小宮華
雨が今にも降ってきそうな空の下、
お気に入りの傘を持った小宮華はコンビニ1つない、いつもの帰り道を歩いていた。
夜にかけて雨が降ると天気予報で可愛らしいお天気お姉さんが言っていたが、
いつもより早い帰りになったため、この傘は使わなくてすみそうだ。
「ただいま」真っ暗な玄関で1人呟き
中へ入る。
玄関には華の大好きな靴がいくつも並び、箱に入った靴もいくつも重なり置いてある。
リビングの電気をつけてソファーに腰をおろす前に、
着ていた黒のコートをクローゼットへとしまう。クローゼットには色ごとに掛けられた洋服たちが綺麗に並んでいる。
そんな光景を見て華は満足げに微笑み、やかんに水を入れにキッチンへ行き火にかける。
広いとはいえない1LDKの家は25歳の華の趣味でキレイに彩られている。
[小宮華]
25歳。独身。
というより彼氏は今までいたことがない。
自分に自信が全くないから、せめてもの思いから洋服を気にかけているうちに
ファッションが大好きになった。
そんな見た目からは想像もつかないほどの人見知りでマイナス思考のせいか、
友達は少ないし恋人も出来る気配がない。
仕事も女性だらけの脱毛サロンで働いている。
同世代のみんなはどんどん結婚していくし、子供がいる子もいる。
結婚してない子でも結婚を前提とした恋人がちゃっかりいる。
だんだん焦りはじめてはいるけど、出会いもないし、合コンとか紹介とか踏み込む勇気がなくて断り続けてたら、今じゃ誘われることもなくなった。
どうしよう。
私なにやってんだろう。
今までなにしてきたんだろう。
もしかしてこのまま1人なのかな。
やかんがピーという音を出して湯気が上がってく、はっ!となり華は慌てて火をとめた。