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プロローグ:花の夢
――世界は、もうすぐ終わる。
赤黒い空を裂いて、炎が降る。
焦げた風が、焼け落ちた街を通り抜けていく。
城壁の上に立つひとりの女が、静かに目を閉じた。
その瞳は、かつて空の色を映していたという。
今はただ、深い紫に染まり、世界の滅びを映している。
「これが、あなたの望んだ未来ですか……主様」
微笑とも嘆きともつかぬ声が、風に溶けた。
女の掌には、ひとひらの白い花が握られている。
どこから来たのかも分からぬ花。
戦火の中で、唯一汚れずに咲いていた。
彼女は花を胸に抱き、崩れ落ちる城を見下ろす。
「次こそ、きっと……」
そう呟いた瞬間、彼女の身体が光に包まれる。
光は時を超え、流れ、遠い過去へと消えていった。
その名を知る者は、もういない。
ただ、彼女の頬を伝う涙の跡だけが、かすかに輝いていた。




