのは十人ぐらいか。各々真剣に、裏返された茶碗を見つめている。

 万次はその茶碗を揺り動かす。賽子が中でコロコロと音を立てる。万次は勢いよく“蓋”を開けると、周りの者はそれぞれの表情を浮かべる。笑う者、泣く者、叫ぶ者。酒も入っているせいか、感情の起伏が大きい。

 負けたものから、銭をとる。勝った者には銭が与えられる。……ここでは在来の民と他国者、平等である。


 万次は面松斎に気付く。幽霊みたいなやつだなと早速からかった。障子の隙間から見えたものだから。彼はそのしわだらけの顔を面松斎に向けた。

 

 面松斎は万次と共に、松の林を海の方へ歩く。

 

 万次は問う。


「……その若造は、信用なるんか。」


 面松斎は答えた。


「はい。見込みある、素晴らしい青年です。」


 南部の家来衆には珍しい、我らのことも見てくれる人物。なかなかいないと。万次は問う。


「それで……禄を与えると。」


 面松斎は “そうです” と続けた。万次の顔は普段から悪人の面構えではあるが……無数の危ない橋を渡ってきた彼の、人生そのものでもあった。


 万次は言った。


「よし。乗ってやろう。」


 ……あまよくば、為信の大浦家をも乗っ取る。万次は失敗した時の損よりも、成功した時の利がはるかに大きいと判断した。


「やるからには、華々しく荒らそう。」


 万次はひらめいた。為信の手前、領民を殺したり財を奪う事は躊躇われる。ただ一つ、許される所。……それは岩木山。

 そこは、大浦家の領内である。加えて山法師が女を連れ去って、不犯の定めを破っていると聞く。そこへ俺らが押し入って、法師を倒す。ついでに役得に預かる。

 支配者層がこれまで手出しできなかった“聖域”。どれだけ乱れていようとも、静観するしかなかった。そこを潰すのだから、為信にとってもいいことだろう。


 万次は他国者を中心に仲間を集めた。


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