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学校案内

学校の雰囲気が体育祭一色に変わりつつある。

それはどこか学園に普段以上の熱気が溢れている。


放課後の学校は、いつもの広いだけの敷地に練習を始める生徒たちが増えている。



「俺らが勉強する進学科の校舎はわかるとして、俺も文化系部活で行ったことがあるのは普通科の校舎かな?」



ツユちゃんと手を繋いだまま、自分の分かる範囲から説明していく。



「進学科の校舎はもう分かるよ。生徒会とか職員室もばっちり」


「そうなのか?俺の方がまだまだ把握できてないぞ。じゃあ普通科とスポーツ科だな」


「スポーツ科に行きたい。多分、今回のライバルたちがいる」


「ライバルたち?」



ツユちゃんの見た目からは想像出来ないが、どうやら闘志を燃やしているようだ。



「ツユちゃんは運動が得意なの?」


「運動はキチンとしたことはないよ。でも、合気道、柔道、空手、薙刀、剣道は有段者」


「武道全般ってこと??」


「はい!」



ツユちゃんが薙刀を持っている姿を想像しても怖さをあまり感じない。



「人は見かけによらないもんだね」


「そう?無段なら、何人来ようと問題ないよ。ヨルはお強い」


「そう?」


「うん、自分より強い人を始めて見た」



どう見てもツユちゃんの方が弱そうだけね。

見た目とかで判断できないからどうなんだろう?


タエさん、ユイさん、母さん、周りが強い人ばっかりだからな。

いつの間にかそういうのに慣れたのかも。

ユウナとか、ツキも道場には連れて行かれてたと思うから強いのかな?


貞操概念逆転世界って女子が恋愛とか性への願望強いとは思ってたけど。

肉体的にも強い子が多すぎない?



「そうなんだ。じゃあスポーツ科に行こうか」


「はい」



二人で並んでグラウンドを超えていく。


グラウンドにさしかかったところで呼び止められる。



「あっあの」



振り返ると、サッカー部のエースとしてセイヤが紹介してくれた


馬場鹿江ばばしかえさんだった。



「馬場さん?」


「わっわたしのこと覚えてくれてたんですか???!!!」


「えっうん。まぁね」


「嬉しい!あっあの。男子応援団の動画毎日見てます!」



毎日?ファンなのかな?握手とかした方がいいのかな?



「プロフィールも覚えるくらい何度も熟読しました!男子応援団のグッズも全部買ってます」



プロフィールって何?あ~公式チャンネル作ったとか言ってたからそっちかな?

最近セイヤが精力的に動いているからな……今度チェックしとこ。

それよりもグッズ?グッズなんてあるの?知らないんだけど。



「今日は妹さんと学校案内ですか?」



馬場さんの視線がツユちゃんに向けられる。馬場さんの質問に対して、俺が戸惑っていると、ツユちゃんが繋いでいた手を離して馬場さんに近づいていく。


馬場さんの身長は170㎝近くあり、ツユちゃんが130㎝を越えるぐらいなので、40㎝近くの差がある。



「私は、ヨルの妹じゃない。同級生」


「えっ!じゃあ私と同い年?」


「……そう。あなたに聞きたい」


「なっ何?」



異常な圧を放つツユちゃんが馬場さんに迫る。



「グッズって何?」


「えっ?あっああ。えっとね。ゴニョゴニョゴニョ」


「ふんふん、ふん!!!なるほど!!!!興味深い……」



あれれ?おかしいぞ。なんでそこは耳打ちなの?僕には何も聞こえないぞ。



「ヨル君。ごめん。私行くところが出来た」


「えっ?あ~うん。学校案内はまた今度な」


「うん。じゃ」



そういうと以外に速い足取りでツユちゃんは走り去っていった。


残された馬場さんと俺は唖然と見送り視線が合う。



「えっと、男子応援団を応援してくれてるみたいでありがとう」



何も話さないのも変な感じがしたので礼を告げる。



「いっいえ。私なんて……でも、黒瀬君が多くの女子を応援してくれているお陰で青葉高校は活性化できているんだと思います!」



黒目が大きくランランと輝き、日に焼けた褐色の肌は健康的でこの子も美少女だ。

特徴的な短い髪の跳ね感じも、犬の耳のようになっていて可愛い。


なんだか人懐っこい雰囲気を持つ馬場さんを見ていると自然に手が伸びた。



「ありがとう。もっと頑張ってみんなを応援するね」



少しだけ俺よりも背の低い馬場さんの髪は、日に焼けて少し硬くて、砂が髪の中に入ってザラザラしている。

少年の頭を撫でているような気がして、少し楽しくなって優しくゆっくりと撫でてしまう。



「あっあの!」



馬場さんから声がして、顔を見ると日に焼けた顔が真っ赤に染まっていた。



「あっ!ごめん。凄く触り心地がよくて、つい」


「ちっ違うんです。嫌とかじゃなくて、嬉しくて!」


「嬉しい?」



尻尾があればブンブンと振っていそうなほどはにかむ顔は可愛くて、頬についた砂を指で拭う。

少し痛かったのか、恥ずかしそうに目を閉じる馬場さんは俺がすることを拒まない。



「気持ちいい?」



馬場さんは声を発することなく、指に身を委ねるように……コクリ……と頷いた。



「シカ~!!!どこ~~!!」



いつの間にか二人の世界に入ってしまったことに気づいた俺はさっと手を離して距離を取る。


サッカー部のもう一人のエースである。

宗田愛そうだあいさんの声で気恥ずかしい空間が現実へと戻される。



「ラブ~こっちだよ。



黒瀬君……ありがとうございます。

凄く嬉しかったです。

応援してます。



それと……また応援してくださいね!!!



体育祭で活躍出来たらまた撫でてください!」



恥ずかしそうに顔を真っ赤にして馬場さんは走り去っていく。



なんとも言えない雰囲気で……見送るために手を振る。


まだまだ暑さが残っているのか、心臓はドキドキと早く打ち鳴らされていた……


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