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津軽藩以前 (1568-1576)  作者: かんから
偽一揆 永禄十二年(1569)正月
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第一章 第六話 岩木山、雪の陣   +大浦城絵図

 ……冬は眠りの季節。じっと春を待つ。


 そんな悠長なことを、民は言っていられない。秋の収穫はめっぽう少なく、さらには相川西野の乱による兵糧徴収。在来の民にとっても過酷だった。

 為信は家来衆に蔵から兵糧米を施そうと幾度となく訴えたが、願いかなわず。次の戦に備えてとっておかねばならぬと、煙たがられる始末。

 民を苦しめておいて何が戦だと心の中は煮えたぎっていたが、無理やり抑え込んで平静を保つように努めるしかなかった。



 “偽一揆” は、雪が降りやんだ日に決行された。その日は偶然にも正月であった。万次は他国者だけでなく仲間内の荒れ狂うものも集めたので、為信が想像していた人数よりも多かった。その数、三百人。

 万次らの寺に近づく音は、降り積もった雪でまったく聞こえない。聞こえていたとしても正月である。法師らは酒や女に夢中で、外に何があろうとも気が付かない。


 ……このような寺であるので、正月に訪れる庶民などいない。


 一揆勢はそのまま山門に突入。大勢の仲間が門に体当たりすると、屋根に積もっている雪が音を立てて下に落ちる。中の者はそれで目を覚ます。ぼんやりしているうちに、門は解き放たれた。あくまで抵抗しようとする者もいたが……呑んだくれの力は皆無。生き残った山法師らは仏殿で縄にかけられ、荒れ狂う者らの苛めに使われた。

 解放された女らもまた、餌食となった。

 

 山の異変に気付いた民の中には、本物の一揆だと勘違いをして参加をする者も多く、併せて四百人の規模となる。

 

 ……岩木山は大浦城より西側。大浦家の領内である。一揆勢を鎮圧するため、為信を総大将に総勢千人の兵が岩木山山麓の百沢(ひゃくざわ)に着陣。ただし、実質的な指揮権は家来の森岡が持った。彼は大浦家の古参であり、老練な戦上手だ。


 森岡は言う。


「低い方から高い方に攻め入るのは難しい。山であればこちらより雪深く足をとられる。ならばこのまま留まり、相手の兵糧が切れるのを待つのがいい。」


 しかし兵にとっては、このまま付陣し続けるのはつらい。ほら、雪も降ってきた。いくら松明を燃やしても、早く終わらしたいのにはかわりない。

 だが森岡の言う事は、勝つためには正しい。敵は屋根の下で寒さに強いが、いずれ兵糧は切れる。こちらは城から送ってもらえばいい。加えてあちらは聖域。なるべく血を流すのは避けたい。



大浦城絵図

https://18782.mitemin.net/i290576/

挿絵(By みてみん)

2018/02/15  挿絵に関して


出典元:特集 津軽古城址

http://www.town.ajigasawa.lg.jp/mitsunobu/castle.html

鰺ヶ沢町教育委員会 教育課 中田様のご厚意こうい(あずか)りまして掲載が許されております。小説家になろうの運営様にも、本文以外でのURL明記の許可を得ております。


光信公の館

〒038-2725

青森県西津軽郡鰺ヶ沢町大字種里町字大柳90

http://www.town.ajigasawa.lg.jp/mitsunobu/

TEL 0173-79-2535


鰺ヶ沢町教育委員会 教育課

〒038-2792

青森県西津軽郡鰺ヶ沢町大字本町209-2

TEL 0173-72-2111(内線431・433)

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