手向けの花
花なんか別に好きじゃなかった。
彼と出逢うまでは。
彼は私に色んな事を教えてくれた。
毎日同じ事の繰り返しで、つまらないと思っていた私の日常がちょっとずつ変わり始めた。
「理央、大好きだよ」
いつもそう言って笑ってた。
感情を出す事が苦手な私には眩しかった。
私も彼にきちんと想いを伝えるべきだったんだと思う。
でも、恥ずかしくて中々言えなかった。
そんな時、突然彼との別れが訪れた。
私はショックで言葉も出なかった。
あんなに沢山の愛情を貰ったのに、私は全然返せなかった。
悔やんでも遅い。
彼が好きだったピンクのガーベラを部屋に飾ってみた。
なんだか彼が喜んでくれるような気がして。
改めて独りになった部屋を見渡して、私は感情が溢れて止まらなくなった。
彼に逢いたい。
逢って伝えたい事が沢山ある。
このガーベラも、彼との思い出が詰まり過ぎている。
そんな思い出が今でも心臓を刺すのだ。
fin.