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井神   作者: 黒駒臣
第二章 顧
22/44

  

  

 夕暮れの村に帰って来た嘉助とその抱えているものを目撃した村人たちは事の顛末を聞き、たえの亡骸を戸板に乗せともに村長の吉村家に向かった。

 驚愕した村長は手負いの猪退治を即決し、村の男達総出で武器になる道具を集め、弓矢を作り、捕獲網の強化など準備にとりかかる。

 だが夜間、人肉に味を占めた古猪が麓の一軒を襲った。亭主の権三は村長宅に出向いて留守。二人の幼子を抱えた女房のきぬになす術はなく悲鳴を上げるしかなかった。

 声を聞きつけ様子を窺いに出た隣の女房が食い殺されたきぬと二人の子供を食らっている猪を目撃、すぐに近隣の女房たちとともに急ぎ村長の屋敷へと避難した。

 腹が膨れた古猪は追ってこなかったが、もはや一刻の猶予も許せない。

 村長と嘉助、悲しみに打ちひしがれながらも怒りを奮い立たせた権三や他の村人たちはまだ暗い早朝に獣道周辺で待ち伏せし、猪が再び村に下りてきたところを急襲、矢を放ち鋤や鍬を叩きつけた。

 血まみれの肉塊となっても恐怖と怒りが誰の手も止めさせなかった。

 だが、背後から「ふごっ」と鼻を鳴らす音が聞こえ、村人たちは荒い息を整えながら音のほうを振り返った。

 果たしてそこには今ここで仕留めたはずの古猪がいた。

 異様に大きな体躯と嘉助に抉られた鼻の傷がそれを証明している。傷からはまだ血が滲み出ていたが、何の痛手も被ってないように狡猾な瞳が嘲笑っていた。

 ただの猪に先行させ、確認する間もないほど頭に血が上る村人たちを()めたのだ。

 あっ、と思った時は遅かった。

 突進してきた古猪は逃げ惑い転ぶ男達を牙で突き、弾き飛ばし、腕や脚を噛み千切り、踏み散らした。

 古猪退治は失敗に終わった。


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