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貞操逆転世界なのに思ってたのとちがう?  作者: イコ
時は流れる
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正常化

 レイカの後ろ姿を見た俺は、クイーンの言葉を聞かずにタワーから去って家路を急いだ。


 家に帰るとツキが居ると思っていた部屋の電気は暗くなっていて、タエも暗部の姿もどこにも気配は感じなかった。


「みんな……いなくなってる」


 テーブルにツキからのメッセージがないか探してみるが、どこにも何もない。


 俺はどこで間違えた?


 暗い部屋の中で一人で考える。


 レイカが言った言葉


「でもね……私は……醜い男の本性を見たことがあるのよ?」


 脳裏に伊集院是清の顔が浮かぶ。


「あなたの顔は……昔の彼にそっくりよ」


 俺が伊集院是清と同じ……それは、男性至上主義を訴え。

 女性を女性として扱っていない……


 あ~そうか。


 俺はいつの間にか自分が世界中の女性から求められるから、勘違いしてたのかな?


【邪神様】として成功して、彼女たちの横に並ぶために始めたのに彼女たちをそっちのけで他の女性のことばかり考えていたのかな?


 レイカ……失ってしまったのか?


 喪失感……誰かが言った。


 本当に大切なものは失ってからその大切さが分かると……


 レイカを失う?


 ほんわかした笑顔も……やわらかくて大きな胸も……全てを受け入れてくれていたレイカが……俺はいつの間にか調子に乗っていたんだ。


「バカだ。俺は本当のバカな奴だ」


 世界なんていらない。


 レイカが……ツキが……ユウナが……テルミが……ランが……タエが……ツユちゃんが……ヒナタが……側にいない世界なんて嫌だ。


 自然に瞳から涙が溢れる。


 自分のバカさに嫌気が差す。


 俺はどこかで貞操概念逆転世界だから、男の俺のワガママは全て受け入れてもらえると思っていた。


 彼女たちのことを考えているフリをして、俺は自分の欲に夢中になっていたんだ。


「はは、考えれば考えるほどバカだ」


 ふと、窓を見れば夜空の向こうに星が見える。


「死ぬか?」


 どうせ俺はヨルになった別人だ。

 ここにはいない存在なんだ。


「バカだな。そんなことしても何にもならない」


 むしろ、俺が自殺したなら、俺が代わったヨルはどうなる?


「はは、俺は俺一人で生きてるわけじゃないのに浮かれていたんだな」


 たくさん涙が流れた。

 たくさん自分を罵倒した。

 たくさん余計なことを考えて……ふと、スマホの光が見えた。


「レイカに嫌われて……思い出しているくせに他の彼女たちのことも蔑ろにしていたんだな」


 ツキは仕事があったのかもしれない。

 タエも母に呼ばれただけかも。


 スマホを手に取った俺は画面を見て固まる。


「これは?」


 画面には彼女たちからメッセージが入っていた。


『レイカ姉さんから連絡がありました。兄さんと話したいことがあります。これを見たらメッセージください』


 ツキは変わらないな。


『ヨル~私はヨルの味方だよ。絶対にもうヨルを裏切らないから』


 ユウナは昔のことを今も気にしているのかな?


『ヨル様。本日はお側にいられませんが何かあればすぐに連絡ください』


 今日はレイカと会うために俺が休暇を与えたんだった。


『ヨル。あなたはあなたが正しいと思ったことをしてね』


 ランの言葉には力がある。いつも俺を正しい方向に戻してくれる。


『ヨル君、私は信じています』


 テルミは、俺を疑った方がいいと思う。


『ヨル、側にいる』


 はは、ヒナタはまだ日本語が下手だな。


『いつでも私のお膝に休みにきてね』


 縁側で座るツユちゃんの膝で眠ったことを思い出す。


 彼女たちはレイカから話を聞いたのかもしれない。


 それでも俺を見捨てることなくメッセージをくれていたのに、俺は自分の世界に引きこもって彼女たちのことをまた考えて無かった。


「本当にバカだな。でも、みんなにメッセージを返す前に」


 俺はレイカにメッセージを送ることにした。


『ごめん。レイカが言うことが正しかった。俺はどこかで調子に乗っていて彼女たちのことを蔑ろにしていたのかもしれない。バカだった。レイカが俺に愛想を尽かしてしまうのも仕方ないよな。本当にごめん。でも、一言だけ……レイカのお陰で自分がバカだって気付けた。許してほしい」


 レイカから見捨てられるかもしれない。


 それでも、レイカ以外の彼女たちは俺を支えてくれると思う。


「それがあなたが出した答え?」

「居たのか」


 突然、暗闇の部屋の中で姿を現す。


「もちろんよ。あなたが出す答えを聞かなければならないもの」

「答えは出た。俺は世界はいらない。彼女たちが居れば良い」

「そう」


 彼女は暗闇の中で銃口を俺に向ける。


「どういうつもりだ?」

「私はね。世界の覇者なの」

「そうか」

「だから、全てのモノを私は手に入れる権限を持つ。そして、私が手に入れるモノは私が手に入れた時点で世界一でならなければならない。あなたは私と共に世界を手に入れるか、私を捨ててここで死ぬかよ」


 みんながクイーンは危険だと言っていた。

 その意味を今更ながら理解させられる。


 俺はここでも彼女たちの話をちゃんと聞いていなかったんだ。


「俺はまだ死ねない!!!彼女たちに謝るんだ!!!」


「グッバイ。マイスイートダーリン」


 銃声が部屋の中で木霊した。

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