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気づけなかったこと

あの時、違う選択をしていれば――。

そう思ったことはありませんか。


これは、自分の選択を後悔した男が綴る、記録の物語。

「ふわぁ〜、眠い......」


欠伸を噛み殺しながら、ぼんやりそんなことを思う。


朝のホームルームが始まる。


ふと視線を向けた先、いつもの席に――いつもの影がない。


「あいつ、遅刻か?」


珍しいな、と思ったその時、先生が口を開いた。


「サツキは、これからしばらく休むらしい」


その一言で、頭の中が疑問で埋め尽くされる。


規則正しく生活してるあいつが、しばらく休む?


前までなら、たまにはあるかで済ませていたはずだ。


――でも、今回は違う。


胸の奥に、小さな引っかかりが残る。


以前と違ったサツキの様子。

スマホのメッセージ。

それを見たあとの、あいつの反応――


全部が、どこか噛み合わない。


俺はサツキに連絡を入れる。


――けど。


返信どころか、既読すらつかない。


友人に聞いても、誰も何も知らない。

家の場所も知らない。


先生に聞いても、詳しいことは教えてくれなかった。


時間だけが、静かに過ぎていく。


昼休み。放課後。


あの木の下で、ぼーっと待ってみても――


あいつはもう、ひょいっと現れない。


そんな日が、一週間続いた。


「はぁ......今日はもういいかな......」


落ち着かないまま、時間だけが過ぎていく。


頭の中では、最悪の想像ばかりが膨らんでいた。


「今日は、休もう......」


母さんにたまには気分転換しろと言われ、少しだけ外を歩くことにした。


近くの病院の前を通りかかった時、見覚えのある人影が目に入る。


「サツキ?」


思わず声に出す。


けれど――違う。


そこにいたのは、サツキじゃなくて、その母親だった。


「お、お久しぶりです」


声をかけると、相手もこちらに気づく。


「あの、聞いてもいいかわからないんですけど......」


戸惑いながらもそう切り出すと、彼女の母は少し不思議そうな顔をしながらも頷いた。


「サツキさんって、どうしたんですか?」


その瞬間、母親の表情がわずかに揺れる。


少し驚いたように、それでもゆっくりと話し始めた。


セツには、もう知らせてあると聞いていたこと。

病気のことは、セツ以外には話していないこと。


そして――今は、入院していること。


それでも、回復に向かっているということ。


最後に、彼女の母は小さく、何かをつぶやいた。


聞き取れないほどの、かすかな声で。


でも俺は、回復に向かっているという言葉に安心して――


その最後の言葉を、聞き返すことはなかった。

今回は少し切ない回になりました。

セツがこの先どう向き合っていくのか、見守っていただけたら嬉しいです。

次回は、少しずつ真実に触れていきます。

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