君に言えないこと
あの時、違う選択をしていれば――。
そう思ったことはありませんか。
これは、自分の選択を後悔した男が綴る、記録の物語。
私の名前はサツキ、とある高校でクラスの委員長をしているわ。
私には二つ隠していることがあるわ
1つ同じクラスのセツのことが好き
2つ実は病でもう長くはないこと
1つ目は親しい友達は知っているけれど、二つ目は私の家族しか知らない
自分自身も気づき始めたことがある
最近本当に病の浸食がどんどん悪化していっていること
でも、まだ私にはしたいことがある
まだ、大好きな彼に思いを伝えていないから
だからこそ、昨日彼をデートに誘ってみた
私は彼に暇そうだからという理由を言ったけれど違う
私は彼と一緒にいたかったから彼を誘った
彼は水族館に行ったことがなかったらしいからちょうどよかった
彼とのデートが楽しみで仕方なかった
できるだけおしゃれしてかわいく見られようと頑張った
デートの時間が待ちきれずに集合場所に30分早く着くと彼は立っていた
「早かったじゃない」
そう声をかけると彼は
「女子を待たせるわけにはいかない」
と言ってくれた。女の子として見てくれてるのが私は嬉しかった
しかし、彼はなぜか目を合わせず下を向いている
「ほら、いこっ?」
私はそう言って彼の手を引いた
そして電車に乗り込む
電車に揺られながら私は彼を横目でちらちら見てしまう
やっぱり彼はかっこいい
「どこいくの?」
彼はそう聞いてくる
でも私は彼に
「秘密」
とだけ答える。彼にはサプライズ的なものをしたかったから
彼はさらに聞く
「なんで俺を誘ったの?」
私は動揺しながら答える
「え、えと......暇そうだから」
これも嘘、私は彼と少しでも一緒にいたかった
私には時間が少ないから
電車のアナウンスが入る
「つぎはぁ~水族館前」
電車を降り、駅のホームを出ると目の前にはガラス張りの建物があり、中から青い光があふれ出ている。
その光は、ゆらゆらと揺れていた。
横目で彼を見ると目を輝かせて驚いていた
チケットを買い中へ入る
「うわぁ、綺麗だなぁ」
彼はそう言葉を漏らし、喜んでいる
やはり、私は魚が好きだ......
自由に広い海を生きていけるから
でも、彼は言う
「人間が一番自由なんじゃない?」
私は驚きを隠せなかったが、理由を聞いて納得してしまう
その時、水族館の中にアナウンスが響く
『30分後に当館名物のペンギンの散歩ショーが始まります、無料で見れるのでぜひ見て行ってください』
「せつ、いこっ?」
私は彼の手を引いて行く
彼の手は暖かかった
私は、今の時間を思い出に残すためにスマホで録画をする
「一回しか見れないからね」
彼は疑問に思いながら聞いてくる
「また来たらいいだろ?」
(違うの、私にはこの一瞬はもうないの......もう、時間がないから)
録画しているスマホが少し震える
病院からの通知だ、幸い彼には見えていない
私の楽しいデートは一瞬気持ちが重くなった
内容は、検査結果を明日知らせるとのことだった
このことは彼に知られてはいけない
彼はこのことを知ってしまうときっと、優しくなってしまう
そうなると、彼が話しているのは女の子としての私ではなく、先の短い病人として接してしまうからだ
そうなると、彼の時間を奪ってしまう......
だからこそ、彼には知らせてはいけない。
……言えないまま、終わってしまうのかな。
――でも、それが彼にとって一番いいのかもしれない。
そう、自分に言い聞かせることしかできなかった。
それは、きっとーー
私の本当の気持ちから逃げているだけだ
今回は水族館デートのサツキ目線でした。
彼女の隠していることが、少しずつ見えてきましたね。
次の展開も楽しんでもらえたら嬉しいです。




