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貞操逆転世界なのに思ってたのとちがう?  作者: イコ
時は流れる
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side殺し屋 ー 3

【シャドー】



 私の心は羽根よりも軽い。


 これが愛を知るということだろうか?


 彼は言った。側に居ろと。

 彼は言った。ワイフに成れと。

 彼は言った。ファミリーに成ろうと。



 それがどれだけ私にとって幸福なことなのか私は計り知れない幸せを手に入れることが出来た。


 女性ばかりの世界は、あまりにも心が大切だと言う。


 互いにけん制し合いナワバリを作り、警戒と配慮が必要だと言う。


 だけど……そんな彼女たちの気持ちが私にもわかったような気がする。


 独占欲


 自分の心に芽生えた小さな火は確実に私の心から生み出された感情に間違いない。

 もしも【邪神様】を傷つける者がいるのであれば、今すぐ出向いて殺してしまいたいと思うほどに。


「問う」

「なっなんです?」


 大神殿と言われる世界の中心的な共和国の教皇。

 その相手に向けて刃を向けている。

 これが神への冒涜であることは間違いない。

 それでも自分の中で生まれた神を守るために、私は他の神を崇める者を殺す。


「依頼を撤回する?」


 ある組織が管理する大神殿……旅立つ前に彼は言った……人を殺すのをやめてほしいと……もしも約束が無ければ全ての人を殺してでも彼の敵を葬っていただろう。


 だけど、この場に居る誰一人の命も散らしていない。


 ただ、身動きが取れないように手足は多少動かなくなっている者もいるが生きている。


「いっ依頼とは?」


 教皇は末端の者が出した依頼など把握していないのかもしれない。


「【邪神様】を暗殺する」

「魔に魅入られたのですか?」


 私の発言に教皇は意味が分からず返事をする。


「違う」


 本来であれば依頼書はすぐに処分する。

 もちろん、本来の依頼書はすでに処分してある。

 だけど、彼らが依頼したことを示すために再現させてもらった。


「これはあなたが主となる組織から依頼された依頼書。このまま組織ごと壊滅する?」

「拝見します」


 教皇は私から依頼書を受け取ると、マジマジと眺める。


 そして、側で倒れる側近に確認を取る。


「どうやら……我々があなたへ対して依頼をしたことは間違いないようですね」


 教皇は私への依頼を認め周りの状況をもう一度見渡す。


「あなたは【邪神様】?への暗殺依頼を取り下げたいということでいいでしょうか?」

「そう」

「うむ。あなたは……我々を全員殺すことも出来た。それなのに誰も殺さなかった。どうしてですか?」


 私は目を閉じる。別に油断していたわけじゃない。


 銃声が響いて凶弾が私を襲う。


 ……


 …………


 …………………


「大丈夫ですか?」



 私を心配する教皇の声。

 銃を放った信者は動ける者によって取り押さえられている。


 ……


 …………


 ……………………


「それは私のセリフ」


 凶弾が放たれた瞬間、私の前に立っていた教皇が身を呈して私を守ってくれた。


「ふふ。あなたは私の可愛い子たちを誰も殺さなかった。これはお礼です」


 凶弾は教皇の肩を貫いて壁へとめり込んだ。


「手当てを」


 私はまだ傷が浅い人間に教皇を連れていくように告げる。


「その前に先ほどの答えを聞かせてもらえますか?」

「……私は【邪神様】を愛してる。彼を殺すことは私が許さない」


 教皇はふらりと倒れるように支える者へ身を任せる。


「良き答えです。あなたの要求を飲みましょう。我が組織は東邦の神【邪神様】に一切の害を与えないことを現教皇たる私の名において宣言します」


 宣言を終えた教皇様は、そのまま担架で運ばれていった。


 残された者達が私を見る。


 倒れている者。

 壁にもたれている者。

 立ってこちらを見る者。

 誰かに支えられている者。


「約束は成された。【邪神様】への一切の害ある行動は禁止。

 さらに私は今日をもってヒットマンを廃業する。

 今後一切の接触、依頼を断る。

 ここに居る者達が証人となって、未来永劫約束させて」


 私を見る者達に向かって宣言をして、承認を求める。


 すると、その場にいた者達は頷き承諾を示す。


「よかった。それでは失礼する」


 この日起きた出来事は、外部へは秘匿された。


 しかし、組織に属した者達の間では、ある一文と共に記されることになる。



【邪神様】の使者キタル、東洋の神へ敬意を……


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