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side女子大生 ー 3

【相馬蘭】




モデルと練習の日々は、私を強くしてくれる。

ただ思いとは別に、疲労と精神的に追い詰められていく辛さはどうしようもない。


辛いと思う日々、私を支えるモノがあるとすれば、ヨルとのやりとりだ。


毎日何気ないことをヨルに報告する。


ヨルは遅くても返信をしてくれるので、練習終わりや仕事終わりの私を勇気付けてくれる。



「うん?」



知らない相手からメッセージが届き、詐欺サイトかと思ったけど。

書きだしの文章を見て、私はすぐにメッセージを開いた。



『突然、メッセージ失礼いたします。


私は黒瀬夜の妹で、黒瀬月と言います。


兄である黒瀬夜の家族として、知らない女性の名前がスマホに登録されていたので、ご連絡させていただきました。


不快な思いをさせるつもりはありません。


ただ、兄がどんな方とお付き合いされているのか気になった次第であります』



メッセージを読み終えた私はすぐに妹さんの気持ちを理解した。


男性を家族に持つ身として、男性を守るために怪しい相手と付き合っていないのか心配させてしまったのだろう。


まだ、付き合ってはいないが。

ヨルと付き合っていると誤解されたことに、少しばかり体が熱くなるのを感じる。



『初めまして、男性の方を家族に持つお気持ちご理解致します。


私の名前は相馬蘭といいます。


《《現在》》は、お兄さんとお付き合いはしていません。

友人として仲良くさせて頂いています。


私は女子大生をしていて、お兄さんとは朝のランニング仲間です』



私はなるべく相手が私という人物が分かるように、簡潔な文章を返すことにした。



『お返事ありがとうございます。


相馬蘭さんとおっしゃられるんですね。


それではこれからはランさんと呼ばせていただきます。

私のことはツキと呼んでください。


単刀直入に申しますが、ランさんは兄のことをどう思われていますか?

また、兄とこれからどうなりたいと思っておりますか?』



文章から、妹さんは接しやすい子なんだと思う。

お兄さんを大切に思っていることも伝わってくる。

だから、私は真剣な思いを文章に込めることにした。



『それではツキちゃんと呼ばせて頂きますね。


それとお互い敬語もおかしいので、気楽な文章にしましょう。


ヨル、お兄さんのことは……


好きです。


男女の仲に……旦那さんになってほしいと思っています』



私は今までずっとヨルと付き合えたらいいと考えてきた。

将来を約束できら、どんなに幸せなことだろうと。

だけど、まだまだ仲良くなりきれていない。


これは、まだ私一人の妄想でしかない。



『そうですか。


では、一つお願いがあります。


ランさんがどのような方なのか、お会いしたいと思います。

兄を外へ連れ出しますので、偶然を装って一緒に出かけませんか?


お受けして頂けるなら、ランさんのご予定を聞いて兄を連れ出します』



黒瀬兄妹とお出かけ?


それはこちらこそ願いたいほど嬉しいことだ。


学校も違う。

時間も合わない。


なかなかヨルに会う機会の少ない私としては願ってもない。



『もちろん。大丈夫です。すぐに予定をお伝えしますね』



私はすぐにマネージャーに連絡を取って、スケジュールを確認した。

そして、ヨルが夏休みに入る初日に自分も休みが取れることがわかった。



『予定は〇月×日が空いています。いかがですか?』



私のメッセージに既読がついた。


私はドキドキしながらツキちゃんからの連絡を待った。



「兄が承諾してくれました。それでは予定通り、明日よろしくお願いします」



予定が空いた前日にツキちゃんから連絡がきた!


私は興奮して、明日着ていく服を選んだり、ツキちゃんがどんな子なのか考えたり、ヨルに久しぶりに会える喜びやらで眠りになかなかつけなかった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



予定の時間の一時間も前に着いてしまった。

何度も鏡をチェックしておかしなところはないか確認する。

時計を何度も確認して、本当に来てくれるか不安になりかけた頃。

道行く人々が騒ぎ出した。



「ねぇねぇ見た?」


「見た見た。絶対兄と妹だよね?メッチャ似てるし、美男美女過ぎ!」


「二人とも家に連れて帰りたい」


「でも、あれは近づけないよね」



道行く人々が騒がしく話をする人物たちが、私に近づいてくる。



「えっ?」



先に声を発したのはヨルだった。

私は気づいていたけど声を出すことが出来なかった。


久しぶりに会うヨルは日に焼けて、体格も以前よりも逞しくなっていた。

身体が熱くなるのを感じて上手く息を吸うことができない。



「やっ、やぁヨル。久しぶりだね」



自然に、余裕を持って挨拶をするつもりだったのにドモってしまった。



「ランさん!どうしてここに?」


「ちょっとね」



ヨルの質問にウソをつくことが出来なくて、視線をツキちゃんに逸らしてしまう。

ツキちゃんは、ヨルに似ているミステリアスな雰囲気を持つ黒髪の美少女だ。

少しきつめの目元も将来が美人になることを確約をされているようだった。



「ヨルこそ、今日はこんなところでどうしたんだい?」



ツキちゃんに見惚れたことで、少し冷静になれた。



「俺?俺は今日は妹の荷物持ちで駆り出されたんです」



仲の良さをアピールするように手を繋いでいる姿を見せられる。



「そうか、兄妹の仲が良くていいな」


「お兄。この人は誰?」


「こちらは俺の友人で、相馬蘭さんだよ。ランさん、俺の妹で黒瀬月と言います」


「ツキです。いつもお兄がお世話になっております」


「相馬蘭です。よろしくね」



ツキちゃんの連絡によって会うことになったが。

彼女は何も知らない姿を自然に演じている。

顔見世は終わったんだ。

仲の良い二人を邪魔してはいけない。



「じゃっじゃあ私は」


「ねぇお兄。ランさんってモデルか何かしているの?」


「そうだよ。やっぱり分かる?」


「うん。凄く綺麗だから。ランさんがもしよかったら、今日お時間あるなら一緒に服を選んでくれませんか?」



元々一緒に出かけようと言っていたが、ここまで自然に会話をしていくツキちゃんが凄いと思った。

ヨルは戸惑っているようだが、事前にメッセージが無ければ私も戸惑うところだ。



「おっおい。ランさんも予定があってここに来てるんだ。迷惑かけちゃダメだろ」


「いや、今日は休日で一人でどうしようかと思ってたんだ。いいよ。私で良ければ付き合うよ」



私はツキちゃんからの助け船に乗ることにした。



「えっ良いんですか?」


「じゃあお願いします。お兄に荷物持ちは頼んでいたんですが、女性の服を選べるセンスがあるのかわからないので」


「おいおい、ひどいな。俺だって服ぐらい選べるぞ」


「ほう~服ぐらいね。モデルである私への挑戦かな?」


「そっそういう意味じゃ」



ツキちゃんとヨルの雰囲気に慣れてきて軽く冗談が言えた。



「なら、二人で私の服を選んでください。楽しみです」



心から楽しそうにするツキちゃんに、私は少しばかりの緊張と不安を感じた。

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