『朗読者の見習いとセミ』
朗読者の見習いが、セミに尋ねました。
「セミ君、君はどうしてそんなにいい声が出るんだい。僕は立派な朗読者になりたいんだ、教えてくれないか」
セミが答えました。
「僕も特に何か訓練を積んでいるわけでもないし、普通に過ごしているだけだからねえ。遺伝なんじゃないかなあ」
朗読者の見習いは食い下がります。
「遺伝だと、僕にはセミ君みたいないい声は出せないっていうことになるから、その説は採用したくないね。セミになることもできないし、できることといえば、セミ君と同じものを食べることかな。セミ君って、何を食べているんだい」
セミは答えました。
「木の汁とか、草の露だよ。君の口では、木の汁は吸えないだろうから、草の露をなめるといいよ」
朗読者の見習いは、来る日も来る日も、草の露をなめて、静かに死んでいきました。
教訓:カロリーオフはライフオフ。本を売るなら(以下略)。