side生徒会 ー 2 会長編
【東堂麗華】
生徒会業務を終えて、レイカの元へキヨエがお茶を置いてくれる。
「キヨエさん。ありがとう」
「いえ、最近は業務が立て込んでいますね。入学式に始まり。部活動勧誘。運動部の大会運営。現在はテスト期間に前に入り、夏休みに向けての行事の準備など。書類が多く提出されています」
山のように積まれた書類の整理を4人で手分けしている。
一年生の倉峰が来ることも考えて、仕事を教えるために人員を取られてしまう。
その前に少しでも減らしておきたい。
本来であれば、一年生を二人同時に迎えて一月ほどで業務を覚えてもらい戦力とするのだが、果たして倉峰がどの程度使えるのかわからない。
何より、もう一人の候補を選出する必要もあり、いつも以上に業務が多くなっていた。
「次席の子が生徒会業務を辞退したのは痛いわね」
「はい。司書を目指しているそうなので、図書部に入りたいそうです。
図書部は、小説家部や文化部、歴史部とも繋がりを得られるので、将来を考えれば正しい判断でしょうね」
キヨエの報告に選出の難しさに改めて頭を悩まされる。
「本当に男性が生徒会に入ってくれないかしら?それなら私たちの目の保養が出来て仕事も捗るでしょうに」
「お嬢様は別のことが捗りそうなので、むしろ仕事が遅れると思われます。
それに男性に男性の情報をお見せするわけにはいきません。
生徒会には男性には見せない方がいい資料が数多く存在しますので」
「ですよね。私たちはまだまだ健全な方だと思いますが、歴代の生徒会の方々がされてきたブラックリストは見せられませんね」
二人は深々とため息を吐いた。
「是人さんに癒やしを求めてみようかしら?」
「それがよろしいと思います。たまには婚約者と接することで親密度を高められてはいかがですか?お嬢様の癒やしになれば気持ちも健やかになれるでしょう」
「そうね。連絡してみます。キヨエさんは今日のお昼はお茶会に参加するんだったわね」
「はい。お嬢様部の会長を務めておりますので、今日は失礼させていただきます」
お嬢様部とは、紳士淑女の嗜みを学び。実践する部である。
生徒会長にならなければレイカも入部するはずだった。
主席合格を果たしたことで生徒会業務に時間が取られ、入部ができなかったのだ。
キヨエは効率がよくレイカの業務を手伝いながらも、在籍しているうちに会長にまでのぼりつめてしまっていた。
「仕方ないわね。私はここで昼食を頂きながら、残りの業務をしています」
「かしこまりました」
朝のホームルームギリギリまで業務を行い。
授業を受け昼に生徒会室に戻ってくる。
疲れはしますが、やりがいがあり嫌いではないと思っている。
「最近、胸が重くて肩がコリますね」
コンコン。
一人で作業に励んでいると、生徒会室の扉がノックされる。
たまに来客が対応するのも業務の一つだ。
面倒ではあるが、本日はあいにく自分以外に対応出来る者が来ていない。
「は~い」
業務の手を止めて扉を開きに行く。
そこには数日前に顔を合わせた【黒瀬夜】が立っていた。
一年生男子人気投票ナンバー1であることは聞いている。
同年代の女子はあまりのエロさに手が出せていないそうだ。
「あら~黒瀬君ではありませんか?」
「東堂会長。お一人ですか?」
一人かと聞かれてドキッとしてしまう。
そうだ。ここには私と黒瀬君しかいない。
「ええ、ええ。今日はお一人なんです。何かご用ですか?」
二人きりだと思うと嬉しくなり、黒瀬君の顔を下から覗き込でしまう。
身体が密着する距離に近づいても、黒瀬君は嫌がる顔をせずに、むしろ照れていて可愛い。
「うん?どうかしましたか?」
恥ずかしそうな可愛い顔を見たら、もっといじめたくなるじゃない。
「あっあの!部活を作ろうと思うんです?!」
む~話題を変えられてしまいました。
仕方ないですね、聞いてあげましょう。
「あら?部活を作るですか?男性である黒瀬君が?」
「はい。おかしいですか?」
不安そうな顔をする黒瀬君。
そんな顔も素敵。
「いえいえいえ、男性がやる気になってくださるのはありがたいです。
ただ、部活動発足にあたる規約はご存じですか?」
詳しく話を聞くために中へと招き入れ、お茶を振る舞う。
「はい。三人以上の部員と担当教員の確保ですよね?」
男性が部活動を自ら行うことはほとんどない。
あっても発足だけして名ばかりの部活になるだけだ。
予算配分も男性というだけで優遇しなければならず、正直歓迎はできない。
「そうです。黒瀬君はどのような部活をお作りになるおつもりですか?」
疲れと面倒だと思う気持ちで、内容を聞いてから却下しようと思う。
「女子を応援する部活です」
「へっ?」
黒瀬君から発せられた言葉が理解できなくて、間抜けな声を出してしまう。
「女性を応援するですか?」
意味を理解して言葉にするが、意味がわからない。
男子が女子を応援する?
