華と真奈美の涙
奈々と倉本くんと会うという約束は
三人のスケジュールが中々合わず
どんどん流れていく。
もちろん早く会ってお祝いをしたい。
奈々の笑顔を早く見たい。
でも今の私は真奈美のことで頭がいっぱいになってしまっている。
つくづく自分が不器用な奴だと思う。
仕事終わり、私は真奈美を外で待っていた。
今日は真奈美の方が帰り支度が遅かったのだ。
昨日のことをまずは謝ろうと思った。
五分ほどしてから真奈美が外に出てきた。
私に気づくと、目を合わさずに
スタスタと歩いて行こうとした。
「待って。真奈美」
真奈美が足をとめた。
「昨日はごめん。」
真奈美が振り向いて私の顔をみた。
「いいの。私がおかしかった。ごめんね」
真奈美はこれ以上、話したくない様な、そっけない言い方をして
再び歩き出した。
「あ、真奈美!待って!」
そう言って真奈美に駆け寄った。
「また腕に痣作ってたよね?さっき更衣室で見えたんだ。大きくて痛そう。」
真奈美は私を睨んだ。
いつもならそこで諦めてしまうが、私は少し強く言った
「今の彼氏なんでしょ?」
すると真奈美は少し俯いて頷いた。
私は真奈美を連れて駅のすぐ近くにある
小さな公園のベンチに座った。
真奈美は何かを諦めたように
力なく着いてきた。
ベンチに座るが、真奈美は俯いたままだった。
「その痣たちは彼氏にやられたことなの?」
真奈美は少し間をあけて答えた
「うん。でも悪気はないの。すぐに謝ってくれるし。いつもは凄く優しいの。」
「でも、それって」
「分かってる」
私の言葉を遮る様に言った。
「じゃあなんで…」
「好きなの」
真奈美は私と今日初めて目を合わせた。
「でも、このままじゃ真奈美がボロボロになっちゃうよ」
「いいの。それでも別に。初めてなの、こんなに一人の人好きになれたの」
「そんな」
人間はどうして
こうも複雑で切ないのだろう。
人を愛するということは
どんな意味を持つのだろう。
こんなに痛くて苦しいのに
好きだからという言葉で片付けてしまっていいものなのか。
「真奈美。正直に言うよ」
「なに?」
「その彼とは今すぐ別れな」
真奈美は俯いた
「そりゃあそう言うよね」
少し鼻で笑った様な言い方だった。
「私は真面目に言ってるの。」
「なんでお互い好きなのに別れなきゃいけないの?
華は付き合ったことがないから簡単に言うんだよ!何も知らないくせに、分かったかの様に言わないで!」
真奈美が立ち上がった。
私は凄くショックだった。
確かに25年間誰とも付き合ったことがない私が言えたことでもないけど、
なんだかその言葉が心にグサっと刺さる様だった。
「分からないよ!分からないから。どうしたらいいの?私はなにができるの?真奈美のそんな姿見たくないんだよ。」
思わず真奈美に向かって叫んでいた。
涙も流れていた。
真奈美は泣く私を見て、泣いた。
真奈美は私に向かって何度も謝っていた。
やがて真奈美は涙を拭いて帰っていった。
私は公園に残りしばらく
泣いていた。
ここ最近、泣いてばかりだな。
泣くこと凄く嫌いだったのに。
いつからこんな泣き虫になったんだろう。
真奈美にちゃんと伝わったならいいけど。




