SNSの反響
初依頼となった水泳部の応援は、SNSでかなりの反響を受けた。
男子だけの部活動というだけでも、かなりの珍しさがある中で、高校生がアイドルのようにダンスを踊り、歌を歌う姿は女性たちを魅力した。
さすがは貞操概念逆転世界と言うしか無い。
ふと、元の世界のアニメを思い出したが、アイドルは目指していない。
反響は青葉高校を飛び出して、他校にも応援に来てほしいと依頼があり。
学生の枠を超えて会社の社員を応援してほしいなどのDMが連日届くようになり、高校の部活動を超えた社会活動としての側面を生み出しつつあった。
「でっどうするの?」
SNSをアップしたセイヤによって、今後の活動をどうするのか?という緊急ミーティング収集がなされた。
「どうするって?何がだよ」
セイヤにアップしたSNSを見させてもらうと、いつの間に撮ったのか。
四人の集合写真
個別写真
ダンス動画
歌の動画
恥ずかしいやら記念やらが綺麗に撮影されていた。
「連日DMが溢れんばかりに来るんだよ。僕も気づいてからは制限をかけて青葉高校生からしかDM送れないようにしたけど。制限かける前に来てた企業のDMはそのまま残ってるよ」
見せられた画面にはズラリとDMの数が表示されている。
「うわ~DMが一万件を超えてるじゃん。登録数も30万?凄い凄い」
ヨウヘーはこの状況を楽しんでいるようで、ソファーで笑い転げている。
「くっ!コロせ!こんな辱めを受けるなんて!」
ハヤトは顔を真っ赤にして頭を抱えていた。
「SNSって凄いね。ここまで拡散されると海外からも依頼が来ちゃうかもね」
カオル先生だけは他人事として、傍観者を決め込んでいる。
「でも、これだけ有名になっちゃうと色々面倒なことになるかもね。ストーカー被害とかも考えないと」
カオル先生の指摘に全員が顔を見合わせる。
「ハァーそういう問題も出てくるよね。アイドルとかはメンズガードが優先的につくらしいけど。
一般人の僕らにはそういう人はいないからね。
男子保護法って言っても法律上、女性よりも男性の希少性が高いのでみんなで守りましょうって感じだし」
セイヤが頭を抱えて全員で悩みだした。
「あっあのさ……俺の母さんがボディーガード会社をやってるんだ。もしよかったら護衛を頼んでみようか?」
ヨルは母に昔からトレーニングを受けてきた。
マッサージだけでなく格闘術なども習っていたので、ある程度は対応できると思う。
ハヤトは体力がなくて力も弱い。
セイヤは中学時代に襲われた経験がある。
ヨウヘーは、襲われれば抵抗もしないで身を委ねてしまいそうだ。
「学校としても、生徒に危害を加えられるのは困るね。ボディーガードを雇うなら、学校側には僕がかけあっておくよ」
俺の言葉にカオル先生が後押しをしてくれる。
「とりあえず話を聞いてみれくれる?」
セイヤに問われて、俺は一瞬だけ、母さんから受けた「あんた話すの下手だし。存在がキモイから外に出ない方がいいよ」という言葉が過る。
だが、同じ部活動をやり出した仲間を守るために、母さんに話す決心をした。
「ああ、任せろ」
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母さんと話をするのは、中学の卒業式以来だ。
仕事が忙しいということもあるが……俺が自身自分を鍛え直すために夕食は一人で食べるようにして避けていた。
なんだか母さんと過ごすことをためらってしまっていたからだ。
でも、ユウナに思いを告げたことで、俺の中に一つだけ自信が出来た。
言いたいことは言う。今までの俺とは違うんだ。
「母さん、今日話したいことがあるんだ。時間を作ってくれないか?」
家で話すことも考えたが、ツキに聞かせる内容でもないかと思った俺はスマホで母さんに連絡を取った。
「ヨルから、連絡が来るなんて珍しいわね。いいわ。今日は20時で全てのスケジュールが終わるから迎えに行くわ」
自宅に戻って普段着へ着替える。
ツキには今日は遅くなると、書置きをして家を出た。
母さんに会うのも久しぶりなので、ランさんに買ってもらったブランド物の服を身に纏った。
少しでも自分の気持ちを引き締めるため戦闘服に着替える気分だ。
しばらくロータリーで待っていると、オープンカーにサングラス姿のカッコイイ女性がロータリーに車を止める。
「母さん」
辺りを見渡している母さんに俺の方から声をかける。
「えっ?ヨル?」
母さんは多忙な人なので、会わないでおこうと思えば何日でも会わないことになる。
最後に会った日が卒業式だったので、もう四か月近く会っていない。
「うん。今日は時間を作ってくれてありがとう」
「えっうん。まぁ……息子の頼みだからね」
四か月前にあった母さんは、どこか辛辣で厳しさを醸し出していた。
だけど、今日の母さんは伏し目がちで視線を合わせてはくれない。
やっぱり俺のことをキモイと思ってるのかな?家族なのにそう思われてるのは悲しい。
「それじゃあ行こうか?」
「行く?行くってどこに?」
「えっ?夕食を一緒に食べるんでしょ?」
「あっああ、そうだったわね……行きましょう」
母さんが運転するオープンカーが走り始める。
風の抵抗が凄いのかと思ったけど、涼しくて快適なドライブだった。
「ここでいいわね」
母さんが連れてきてくれた場所は最高級ホテルの展望レストランだった。