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side女子大生 ー 4

【相馬蘭】



ヨルを挟むように三人で歩き出すと、ヨルが嬉しそうな顔でニヤニヤしている。

カッコいい顔が崩れて面白い顔をしている。



「お兄。ニヤニヤしてるよ」


「ヨル。そういう顔は」



そんなに嬉しそうにされたら、我慢できなくなるじゃないか。



「もう、仕方ないお兄だね」


「そうね」



ツキちゃんと目くばせをしてヨルの腕に抱き着く。



「えっ」



「両手に華(花)とか、どうせ思ってたんでしょ。顔に出過ぎ」


「前にも言ったが、ヨルは顔に出ていてわかりやすいぞ。そういうとき」



恥ずかしそうに照れるヨルは可愛い。

ツキちゃんもそんなヨルのことをわかっているようで二人で笑い合った。



「ほら、お兄。お店の中に入るよ」


「ヨル、行くよ」



腕から離れて二人でヨルの手を取って、引っ張っていく。



ツキちゃん、ヨル、二人と過ごす時間は楽しかった。

ツキちゃんは本当の妹のように甘えてくれるので、真剣に服を選んだり、水着でヨルにアピールしてみた。


ヨルは恥ずかしそうにしていたが、ヨルの水着姿がヤバかった。

上半身裸で出てきたときは、不意打ち過ぎて鼻血を出してしまった。

ツキちゃんが急いでカーテンを閉めてくれなかったらヤバかった。



「お兄。お腹空いた」


「そうね。何か食べに行きましょうか」



ツキちゃんが誘導してくれるので、三人で過ごしていても困らない。

三人で入った店は、ちょっとお高そうな鉄板屋さん。

カウンターしかない店内の中央で、ツキちゃん、ヨル、私の順番で席に着く。



「今日は付き合ってもらってありがとうございます」


「ううん。とっても楽しかったわ」



本当に楽しかった。ヨルと居れる時間はいつも楽しい。



「今日は俺に奢らせてくださいね」


「え~どうしようかな?」



ヨルは前回のことを覚えていてくれたんだ。

私はなんだか嬉しくて、イジワルしたくなる。



「お兄~カッコイイところ見せたいからって、こんな店選んで大丈夫?」


「もちろん。好きなの食べな」


「やった~お兄の財布を破産させてやる」


「ふふふ、本当に仲がいいのね」



子供のような振る舞いをするツキちゃんは、ヨルのことを大好きなんだろう。

メッセージを送ってきたツキちゃんはもっと大人っぽい印象だったから。

もしかしたらヨルの前だけは演技をしているのかもしれない。



「いえいえ、普段はそうでもないんですよ」



ヨルが私を見つめているような気がして恥ずかしくなる。



「そういえば、もう夏休みよね?」


「そうです。私、生徒会に入っていたんですが。夏休み前に新生徒会に引継ぎも終わったので今年はゆっくりするんです」


「え~そんなこと言っていていいの?三年生なら受験があるんじゃないの?」


「全然問題ありませんよ。もう青葉高校に入ることを決めているので、それに今の成績なら問題ありません」



ツキちゃんは、やっぱり頭の良い子なんだろう。

それも凄く賢くて、性格も堂々としている。



「ランさんは、夏休みはどうするんですか?」


「私はちょっと忙しいかな……駅伝の合宿とか、モデルの仕事で結構スケジュールが埋まっちゃって」


「駅伝?」


「そうなの。大学で駅伝をしているんだよ。これでも一年で任されるぐらいには有望でね」



ツキちゃんに私のことを知ってもらって、本当の家族になりたい。

ヨルのお嫁さんとして認めてほしい。



「お兄は夏休みどうするの?」


「ヨルは最近何しているの?」



美味しそうに肉を食べている姿が可愛い。



「俺?俺は部活の合宿かな?あとは時間が出来たら遊びに行きたいって思ってるよ」



「合宿?」


「部活?」



ヨルが部活?そんな話は聞いていない。

メッセージのやりとりも私から見つけたことを報告して、ヨルが答えてくれる。

そう言えば、ヨルの話をあまり私は聞いたことがない。



「俺、高校で応援団部を作ったんです。それで部活の仲間が体力無くて。体力つけたり、練習しようとって言ってるんです」


「応援団?」


「お兄、これ?」



ツキちゃんがスマホの画面を見せてくれる。



「こんな感じで応援してるんです」



アドレスを確認した私はすぐにSNSで調べた。



「まだまだダンスも歌も納得できるレベルじゃないので、今年の夏は皆でレベルアップしようと思っています」



そこにはラッシュガードに水着姿のヨルが、歌って踊っていて凄くカッコよかった。

それにヨルに応援されて女の子たちが羨ましい。



「ヨルもガンバッてるんだね」



食事を終えた私達は解散して帰路に就くことになった。



私は一人、カフェに入って時間が過ぎるのを待った。



「お待たせしました」



「ううん。大丈夫だよ」



待ち合わせの相手であるツキちゃんは、ヨルといた時は少し雰囲気が違っていた。



「今日は、来ていただいてありがとうございました」



「こっちこそ誘ってくれてありがとう。楽しかったよ」



私は先ほどまでと変わらない感じでツキちゃんへ礼を述べる。



「はい……ランさんは良い人ですね……ランさん、兄さんは天然というか、少し無防備な人です」



ツキちゃんの言葉に私は頷く。



「無自覚に女性を喜ばせてしまうところがあります。これから多くの女性が兄さんを好きになると思います。きっとランさん一人では兄さんは満足できないでしょう。それでも兄さんを好きでいられますか?」



ツキちゃんの言いたいことは、男性を好きになる女性ならば、誰もが一度は考えることだ。


男性を独占したい。


自分だけを愛してほしい。


私は自分に中で自問自答を繰り返す。


きっと嫉妬してしまう。


他の女性に会っていることを想うと悲しくなる。



「それでも、私はヨルがいい」



一呼吸の間に様々なことを考えた。


ヨルのような男性にまた会えるとは思えない。


数十年前の男性が女性と同じだけいたときなら、選べたのかもしれない。



「ヨルが他の女性を選ぶことが有っても、私はヨルを待つ。それにヨルに選んでもえらえる私になるよ」



私の答えはツキちゃんにとって正解だったのかわからない。


だけど、私は私に出せる答えを自分の心に持つことが出来た。



「わかりました。今日は、付き合って頂いてありがとうございます。

ランさんという方がどういう方なのか少し理解できたと思います」



ツキちゃんは丁寧に頭を下げて微笑んだ。


その微笑みは凄く綺麗で。とても印象的に映った。

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