友3
「お前、こんな状況でようそんなもん持って逃げて来たな」
呆れる村島に「女子やもん、当たり前やん」と百華が尻を蹴った。千華が慌てて止めたが、すでに村島は尻を押さえて身もだえしていた。
「百ちゃんありがとう」
嬉しそうな田中の意外に幼くて純粋な笑顔を見て、桧川の心の隅にあった固い部分が解れていった。
女子たちみんなに褒められ、腰に手を当てドヤ顔で村島を見遣る百華に笑いを堪え、桧川は片岡の顔に化粧を施し始める田中の横に立った。
「へえ、うまいもんやな」
下地をつけ広げ、その上に手早くファンデーションを塗り込んでいく田中の手つきに感心する。
「片岡君、髭薄いからきれいに仕上がるで。やりがいあるわ」
片岡本人はこの言葉を聞いているのかいないのか、苦悶の表情で目をつむったままだ。
「ねえ、田中さん――」
「なに?」
「これ付ける方法あるかな?」
桧川は小木原から預かった簪を田中に見せた。
「あ、それ、さっき説明聞いた伝説の――」
「そうまきちゃんの簪。片岡の頭に付けてって小木原に頼まれてな、よしわかった言うたもんの、こいつ短髪やん? どう付けよか悩んでたんよ――」
「ちょっと待ってて」
薄ピンクの頬紅をはたき、同色の口紅を塗って片岡の化粧を終えた田中は両手で自分の髪をつかんだ。パチッと小さな音がすると長い茶髪が外れる。
「うわっ」
桧川だけでなくギャラリー全員、思わず驚きを発した。
「これでいけるんちゃう?」
ショートヘアの田中がにんまり笑う。
村島が何か言いたげに口を開きかけたが、百華が足を踏んだ。
「まだなんも言うてへんのにぃ」
痛がる村島を尻目に百華が「お姉ちゃん、ショートもかわいいわ」と親指を立てて『いいね』した。
「ありがとう」
田中が笑顔を返す。
「どうでもええからはよやってぇ」
片岡の情けない声に、
「よしっ、仕上げにかかるで」
桧川の気合にうなずいた田中が片岡の頭にウィッグを被せた。




