side生徒会 ー 6
【生徒会メンバー&ボディーガード】
海に入ったこともあり、簡単なシャワーを浴びただけの生徒会メンバーは夕食の前にお風呂に入ることにした。
男子たちが入っている風呂よりも二階ほど高い場所に作られた屋上の露天風呂は30人以上の人が同時に入っても余裕で入れるだけの広さがある大浴場となっていた。
「会長……ここから男子が見えないです」
男湯がある石段に身を乗り出して覗き込む倉峰飛鳥にレイカは呆れたような声で応える。
「アスカさん。あなたは何を考えているんですか?」
「だって、だって、だって、男性のお風呂を覗ける機会なんて一生あるかないかわからないじゃないですか!これは女のロマンです」
「森さん。やっておしまい」
「んだ。ヨル様の裸は見せんよ」
レイカはボディーガードも誘って風呂に入った。
男湯の前にはボディーガードの二人が警護のために立っているため、森だけがレイカに応じて風呂へ同行した。
レイカの命令を受けてアスカを取り押さえるタエ。
「かいちょ~」
「バカなことをするのはやめなさい。生徒会の品位が疑われます。それに覗きではなく。相手から同意をもらって堂々と見せてもらいなさい」
レイカはヤレヤレと疲れた様子で、アスカの監視をタエに託して他の者達と同じように体を洗い始める。
「カホちゃん。お茶会の後はすぐにいなくなっていたけど。どこいってたの?」
「う~?ああ。ハヤト君のとこだよ」
二年生コンビが頭を洗いながら、今日の出来事を話していた。
「ハヤト君?カホちゃんはハヤト君が好きだったの?」
「う~ん。好きかはまだ分かんないかな。
でも、ヨル君は競争率高そうだし。
セイヤ君は誰にでも優しいからタイプじゃないし。
ヨウヘー君は独特で自分の世界をもってるって感じでしょ。
ハヤト君だけはこっちのペースでどうにかできそうなんだよね」
蠱惑で妖艶な笑みを浮かべるカホにテルミは身震いする。
「キヨエさん。疲れましたね」
「そうね。ヨウヘー君があんなにも情熱的だったなんて」
湯につかるキヨエの横で、ゆっくと体を伸ばすハルミは先ほどまでのセッションを思い出して余韻に浸っていた。
「お姉ちゃんが疲れて寝ちゃって、ヒマだったので誘って頂いてありがとうございます」
「いいのよ。私もお嬢様がセリーヌさんと打ち合わせがあると言うから手が空いていたの」
「それにしても私初めてでした。あんな快感」
「そうね。男性にメチャクチャにされる気分だったわ」
二人はヨウヘーとのセッションを終えて高揚感と、ほどよい疲労感を身体に味わっていた。ただそれは気分が良いものだった。
「彼はきっと有名なアーティストになるんでしょうね」
「あっ、実はヨウヘー君はYO!HEY!としてnewtubeデビューしたらしいです」
「あら?そうなの?」
「はい。セイヤ君が編集を手伝っているみたいで、男子応援団からリンクが飛べますよ」
「後で見て見るわね」
合宿に来たことで、普段とはできない交流が出来る。
それは男子応援団だけでなく、生徒会メンバーにとっても良い刺激になっていた。
「いいですか。アスカさん。いくら男性への欲望が溢れていようと、しても良いことと悪いことがあります。学生でいる間は自由な恋愛も認められています。
ですが、節度ある行動をしなければなりません。
あなたがやろうとしていたことは犯罪行為ですよ」
タエに取り押さえられたアスカに説教をするレイカ。
「……会長。私だって自分がダメなことはわかっているんです」
「そう?」
雰囲気が変わったアスカにレイカはどうしたのだろうと問いかける。
「はい。
一学期の頃はヨル君も私に協力してくれてセイヤ君と部活を回ってみたらと言ってもらったんです。
でも、何がいけなかったのか?それ以降からセイヤ君からもヨル君からも避けられるようになりまして。二人と交流がもてていないんです」
暗い場所に連れ込もうとしたり、二人きりになろうとするアスカにセイヤが警戒したことをレイカは知らない。
ただ、アスカの告白に普段の言動や行動に問題があることはなんとなく察することができた。
「あなたは頭は良いのに他人の気持ちを考えたり、他人への配慮が足りていないと思いますよ」
「他の人の気持ちなんてわかりません!配慮って、遠慮していたら男性が他の人に取られてしまうじゃないですか!」
「どうしてあなたはそんなにも男性へ執着するのかわかりませんが、その焦りは男性へも伝わるんじゃないかしら?」
レイカはアスカと目線を合わせて優しい瞳を向ける。
「あなたはまだ若いわ。自分を見直してやり直すことが出来るでしょ。
頭が良いなら考えなさい。男性が何を望んでいるのか……独占するのではなく。
他の人たちと協力して男性に選んでもらう方法もあるでしょ」
レイカはアスカの頭を撫でる。
「私にはあと半年ほどの時間しかありません。
卒業してしまえば、ヨル君と過ごせなくなります。
だけど、あなたはヨル君、セイヤ君、ハヤト君、ヨウヘー君と同い年で二年半もの時間があるじゃない。羨ましいわ」
「……レイカ会長」
レイカはアスカの頬を優しく摘まむ。
「あなたは見た目も綺麗だし、頭もいい。
その猪突猛進な性格と、焦りすら感じる性への欲求を抑えなさい」
アスカがレイカの胸へと飛び込む。
「会長!!!私、どうすればいいのかわからなかったんです。
でも、会長に話を聞いてもらって嬉しいです。一生ついていきます」
「はいはい。二年後はあなたが会長になるんですよ。人を観察して勉強しなさいね」
レイカはアスカの頭を撫でて慰める。
「いい話だべ」
タエは二人のやりとりに感動して涙ぐんでいた。




