華の帰り道
奈々と別れた私は、
いつもならこの時間はタクシーを拾って帰るのだが、
今日は音楽も聴かずに歩いて家へと向かった。
奈々に言われたこと、奈々が抱えている不安を聞いて、
私は考えていた。
結婚できないことや、このままずっと一人なのではないかという事に
不安を感じている私とは真逆の不安を奈々は感じていたんだ。
奈々には倉本くんという素敵な恋人がいて、
付き合いが長い二人は結婚もそろそろ考えているものだと、
勝手に思っていたのだ。
だから、今日の話は驚いた。
街でよく見る、幸せそうな家族は
当たり前なんかじゃないし、とっても奇跡的なことなのだと思い知らされたようだった。
妊娠を知ったときの奈々の気持ちや倉本くんにどんな反応をされるか不安な奈々の気持ちを考えると、胸が痛くなった。
私の数少ない友達。
奈々の今までの彼氏だって知ってるし、辛いとき一緒に乗り越えてきた、
大事な友達。
同級生が結婚したことや、子供ができたことを
SNSで知っても、おめでとうと素直に喜ぶわけでもなく、
私はなんで結婚できないんだ。とか、なんであの子が・・・。
と、ひねくれた事ばかり思っていたのに。
奈々にはそんな感情一つもうまれなかった。
もちろん、奈々が悩みを抱えているからではないし、幸せいっぱいに報告してきてたとしても、本当に素直に嬉しい気持ちになっただろう。
奈々には一番に幸せになって欲しい。
そんな風に思える友達。
考えても奈々くらいしかいない。
きっと奈々は今凄く辛いだろうけど、
今まで頑張ってきた奈々だから、大丈夫。
自然とそんな風に思えた。
家についた華は、珍しくブランドのサイトをチェックすることをせずに、眠りについた。
目を閉じたものの、すぐには寝れなかった。