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届かない言葉

あの時、違う選択をしていれば――。

そう思ったことはありませんか。


これは、自分の選択を後悔した男が綴る、記録の物語。

ーー時は少し進み


「チッ......くそ......」


吐き捨てるようにつぶやき、酒をあおる


「あんた、酒飲みすぎよ」


ノイズ交じりにあいつの声が聞こえる


煙草を口に咥え、火をつける


天井を見上げ、煙を吐く


「はぁ~、また幻聴か......」

「あいつがいなくなってもう三年か」


あの日の約束。


ーー健康に生きて、私のことは忘れてだった


「無理に決まってんだろ」


そう、言葉が漏れる


俺はあいつのことなんか忘れてくなかった 違う忘れられなかった


「煙草も健康に悪いんだからやめなさいよ」


サツキが煙草を取り上げようとするができない


「幻聴に幻覚か......」

サツキに触れようと手を伸ばすが 手は空を切る


突然頬に涙が流れる


「会いたい......まだ、伝えてないことが、言いたかったことが......あるのに」


水族館に行った時の写真を見返す


「懐かしいなぁ~」


視界がさらににじむ


「この時に気づいてれば......あいつとの時間を大切にできたのに」


さらに、酒をあおる


「酒なくなっちまったな、買いに行くか......」

「やめなさい、これ以上はほんとに体に良くないわよ」


ノイズ交じりのあいつの声がうるさく感じる


「うるせぇ......お前は偽物だ......本物じゃない......」

「本物に会いてぇよ,,,,,,」


今更後悔しても遅いとわかっている。


でも......俺はあいつに伝えていないことがあった


愛してるも言ってやれてないし、ありがとうも伝えてない


俺は家を出て酒を買いに向かう


コンビニに行く道中サツキに似た女性が通り過ぎる


「サツキ?」


違う、あいつはもうこの世にいない


「さっさと買って帰るか」


酒を買い家に帰ろうとすると


「ここは?」


俺は無意識のうちにマンションの屋上に立っていた


風が俺の頬を撫でる


「なんでこんなところに......」

「ハハッ......俺、疲れてるんだな」


立ち直れていた気がした

ーーそれはそう思い込んでいただけだった


「お前、そろそろ立ち直れよ......」


友人にそう言われたことがある


俺はそこから立ち直った気になっていた


「危ないでしょ!そこから降りなさい!」


振り向くとそこにはサツキが立っていた


「サツキ......」


内心わかっていた、これは幻覚と幻聴だっていうのが......


でも、俺は屋上の地面に崩れ落ちた


「あんた、まさか忘れたの?」

「忘れた?何のことだ?」

「約束のこと、忘れたとは言わせないわよ」


俺ははっとして、顔を上げる


「ほらっ、そんなところにいないでいこっ?」


幻覚の中のサツキは手を差し出してくれた


触れられるはずもないのに


俺はおぼつかない足取りで屋上をあとにする


「約束はちゃんと守ってよね、私とあんたの最初で最後の約束でしょ」

「正直、私はあんたが健康に生きていてくれればいいからね......」


当たり前だろーー

お前とした、最初で最後の約束なんだから......

屋上を後にする。


夜風が、静かに吹き抜ける。


空を見上げる。


「……ありがとう」


声は、風に溶けていく。


少しだけ間を置いて。


「……愛してる」


もう、返事はない。


それでも――


ほんの少しだけ、前に進めた気がした

今回は少し未来の話を書いてみました。

セツが少しでも前を向けるといいなと思っています。


次回は水族館デートの後の話に戻る予定です。

ぜひ、引き続き読んでいただけると嬉しいです。

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