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貞操逆転世界なのに思ってたのとちがう?  作者: イコ
二学期編

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体育祭の特典 後半

四人目、報上道子



ストレートの黒髪は、顔を隠すほど長く。

下を向いていて瞳すら見えない。



「おっお邪魔します」



小さな声で発せられた言葉は聞き逃しそうになる。

報上さんは、1-Bクラスから二学期になって上がってきた生徒だ。

まだ、1-Aでは最初こそ馴染んでいなかったけど。

体育祭を通して他の子とも仲良くなった印象はあるけど。


俺と話すのはこれが始めてだ。



「いらっしゃい。改めて黒瀬夜です。報上道子さんだよね?」


「ひゃい!【邪神様】が我の名を……これは夢か?もう死んでもいい」



なにやら小さな声で何か言っているが聞こえない。



「えっと、報上さん?道子さん?なんて呼べばいいかな?」


「ハゥッ!【邪神様】に話しかけられている。これは夢か?私心だのか?」



う~ん。何か言っているみたいだけど聞こえない。


仕方ないので、俺は近づいて身体を屈める。



「ごめんね。何を言ってくれてるのかわからなくて」


「ひゃ!ひゃ~~~~~~~~!!!!!!」



もの凄い勢いで、距離を取られた。


あれ~嫌われてる?


おかしいな。俺を指名してくれたってことは、そこまで嫌われてはいないはずなんだけど。



「今!何が起きた?私の前に【邪神様】が降臨された?まさか、そんなはずはない。

我のようなモブ女子に邪神様が近づいてくれるはずがないのだ。

我は影!【邪神様】という漆黒の太陽によって作り出された影でしかない。

同じ空間で息を吸うだけで、幸せだというのに……

写真を撮りたいなど言えるはずが……ひゃ!」



俺は意識を潜めて、そっち背後から近づいて報上さんの言葉を聞く。


断片的にはしか聞こえなかったが、どうやら写真が撮りたいそうだ。

ツーショット写真でいいのかな?


