side情夫 ー 2
《小金井綺羅》
入学式の日。
大勢の女性を始めて見た。
今までもは父に外に出てはいけないということで、女性を見る機会が極端に少なく。
ボクが知っている女性は、女風宿で出会った女性と現在の親代わりだけだった。
他の女性にも会っているのかもしれないが、認識できていなかった。
大勢の女性から、奇異の目で見つめられることに耐えられなくなって気分が悪くなった。
隣に座っていた同い年ぐらいの男の子にそのことを告げると、保健室の存在を教えてもらった。
隣が男性で助かった。
「君は女慣れしてないんだね。ついて行こうか?」
「いや、教えてくれただけで助かったよ。ありがとう」
「ああ、気にしなくていい」
親切な彼に道を聞いて向かったのはいいが、途中で分からなくなった。
どうしたらいいのか悩んでいると
「うん?部室に何か用か?」
突然背後から黒髪の長身の男性から声をかけられる。
そこに立っていた人物は生きる活力が漲っている力強い人だった。
「男子専用の保健室があると聞いてきました」
きっと先輩の男性生徒だ。
この人に頼りたい。
そんな風に思わされる人で、すぐに質問を投げかけることが出来た。
「それなら」
案内された保健室へ招かれる。
座っているように言われて腰を降ろした。
「今、保険の先生呼んでくるから待ってて」
「親切にありがとうございます」
しばらく待っていると小柄で子供?と見間違いそうになる男性が白衣を着て入ってくる。
頼りがいのある先輩が、気分が悪いだろうと飲み物を差し出してくれる。
「大丈夫か?これを飲んでちょっとゆっくりしているといい」
女性がいなくなって、気分は少し落ち着いてきた。
「大丈夫そうだね。持病とかはあるかな?」
「いえ、急に気分が悪くなって」
「そっか、安心して休んでいけばいいからね」
「はい。ありがとうございます」
保健の先生の診察が終わって、ベッドへ横になる。
頼りになる先輩は、僕の様子を見て安心したのか去っていった。
お礼を言いたかったけど。
名前を聞くこともできなかった。
しばらく眠っていたようで、保険の先生に起こされる。
「起きた?体調はどう?」
「はい。大分よくなりました」
「よかった。そろそろ終了の時間だから、鞄をもって帰るといいよ」
「ありがとうございました」
「うん。男子は女子といるだけで体調を崩す子もいるから、気兼ねなく来ていいからね」
先生から受ける優しさにお礼を述べて保健室を後にする。
やっぱり男性は優しい。
男性と過ごしていると落ち着く。
教室に戻ったボクは扉を開いて、大勢の女性が座っている光景に恐怖を感じた。
一斉に向けられる視線が怖い!
「遅れてすいません。体調が優れなくて……自己紹介は終わったみたいですね。小金井綺羅です。今日は体調が悪いのでこのまま失礼します」
ボクは鞄を掴んで教室を飛び出した。
女子の視線に耐えられなかった。
そのことを親代わりをしてくれているおばさんに相談した。
「そう……女性が怖いのね」
おばさんは心配そうな顔をして、ボクが座るソファーの横に腰を降ろす。
「なら、女性に慣れる必要があるわね。私で良ければ協力するわよ」
「ありがとうございます」
最近香水をつけ始めたのか、匂いがキツイ。
おばさんが近づいてきて、ボクの身体を弄っていく。
何をしたのかわからない。
不快感と嫌悪感。
匂いがキツイので吐きそうだ。
それは一時間ぐらい続いて、満足したのか離れていった。
「さぁご飯にしましょう。作ってしまうから、先にお風呂に入ってしまって」
「はい。ありがとうございます」
作ってくれるご飯は美味しい。
ただ、食事をした後はすぐに眠くなる。
それからの数字は学校に慣れる日々で、疲労からも眠くなっているのだと自分に言い聞かせていた。
ふと、掲示板に貼ってある張り紙が目に入る。
「男子応援団部員募集?」
男子応援団と言うぐらいだから男性が多くいるのだろうか?女性ばかりに囲まれる生活が正直辛い。
少しでも心を休めることが出来るなら……僕はそんな気持ちで、男子応援団の張り紙を凝視して入部届を提出するため放課後に部室へと向かった。
「失礼します」
扉を開く際に挨拶をすると、ソファーに緑色の髪をした男子生徒がヘッドフォンを付けて寝転んでいた。
「うん?誰だ?」
男子生徒がヘッドフォンを外して問いかけられる。
「あの、入部希望で来ました。小金井綺羅です。よろしくお願いいたします!」
「おっ初じゃん。よしよし。セイヤ!」
ヘッドフォン先輩が大きな声を出すと、奥の部屋から白銀髪の綺麗な人が出てきました。
男性なのか、女性なのかわからないほど綺麗な人で…
「ヨウヘー。何?」
「入部希望者だって」
「おっ初だね」
声を発して男性だと認識出来た。
「おっお願いします」
「は~い。今日は僕等しかいないから後日、現在の応援団メンバーで面接させてもらうね。mainのID教えてくれる」
「あっはい」
父が僕に買ってくれたプレゼントで古い型だけど大切にしているスマホ。
あまり使ったことがなかったけど。
初めて、父さんとおばさん以外の人が登録される。
「よしよし。じゃあ後日連絡するからよろしくね」
「はい」
二人とも優しそうな男性で、ホッとした。
部室を出て行こうとして扉に手をかけたところで、扉が開かれる。
「えっ?」
「うん?おう。君は入学式のときの」
「ヨル。入部希望者だって。一年生」
「そうか。良く来たな。歓迎するぞ」
「面接がまだだよ」
「もう合格で俺はいいけどな」
頼りになる先輩が入ってきて、他の先輩たちと話をする。
「はいはい。まぁたぶん合格だと思うけど。形式上ね」
綺麗な顔の先輩が笑顔で話していることに、ここの雰囲気が良くて……好きだなって思えた。
「とりあえずすぐに連絡するから。よろしくね」
「おう。またな」
二人の先輩に見送られて部室を後にする。
久しぶりに男性に囲まれて、気持ちが軽くなるのを感じた。
「今日はいい日だ」
そう思いながら家に帰った。