解2
「いや、これは話の腰を折ってんと違うで、いや折ってるけど……まあ聞いてくれ。
先代――わしの親――が亡うなる前、枕元に呼ばれて、そん時大事な巻きもんあるらしいて知った」
「さっきも聞いたわ」
鎮がふんっと鼻で嗤う。
「まあ聞けて。
先代は子供の頃、先々代――わしの祖父――に一海寺とのしこりを聞かされたそうや。先々代の親がしでかした言うてな。
そん時まで交代で預かってもんを面倒になって押し付けたて。後々えらい後悔したらしいわ。
そやけど先代は、聞いたもんのそれがほんまにあるんかどうか、大事なもんやで確かめなあかん思てたらしけど、一海寺とはなんとのう不仲な感じやったで、ずうっと訊ねられんかったらしい。
先代はそれが心残りやゆうてな――わしが託されたっちゅうわけや。
そやけ当時こいつに確かめたんや。知らぬ存ぜぬでけんもほろろやったけどな」
「なっ、そんなん知るかっ! 言いがかりつけんな」
鎮の腰が浮き上がり、小木原は慌てて袈裟の袖をつかんだ。
「言いがかりちゃうて、まあ聞け――
そん時わしは伝聞されてた内容もしっかり聞いた。ほんまのこと言うとな半信半疑やったんや、死にかけてるで夢でも見てるんちゃうかいなって。
そやかい鎮がけんもほろろに「知らん」言うた時、腹立ったんは事実やけど、「ま、そやろな」思て、それ以上突っ込まんかった。まさか、こないなことなると思わんし――
鎮が知らんかったんは事実や、そやけ責められん。けどな、わしは知ってた。半信半疑やいうてもわしは知ってたんや。そやのになんも対処せんかった……そやけ、こないなったんはわしのせいなんや――
いったい何人の命が――」
深く項垂れ震える光悦の肩に三上がそっと手を置いた。
上げてた腰をすとんと落とし、鎮も項垂れる。
「いや。俺も悪かった。お前に訊かれた時、ちゃんと調べるべきやった。仁子のことでお前がずっと俺を恨んでる思てた。そやかいお前が何言うても、言いがかりつけてる思て、まともに受けとったことない。
変な意地張って、聞くべきことちゃんと聞けへんかったんで、こんなことなったんや。
あん時はまだうちには先代が元気でいてたし、お前の言うてたこと相談してたら、もっと早う井神のこと知ったかもしれん。親友やったお前の言葉もっとちゃんと聞いとけば――」
「し、親友?」
小木原と同時に三上と片岡、聖徳まで声を上げた。
「うん、親友やった」
うなずく鎮に光悦が顔を上げた。
「そや。こいつは親友が好きやった子を取ったんや。協力するふりしてな。お前の言うこと当たっとるわ、今回のことは別として、わしはお前のことずっと恨んでる。今でもなっ」
「なんやとっ」
「親父、やめっ」
光悦につかみかかろうとする鎮を小木原が軽々と押さえつけ、三上も立ち上がった光悦の袴を引いて尻餅をつかせた。
「なんともべたな三角関係やな」
聖徳の言葉に片岡が大笑いする。
「本当に情けないです」
困り顔の三上を見て小木原は「そやけど、これで対策のめどがついたんちゃうか」と笑った。
「猪狩山異聞と同じことを行うということですか?」
冷静に返す三上の言葉を聞いて、片岡から笑顔が消えた。
「なんかオレ、今ゾッとしたんやけど――気のせいやよな?」




