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津軽藩以前 (1568-1576)  作者: かんから
偽一揆 永禄十二年(1569)正月
14/105

第一章 第十話 岩木山、雪の陣

 伝令は、大声で叫ぶ。


“石川様、三千の兵を率いてご着陣”


 為信も慌ててしまい、眠気など覚めてしまった。家来衆総出で迎える。


 石川高信公……老齢ではあるが、いまだ衰えを見せず。長いあご髭を蓄え、古代中国の関羽を思わせる。

 陣中に彼は家来を引きつれ入ってくる。為信は上座を差し出し、下に頭をさげる。高信は “うむ” と相槌をし、席に座る。周りの者らに眼を光らせた。


 高信はとてつもなく低い声で問う。


 「戦況は。」


 森岡が答える。


「はい。つい先ほど和が成り、一揆勢は今夜中に引き上げます。」


 “おおっ” と高信の引き連れてきた者らは驚きの声をあげた。しかしである、高信は言った。


「これですべてが済むと思うか。」


 “……一度、反旗を翻した者は二度三度とやるものだ。そうであれば、今をもって平らげるのがいいのではないか”


 為信は呆然とした。……いや、呆然としてはいられない。口を開こうとするが、森岡はだまって首を振る。だが高信は為信に気付いてしまった。


「何かあるのか。話してみろ。」


 鼓動は激しさを増す。……いやまて、早口になるな。なるな、なるなよ……。


「……信なくば立たず。……私は民と約束したのです。ここで不意打ちをかければ我らの信用を失うばかりか、引いては南部の今後に響きかねませぬ。……どうかご容赦を。」


 ……よし、落ち着いて言えた。


 高信は彼を凝視する。その鷹のような鋭い目、為信は抗うことのできないネズミ一匹。


 「……わしも考えているぞ。相川西野の乱が平定されたばかり、そして今度の事。聖域とて、徹底的にやるべきかと思ったがな。珍しい奴。」




 “わしに意見するとはのう……。よい、大浦の領内での事だ。引き上げよう”



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