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第4話 黒き塔の戦い

戦火は、再び王国を呑み込もうとしていた。

北の空に、黒き塔――魔族の拠点が現れたとの報が入ったのだ。


王国軍は総動員され、各地の騎士団が次々と集結していく。

カイルもまた、かつての仲間たちと共に前線へと赴いた。


「……久しいな、カイル」

「ああ。まさかまた剣を取ることになるとはな」


仲間の笑みの奥に、皆どこか影を落としていた。

それでも彼らは剣を抜き、国を、誰かを、守るために立ち上がる。


夜明けと共に、黒い塔の周囲に無数の魔獣が現れた。

その中に――人の姿をした影がひとつ。


「……人間?」


カイルが目を凝らす。

細い腕、長い髪。

だが、その肌は白く、目は紅く染まり、唇からは微かな光が漏れている。


「まさか……リア?」


次の瞬間、光弾が地を裂いた。

カイルは剣で受け止めるが、衝撃で膝をつく。


塔の上、黒衣の魔王が静かに笑った。

「人の愛など、脆く儚い。だが――それゆえに、美しい」


その声に応えるように、リアの身体が震える。

彼女の瞳に一瞬、苦悶の光が宿った。


「主様……わたし……どうして……」


カイルは剣を構えたまま叫ぶ。

「リア! お前は――お前自身の意志でここにいるのか!」


「……わからない。でも、誰かが呼んでるの。ずっと、ずっと……」


魔王の声が重なった。

「彼女は“器”だ。この塔を守るための聖なる核。人間の愛などで抗えるものか」


「黙れ!」


カイルが剣を振るう。

光が奔り、魔王の影を裂く。

しかし次の瞬間、リアの身体が苦しげに光り出した。


「リアっ!」


「……主様。もう、近づかないで。私の中で、何かが――」


彼女の声が悲鳴に変わる。

白い光が彼女を包み、塔の中心へと吸い込んでいった。


カイルはその光の中に手を伸ばした。

届かない。


彼の手の中には、ただ一枚の花弁だけが残っていた。


それは、あの日リアが育てていた“白い花”。

名を――リアと呼んだ花だった。


「リア……!」


戦場にカイルの叫びが響く。

黒い塔が崩れ落ち、世界が光に呑まれていく。


その光の中で、リアの声が微かに届いた。


『主様……もし、私がもう一度この世に生まれ落ちることができたなら――その時も、どうか私を見つけてください。たとえ姿が変わっても、きっと、あなたの傍に帰りますから……』

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