俺は今度こそ逃げられないように、報上さんの肩を捕まえて抱きしめる。



「いくよ。笑って」



自分のスマホで、抱きしめ合った二人を写真に収める。



「ふぇぇぇぇぇ!!!」



何やら小さな声で叫び声を上げているけど。

上手く撮れたようだ。



「報上さんのスマホ出して」



俺が命令口調で告げると、おずおずとスマホを取り出す。

強引ではあるけど。mainのIDを交換して、先ほど撮った写真を送っておく。



「はい。写真送っておいたよ。それと俺のIDも登録しておいたから。今日から友達だよ」


スマホを返して報上さんに告げると呆然としたまま、スマホと俺の顔を何度も見返している。



「それと」



俺は報上さんの髪をかき上げて、顔を覗き込む。

そこには色白で綺麗な顔をした報上さんの顔が現われる。

他の女子たち同様、本当にこの世界の女の子達はみんな綺麗だ。



「顔を隠すのもったいないよ。凄く綺麗だから。もっと見せてよ」



掻き上げた髪にゆっくりと撫でて、顔が見えるように整える。



「ほら、やっぱり美人だ」



笑いかけると、石のように固まっていた報上さんが突然起動して機械がショートしたように顔が真っ赤になっていく。



「キュ~!!!」



そのまま気絶してしまったので、保健室へ運んで終了した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


5人目は天宮樹里



「ヨル君。お久しぶりです。こうしてゆっくりと話をするのはですが」

「そうだね。ジュリとは衣装のことで結構やりとりしているから、女子の中では話している方だよ思うよ」



見た目こそ派手ではあるが、男子応援団の衣装係として大活躍してくれている。



「いつも影の功労者として、助かっています」


「ふふふ、そこでヨル君には私の新作を試着してもらうという権利をお願いしたいと思います」


「えっ?それでいいの?いつもしていることに思えるけど」


「いえ、いつもは男子応援団から依頼があり、ヨウヘー君やセイヤ君に言われる服を作るだけなのです。ですが、これは私の趣味全開!!!」



バッ!とシュリが出したのは、スーツ?だった。



「スーツ?」


「ノンノン、これはスーツではありません。燕尾服もしくは執事服です」


「あ~執事服ってこんな感じなんだ。これを着ればいいの?なんか思っていたよりもちゃんとした服に見えるけど」


「もちろん、これだけではありません。この服を着て手袋もして、髪型もストレートにセットして」



言われるままに衣装の着替えから髪の毛、化粧まで施された。



「かっ完成です……あっあくまで……これは私の趣味……あくまで執事として……!!!ジュルリ」



なんかもの凄いヨダレを出してるけど。あれ大丈夫かな?



「えっとこれでいいの?あ~この服だし。ご用はありますかお嬢様」



僕はちょっとポーズを決めてジュリにお嬢様と頭を下げてみる。



「はっ……あ……く……ま……」



何やら幸せそうな顔をしたジュリが鼻血を出してて倒れた。


報上さんに続いて二人目なので、保健室に運んでいく。


その際に執事コスプレ?をしたままだったので、廊下がちょっと騒がしかったのはご愛敬だろう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


最後は座敷露



土曜日ということもあり、早めに授業を受ける人の流れがほとんどなくなった放課後。


空き教室で待っていると私服?に着替えたツユちゃんが教室に入ってきた。



「えっと、なんで和服?」



小さくて着物で、これでオカッパならもう……



「私服です」


「そうなんだ。えっ?なんで私服?」


「今日のお願いは延長も混みでお願いしたいんです」


「30分じゃ足りないってこと?」


「そうです。私についてきてくれませんか?」


「どこかに行くってこと?」


「はい」



真剣な目でお願いされて嫌とは言えない。



「わかったよ。どこにいくの?」


「こちらへ」


ツユちゃんに従って後者を出れば、ロールスロイスという車が待っていた。



「朝霧さん。お願いします」



優しそうなお婆さんがこちらを向いて頭を下げる。


どこへ行くのかも告げられないまま、車が発進して無言のまま10分ほど走ると大きな病院へ到着した。



「病院?」


「はい。こちらへ」



ツユちゃんが車を降りると、朝霧と呼ばれたお婆さんが深々と頭を下げて見送ってくれた。



病院にはあまり来る機会はなかったけど。

患者さんも働いている人たちも女性しかいないので、男である俺が歩いていると驚いた顔をする人が多かった。



「ツララ、入るよ」



ツユちゃんが病室の相手に声をかける。

開かれた病室は、個室で小さな男の子が一人だけベッドで眠っていた。



「この子は?」


「私の弟……ツララ」



ツララ君、辛そうな顔して眠っていた。


その姿は前世の自分を思い出すような気分になり、俺は胸が苦しくなった。



「ツララは治らない病気じゃない。でも、ずっと病室で過ごしていて、自分以外の男の人を見たことがないからヨル君に合わせたかった。たくさん話したから」



ツユちゃんは穏やかで優しい顔をしてツララ君に頭を撫でた。



「今日はあまり体調が良くないみたい。残念」


「なるほど。俺はツララ君の友達になればいいんだね」


「えっ?」


「うん?違うの?友達になれば、また元気なときに会いにくればいい。今日が体調が悪くても体調が良い日もあるんでしょ」


「ある……でも、いいの?」



俺は拳を突き出す。



「良いに決まってる。ツユちゃんのお願いじゃなくても、同じ男としてツララ君のことは応援してあげたいからね。俺、応援団だからね」



ウィンクして親指を立てれば、気丈でいつも強気なツユちゃんの涙が浮かぶ。



「ありがとう。あなたを選んで本当によかった」



ツユちゃんの言葉の意味はわからなかったけど。

またツララ君に会いに来る約束をして、俺は朝霧さんに家へと送ってもらった。



こうして、俺の体育祭ご褒美は全行程を終了した。



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