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貞操逆転世界なのに思ってたのとちがう?  作者: イコ
高校入学編
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この世界の主人公

「うん?やぁ、君も新入生だよね。初めまして、僕は白金聖也シロガネセイヤだ」


そういって握手を求めてくるこの世界の主人公。

手を握り返せば、細くて女子のような綺麗な手をしていた。

俺の手は無骨でゴツゴツと比べるのが恥ずかしいほど不細工な手をしている。

手一つを見てもこんなにも違うのだ。


「凄い手が大きいんだね」


これが女性に言われたなら、照れて俺のこと好きなんじゃないかと勘違いしてしまっていた。だが、目の前でその言葉を発したのは、綺麗な顔をした男だ。


「俺は黒瀬夜。よろしく」


素っ気なくなってしまったかもしれない。

だが、それ以上の衝撃が胸を締め付ける。

頭を鈍器で殴られたようなショックが目の前に存在する。

自分が理想としていた逆転世界の主人公像そのものだ。



どこかで高校デビューすれば、自分が主人公になって女性たちにチヤホヤしてもらえると思っていた。


夢から覚めるとはこのことを言うのだろう。現実を突きつけられて恥ずかしい。



「うん。じゃあヨルだね。僕のことはセイヤって呼んでよ」



ニコニコとした人懐っこい表情で、いきなり名前呼び。

陽キャラ要素満載のセイヤ。


元病人な俺。そして対人恐怖症なヨル。

現在、目つきが悪くて家族からキモイと言われる陰キャ。


俺とは全く対照的なセイヤは、自分が望む全てを兼ね備えている。



「ああ。そうするよ。セイヤ」


すんなりと名前で呼ぶことが出来た。




心は落ち着いていた。


いや、落ち着かされた。




俺は《《見る側》》だったんだ……




「初めて出会う男がヨルでよかったよ。僕って中学時代に事故に遭ってさ。幼いときの記憶がイマイチないんだよね。周りは女性ばっかりだし。男は僕だけだっから不安もあってさ。あっ女性が嫌いとかじゃないんだよ。でも、同性にしか言えないことってあるだろ?それだよそれ」



楽しそうに話す顔は、人を惹きつけるカリスマ性と好感をもってしまう人懐っこさがある。



「お二人とも、入学式が始まりますので会場まで移動をお願いします」



古谷さんが扉を開いて声をかけてきた。



「はーい。行こう。ヨル」



呼びかけに応じて聖也が飛び出していく。

先ほどまでクールに見えていた古谷さんは、飛び出したセイヤの背中に向けて惚けるように熱視線を注いでいた。



やっぱり女性はセイヤのような美しい主人公に惚れてしまうのだろう。



廊下に出れば、他の控室から2名ずつ他の男子も合流してきた。

セイヤほどではないが、中性的で細く弱々しい男子生徒ばかりで、俺だけが身長も高く、身体を鍛えていて、異質に感じられた。



入学会場へ入ると女子たちからの視線が男子へと注がれる。



男子だけで固められた場所で椅子へと腰を下ろす。

隣に座るセイヤがコソコソと話しかけてくる。



「凄い広い会場だね。それに女性ばっかりで凄い見られてる気がするよ」



女子からの視線は確かに感じられる。

他の男子と違うからなのか、俺に注がれる視線が多いように感じた。

それは胸や足、股間など顔以外にも向けられる気持さ悪さがある。


セイヤはどこか戸惑うような、それでいてワクワクしたような気持ちを表情に表していた。


「女子が9割以上だからな。男性の先生もいるようだが、教師や職員もほとんど女性だろう」

「へぇ~ヨルは落ち着いてるね」



セイヤの言葉で辺りの男子を見れば、落ち着きなく足を揺する者。

爪を噛む者。キョロキョロと落ち着きなくしている者など。

確かに落ち着いている者は少なかった。



「セイヤも落ち着いているように見えるぞ」

「僕?うん。僕はなんでか平気。むしろ、女の子たちに見られてるって嬉しいぐらいかな」



セイヤほどではないが、周りの男子たちも美少年ばかりだ。

だが、落ち着きなく苛立っている姿を見れば、精神的には未熟な少年たちなのだろう。

その点、セイヤは落ち着いていて、むしろこの状況を楽しんでいるようだ。


俺は……こうして高校に通えていることが奇跡のようで少し浮かれていた。



「まぁそうだな。どうせその他大勢に向けられている視線だからな」

「ヨルは冷静だね。ヨルを見てる女の子もたくさんいると思うけど」

「どうでもいいさ。それより始まるぞ」



男子の入場が終わると、壇上へ理事長が現れる。

多少ふくよかではあるが、上品そうなおばさんだ。



「春うららかに~」



お決まりの定期分を読み始める理事長の話はいつの世も眠くなる。



「続きまして、首席入学者挨拶、倉峰飛鳥クラミネアスカさん」

「はい!」



凛とした声が会場に響く。

黒赤髪を腰まで伸ばした清廉な女子が壇上へ上がっていく。

同じ15歳とは思えないほど美しい存在がそこには存在していた。



「暖かな春の訪れと共に、私たちは無事に、青葉高校の入学式を迎えることができました」



ハッキリと発せられる声一つ一つが、彼女から強い意志を伝えてくる。



「勉学、部活動、行事。


《《一番大切な恋愛》》を一生懸命、全力で取り組んでいきたいと思っています」



彼女の視線がこちらに向いたような気がした。



胸を掴まれる。

胸を撃ち抜かれる。

どんな表現でもいい。



その瞬間、胸に衝撃が走った。



「凄い綺麗な子だね」



声をかけられた瞬間……現実へと引き戻された。



……ああ……そうか……



これはあの子とセイヤが出会うための物語だ。



「そうだな。セイヤとお似合いじゃないか?」

「そうかな?僕なんて大したことないよ。それよりもヨルの方が似合うんじゃない?」



二人は美しい女生徒を見つめたまま、気の無い会話を交わした。



「先生方、先輩方、並びに来賓の皆様。私たちへの励ましのお言葉をありがとうございました。


これから温かくも厳しいご指導のほど、よろしくお願いいたします。


新入生代表 倉峰飛鳥」



新入生代表の挨拶を終えた倉峰飛鳥が壇上を降りて、入学式は閉会を迎えた。



「さぁ、僕等のクラスに行こうか」



立ち上がったセイヤの声で、自分が倉峰の姿を追いかけていたことを思い知った。


「ああ。行こう」


気にしない素振りで立ち上がった。


内心では、自分の中で生まれた戸惑いに蓋をして……


「面白かった」




「続きが気になる。読みたい」




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