それは女子に媚びるということだろうか?
より良縁を結びたいから、可愛がってほしいと?
「そうです。その名も男子応援団」
あまりにもそのままな名前にバカにされているのかと思った。
それに彼は何がしたいのだろうか?
そんなことをしなくても男性は国が認めた優遇措置があるので、働かなくてもいいのだ。
彼にとってのメリットが全く思いつかない。
「スポーツの大会に応援に行ったり、文化部の活動を応援したり、個人でも応援してほしいという女子を応援しようと思います」
彼から出た言葉は本当に純粋な応援だった。
自分が深読みして考えていた内容は全くない。
「うふ、うふふふふふあははは。面白い。面白いですね。それ」
あまりにも真っ直ぐな瞳で言うもんだから笑ってしまった。
こんなにもたくさん笑ったのはいつぶりだろうか?
ああ、おかしい。
でも、その意味をわかっているのだろうか?
男子が応援すると言えば、飛びつく女子は山のようにいるだろう。
それこそ運動部系の女子は大挙して押し寄せてくる。
だから少しだけ試してみよう。
「それは私のことも応援していただけるんですよね?」
「会長を?まぁ、望むなら応援しますが、一つだけ条件を作ろうと思っています」
「条件?」
条件と言われて、やっぱり裏があったのかと落胆してしまう。
どうせ女性に都合の悪いことを言って、自分の思う通りにしたいのだろう。
傲慢で我儘な男性がたまにいるが、浅はかで醜悪だ。
「はい。男子が応援したいと思う女子限定です。部員が応援したいと思わなければ応援しません」
自信たっぷりに宣言する内容を聞いて、唖然としてしまう。
私が考えていたような裏が全くない。
なんだその悪意のない瞳は……自分が汚れた大人たちと戦うためにどれだけの修羅場を潜ってきたのか……東堂麗華の名は伊達ではない。
それなのに……彼はあまりにも幼く純粋で、自分が考えていたことがなんと愚かでばからしいのか。
やめよう。彼を疑うことを。
「傲慢で身勝手、自己中心的で我儘。とても、ふざけた部活ですね」
私は笑っていたのかも知れない。
心で考えていたことを口にする。
傲慢だったのも、身勝手だったのも、自己中だったのも私。
こんなにも私の女を刺激してくるなんて悪い男の子。
「ハァ~ですが……とても面白い。
女性に媚びる行為をしてるくせに、女性を選ぶのは男性だという。本当に我儘」
我慢出来ない……したくない。でも、あなたはどっちですか?
「でも、だからこそ貴重で女性達に選んでもらいたいと思わせるには十分な容姿……
どこまで計算しているのでしょうね?」
計算?それとも天然?
「いいでしょう。条件さえ満たしていただければ部活動として認めます」
「ありがとうございます!!!」
嬉しそうに簡単に頭を下げるなんて、イタズラしたくなっちゃうじゃない。
「ふふふ、本当に面白い。
ねぇ黒瀬君。たとえばではありますが……私が、今。あなたの応援をしてもらいたいと思ったらどんなことをしてくれますか?」
私の意地悪に対して、彼はどう答えるのだろうか?
しばらく考えてから彼はおもむろに歩き出した。
どこにいくのかとソファーを半周したところで足を止める。
「レイカさん。お疲れ様」
不意打ち!!!完全な不意打ちです!!!
私を後ろから抱きしめるなど!!!!
伊集院是人さんにもしてもらったことがありません!!!
「えっえっ?えっえぇぇぇぇ!!!だっダメですよ」
耳元でそのような妖艶な声で、優しく語りかけるなど反則です。
肩こりも疲れもどこかに吹っ飛んでいきましたよ!
ええ、ええ。これはヤバいです。ヤバいやつです。
「いつも応援してます。レイカ会長が頑張って生徒会を運営してくれてるから僕らは安心して高校に来れています」
そんな言葉かけられたら私本気になりますよ。
私の方が年上でお姉さんなのに、ズルい。
体温が伝わるぐらいの間。抱きしめられ続けた。
もうダメ。
「いかがですか?」
「へっ?はっ!いえ。あの。結構なお手前でした……」
彼が去って行った生徒会室で、私は一人で呆然として仕事が手に付かなかった。
「面白かった」
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