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卒業パーティー

 卒業を祝うために、レイカがレストランを貸し切って予約してくれた。

 今日は、彼女たちと俺だけが集まって、9人だけのパーティーだ。


「それでは始めましょうか」


 ドレスを着て化粧をした彼女たちは全員が綺麗で、タキシードを着ている俺だけが浮いている気がする。


「ヨル。ユウナ。ツユ。今日の主賓はあなたたちなのだから挨拶をしてくれる?」


 レイカが進行してくれて、三人へ話を振られる。


 三人でアイコンタクトをすると、ツユちゃんが立ち上がる。


「みんなありがとう。私がこうしてここにいるのはヨルのおかげ。みんなと出会えたのも目指したいと思った目標を達成できたのも……ヨル、あなたが居てくれたからありがとう」


 ツユちゃんの話は全て俺が中心のような物言いであった。


「俺は何もしていないさ。ツユちゃんは、自分で努力して医者になる道にたどりついたんだ。ツララ君のことを思ってその道を選んだのも、ツユちゃんなら辿りついていたさ」


 俺の言葉にツユちゃんは首を横に振る。


「私は、自分一人では決められなかった。青葉に来ることも、ツララの側にいることも、ヨルに出会わなかったら動いてなかったと思う。本当にありがとう」


 ツユちゃんは頭を下げて、席についた。


 ほとんど俺へのお礼で終わってしまったけど、それでいいのだろうか?みんなを見ても特に不思議に思っていないようだ。


「次は私!」


 ユウナが立ち上がって皆に頭を下げる。


「私は部活であんまりみんなと過ごせてなかったけど、こうしてお祝いしてもらえて凄く嬉しいです。私は一年生のときにちょっと色々あって塞ぎ込んでいて、たくさんヨルに迷惑かけて……ヨル、本当にごめんなさい」


 当時を思い出してのか、ユウナは突然謝罪を口にする。


「今、こうしてヨルの隣でいられることが凄く幸せ!

 水泳を続けたのも、ヨルに私が私として自信をもって見てもらえるモノがこれしかなかったから……でも、今では水泳も楽しい。

 ヨルの隣で彼女でいられることも楽しい。


 全部、ヨルのおかげだよ。本当にありがとう」


 いやいや、ユウナに今があるのは、ユイさんが世話してくれたからだと思うぞ。


 俺は……ユウナが俺を好きだって気づいていないまま、傷つけただけだ。


「俺なんて」

「ヨル、これは間違いないんだよ。決定事項!」


 笑顔で俺の唇を塞ぐユウナ。


 こちらからの反論は認めないようだ。


「はい。次はヨルだよ」


 そう言って、ユウナは座ってしまった。


 ツユちゃんに続いて、ユウナまで俺へのお礼でいいのか?高校生活の思い出とか語るんじゃないのか?


 俺はユウナに代わって立ち上がる。


 一人一人の顔を見れば、みんな本当に綺麗で、俺なんかためにここに着てくれたことが不思議で仕方ない。


「今日、卒業を祝ってくれてありがとう。俺の瞳に映る皆が綺麗で凄く眩しいよ」


 俺の言葉に少しばかりハニカム彼女たちに頭に手を当てて、少しだけ考える。


「俺の高校生活は必死だった。毎日、どうやって過ごせばいいのかわからなくて、色々なイベントが起きて驚きの連続だった。

 そうだな。俺が最初に驚いたのはレイカとの出会いだな」


 高校一年のときにレイカが教室にやってきたときのことを思い出す。


「うふふふふふふふふふふふふふふふふ」

「ねぇ、ヨル。いい加減気づいてあげたら?」


 いつの間に登校してきたのか、セイヤから声をかけられる。


「うん?」


 言われて顔を上げれば、そこには赤茶髪のユルフワロングの超絶巨乳美女が倉峰の席に座って、こちらを見ながらニコニコしていた。机に胸が乗ってます。


「うわっ!誰?」

「どうもどうもどうも。やっぱり男性はいいですね。見ていてあきません。ずっと見ていたいです~」


 俺が貞操概念逆転世界にきて、初めて直接的に男性を求めるような言葉を言われた言葉だと思う。


「あの日、テルミに出会って、あの日から色々なことが動き出した。

 部活を考えるようになって男子応援団を作ってタエにボディーガードをしてもらった」


 レイカ、テルミ、タエに視線を向ける。


「夏には合宿に行って、家族で旅行して、ユウナはそのとき塞ぎ込んでいて、それが俺のせいだって知らなくて……俺も悩んでいて、そんなときツユちゃんと出会った」


 ユウナ、ツキ、ツユちゃんを見る。


「体育祭で、男子応援団として歌って……青葉祭で皆に告白してからは本当にあっという間だった。冬にはランの駅伝を応援に行って、誘拐されて皆の大切さを思い知らされた」


 ランを見れば、真っ直ぐに俺の話を聞いてくれている。


「昨年は海外からたくさん人が集まって、ヒナタにも出会えた。そのときも事件がいっぱいあって……いっぱい皆に迷惑をかけた」


 ヒナタを見て、ここにはいないスピカを思い出す。


「本当に色々なことがあった。全部、全部、みんなが居たから乗り越えることが出来た。俺と共にいてくれてありがとうございます」


 しばし、頭を下げた俺は顔を上げて一人一人の顔をもう一度見る。


「俺は学校を卒業して、成人になった。だから、ここでみんなに言っておきたい」


 卒業したことで、一つの道は終わりを迎え……ここから新しい門出が始まる。


「俺はみんなと離れたくない。だから、俺と結婚してほしい!」


 俺が歩む一歩目はここから始めたい。

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