友1
十月十二日水曜日午後六時四十分
一海寺庫裡(大座敷)
「ほんまにあの化けもん退治できるんか?」
小木原たちにそう詰め寄る村島に、桧川はふんっと鼻で笑いながらも、自分も肯定の返事を期待した。
大座敷に戻ってきた小木原と三上に化けもんの正体とおよその退治案を聞いた生徒たちは各々不安を口にした。
村島もその一人だ。
「確証はありません。僕たちの頑張り次第――でしょうか」
言い淀んではいるが三上の表情に曇りはなく、勝算のほうが大きいと桧川は判断した。少し気がかりなのは片岡の顔色が悪いことだ。
「たのむで。俺死にたないんや。ほんまにほんまに大丈夫なんか? な? な?」
なおも村島は小木原に縋りつく。
「お前はなんもせんのやかい、がたがた言うな」
すでにマウントをとっている百華が村島の脚を蹴り、慌てて千華が止めに入った。
それを見て笑いながら桧川は、
「ほんま百ちゃんの言う通りや。村島は引っ込んどけ。
うちらは全力で応援する。まあ祈るくらいしかでけへんけど、手伝えることは手伝うし」
その言葉に織田、東をはじめ女子たちが大きくうなずき、その他の男子陣もうなずく。
「ほいたら道具の準備してくれるか。おかんに聞いて蝋燭やら線香やらあるだけ集めて。
で、おかんは?」
「腹減ったら戦できんって、ご飯の支度してくれてるよ。女子も何人か手伝ってる」
織田の返事に小木原がうなずく。
「他に用意するもんないか?」
桧川の問いに、
「寺務所にあるお札も全部持ってきといて。
神社のお札は取んに行けやんよって、今から三上が別室で書く」
「集中したいので邪魔しないようにお願いします」
小木原の言葉を継いだ三上が村島を見遣る。女子たちのぷっと吹き出す音があちこちで上がった。
「ここのんも足りへんやろから俺も本堂に籠って書く。
そやかい桧川、後頼んどくで。
そや、誰ど松明作れるやついるか。本格的でのうてええんやけど」
「棒に布切れ巻いたみたいなでええんか?」
隣クラスの男子が手を上げた。
小木原が判断を窺うように三上を振り返った。みなの視線も集中する。
「そんなでいいと思います。道々に配置するんでできるだけ数を作ってください」
「よし決まった。これも材料あるんか、おかんに聞いて。
あ、ちょっと」
さっそく動き始めようとした桧川は小木原に手招きされた。
「なに?」
「片岡が着れるような着物もないか、おかんに聞いてくれへんか?」
「お、女子に変装させるんやな」
「そう。で、これをうまいこと頭に付けて欲しい。ここっちゅう時に、片岡がすぐ手に取れるようにもして」
「ここっちゅう時?」
制服のポケットからハンカチの包みを出している小木原に訊く。
「化けもん罠に嵌める時や」
包みを広げたら中からつやつやと光る赤い珊瑚の簪が出てきた。
「おっ、これがまきちゃんの形見か」
「そや。化けもんが騙されるくらい片岡を女子っぽくしてくれ」
「よしわかった」
しずしずと簪を受け取り桧川はうなずいた。




