第一章 第三話 初めての策謀
「ある。」
為信は即座に答えた。
「事が成った暁には、他国者にも禄をはらませよう。お主はどうだ、面松斎。」
他国者が為信の家来になるということ・・・。彼らにとっては、たいそうな驚きに違いない。しかし・・・。
「金はどうするので。一揆も何かと物入りですぞ。」
「鯵ヶ沢の理右衛門から借りる。あやつなら他国者に理解はあろう。私とも親しい。」
長谷川理右衛門・・・。船問屋である彼は、多くの他国者を津軽の地に連れてきていた。為信と同様、他国者の扱いを哀れに思っている。
「では、為信様は本当に我らを雇えるのですかな。周りの者が嫌がるのでは。」
「心配ご無用。私の手柄によって、そのようなたわごとはねじ伏せる。」
若様よ・・・そううまくいくものか。
「もし、一揆に失敗した場合はどう責任を取ってくださる。」
その時は、さらに他国者の立場は悪くなる。
為信は瞑る。・・・突然カッと目を開き、面松斎に訴えた。
「このままでお前らはいいのか。」
生意気な・・“お前ら”なんて。
「お前らにしてみれば、進むも地獄、止まるも地獄だ。ここで成功すれば禄にありつけるだけではない。話せばわかる奴らなのだなと、在来の民は知ることになる。そこから、対話が始まるのではないか。」
まだ、早口は治らない。
面松斎は・・・筮竹を手に持った。当たるも八卦、当たらぬも八卦。・・・占いなど、もともとは為政者が民を従えるための道具に過ぎなかった。それに、占いの修行などしたことがない。真似てやっているだけ。
偽占い師の結果がでる。
本掛・・・“風雷益”