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◆空集合

◆空集合


・不世出の才 長谷部卓

 この企画の面白いところはネット小説の企画にしては凝った作りになっていることだ。

 まずちゃんとした企画の発起人がいる。それに企画サイドもバナーを作る者や自治運営を守る者もいる。そしてチャットを作り参加者当人同士の交流もしっかりと行われている。誰かから金が出されるわけではないのにこれほどまでちゃんとした企画を作り上げた例を寡聞にして私は知らない。

 そんな企画のレビューをできることは身に余る光栄である。だが反面適当なレビューを書いて周りに叩かれるかもしれないと思うと、少し怖ろしい気がする。企画サイトでやればよいものを、外部の掲示板でやれSFではないだの面白く無いだの、果ては人格を攻撃する輩までいるようだから、怖ろしくて当然といえば当然か。

 さておきレビューに入ろう。個別に書かなかったのはレビューも得点の一つになるからである。誠に申し訳ないことだが全作品を読めたわけではない。途中で読むのを断念した作品もある。自身、レビューは好きだがそれが順位に直結するとなると少々気が引けるため、どの作品の点数にでもならないであろう総評とした。レビューは読んだ順に行う。

『かくも赤いあの星に』。これはよくできた宇宙探査譚だった。宇宙に飛び出すまで少々長く、技術的な話ばかりで辛かったが――カーボン・ナノ・チューブを利用して強度の高いホイールを作り、軌道エレベータに応用する話は面白かった――宇宙に出て、火星に到達してからは人面岩を一つ取ってもぶっ飛んだ論理が展開され、面白く読めた。作者の丁寧な作り込みが端々から読み取れ面白かった。部門分けではハードの部に相応しい出来映えであったと云える。ちなみ私は一票投じた。

『トゥインキー・トゥインキー』。これは最初ライトSFかと思って読んだ。が、途中でハードSFであったと気付かされる上手い構成だ。他のレビューを見ると全然本歌取りに関して触れられていないのが残念でならない。異星人とのコンタクト物かと一見するだけでは取られるかも知れないが、本歌取りを考えると時間遡行物である。途中、知性体が少年にこれから起こるかも知れない悲劇について延々と語るシーンがあるが、これは過去の改変によって起こりうる未来の変化――分岐することでまた別の未来から知性体がやって来るハメに陥るのではないかという危惧――を未然に防ごうとしているシーンであろう。本家は知性体が未来の変化にはいっこう無関心で、むしろ積極的に主人公を助けることで改変しようとしているふしさえ見られるが。

『バロット』。骨太なサイバーパンクである。暴力と血の臭いが染み付く街を探偵が駆ける。仮想現実が現実と等価値になるとどうなるか。現実に重きを置くよりも脳と同じだけの演算力を持つマシンに人格を入れて、半永久に生きながらえる方がいいのではないか。仮想現実と現実とを入れ替わりながら発生する事件は、密室殺人やアリバイ崩し、はては法廷劇へと目まぐるしく変貌を遂げ、最終的にはSFらしい落ちが付いている辺りに力量を感じた。ただ中編という長さでは少々物足りなく、続編が読みたいと切に願わされる作品だった。もちろん中編部門で一票投じた。ただ露骨に法廷物の古典へのオマージュが鼻についたと云えば鼻についた。

『ど』。これはよく分からなかった。鋭い作風有り、ほんわかする作風有りと書ける作者ではあると思うのだが……。ただなんとなく面白い、気の利いたことをよく云う友人との会話。そうとしか表現できない作品である。

『夏のサマリ』。タイムパラドクス物なのだが過去改変すると当然起こりうるであろう分岐を考慮に入れないスタイルは少々疑問。主人公たちがまだ幼く、ライトSFならではだと云われればそれまでなのだが。キャラが立ちすぎている嫌いがあるのでは好悪ははっきりと分かれるだろう。ラノベ調ではあるがキャラの心情の変化は一貫して書けているのでラノベにありがちな唐突さは感じられなかった。SF企画なのだから、もう少し何かテイストがあれば良かったのではと惜しまれる。

 以上が総評である。もう少し他の作品に触れたかったが、印象的な五作品をピックアップしてみた。と云いつつ少ししか触れていない物もあるが。

 このレビューが誰かの指標になれば幸いだ。楽しい企画、ありがとうございました。

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