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津軽藩以前 (1568-1576)  作者: かんから
石川高信、病没 元亀一年(1570)春
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第三章 第七話 最後の鷹狩

 夜はまたくる。為信は戌姫の部屋を訪れた。


 ……互いに口を開かない。そんなときが長く続いた。月は頂上に達する。眠ることなく、隣で座り、同じ方を向くまま。


 やっとで、為信は言葉を出す。


 「どうする。」


 戌姫は為信の方を向く。為信は続けた。


 「家来らは、以前のようには思ってない。幼い子を殺そうなどと、ありはせん。」


 酔いはまだ抜け切れていないせいだろうか。少しだけ本音が混じる。


 


 戌姫は、恐る恐る為信の膝に手を置いた。目を合わせるが……すぐに背ける。


 

 為信はその手を、彼女の膝の元へ戻した。


 「無理せんでよい。」


 為信は立ち、その場を去った。


 


 戌姫は、手鏡を持つ。持ちはしたが……そのまま下に置いた。


 

 


 朝は来た。白原に太陽は照りつける。為信は火縄の訓練に行く。小笠原の屋敷には、松明を大量に焚かせ、火縄を乾かす。雪も徹底的に除ける。故にその一区画だけ土の色が見えていた。


 小笠原は言葉で教えない。手に取り、このように動かすのだと、体で見せる。為信は慎重に、その様を真似た。


 動作は遅いが、着実に腕をあげてきている。その感触は確かだ。科尻や鵠沼も、太鼓判を押す。

 

 心地いい汗をかく。たまに面松斎もやってきて、差し入れをする。港よりはいる珍しい書物もしかり、新しい情報も入れてくれる。小笠原の屋敷は、為信専用の塾と化した。



 

 ……時は経つ。

 雪は融け、年号が永禄から元亀に改元された頃。石川高信公の容態は一向に良くならず、彼は覚悟を決めた。最後は鷹狩をして、武将としての生涯を閉じようと希望する。


 津軽衆は、高岡の地に集まった。


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