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津軽藩以前 (1568-1576)  作者: かんから
偽一揆 永禄十二年(1569)正月
12/105

第一章 第八話 岩木山、雪の陣

 二人は原野を抜け、寺へ続く山道を歩む。周りを小高い杉の木が囲み、葉や枝につく雪がたまにこぼれ落ちてくる。


 寺がどうなっているかは想像がつく。倒れている者もいよう。すでに昔の初陣で慣れた。武士ならば当然、そうであらねばならない。

 

 ……山門を入る。雪が赤く染まり、山法師らが死んでいる。……これまで民から食べ物や女を奪い、聖域ということに胡坐をかき、仏の道を極めない輩。


 ……脇の禅堂より哀しげな声が聞こえる。……女のわめき。為信は頭を抱える。……これでは、不埒な法師どもと同じではないか。為信の顔は険しかったであろう。隣で面松斎は言う。


「……他国者、特に "はぐれ者" なればこそです。」

 

 日々を懸命に生きている。身寄りもなくば、何時のたれ死ぬかもわからない。今しかできないことをしているだけ。


  二人は一揆の大将である万次のいる仏殿に入る。扉を開けると、荒れ狂う者らは広い板間でたむろしている様が見えた。装いの違う為信へ、すべての視線が注がれる。注目を避けようと壁際に顔を向けると、そこには縄で縛りつけられている法師らがおり、体のいたるところから血を流して悶えていた。

 万次は荒れ狂う者らよりも上段、首の欠けている釈迦像の肩に寄りかかっている。笑みを浮かべ、饅頭を喰らっていた。こちらに気付くと、手に取るものを下に投げ捨てた。


 「おお、為信様か。」


 大声で二人を呼ぶ。為信は堂々と人をかき分けて進む。できる限りの笑みを浮かべて話しかけた。


「うむ、ご苦労。今夜中に引き上げるように取り計らえ。」


 万次は手下に指示を出す。



 すると、しばりつけられている法師らを殺めていく。思い思いの方法で。悲鳴は血しぶきと共に消える。


 ……やりすぎだ。為信に、笑みを浮かべるだけの余裕は無くなっていた。万次は言い放つ。


「当然だろう。この会話を、この様を、ここに為信がいるということを見られているのだ。」


 ……禅堂の女らもか。


「そうだ。あのまま逃がしたら、俺らの噂が悪くなる。」


 これが、俺らの流儀だ。


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