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貞操逆転世界なのに思ってたのとちがう?  作者: イコ
歪な世界編
152/223

新入生


 桜も散り始める春真っ只中。


 青葉高校には新たな顔ぶれが登校して、入学のためへ集合する。



 俺は入学式の見学者として、体育館に向かっていた。



「あっ!」



 体育館近くの男性用トイレに行った帰り、タエが待っているところに戻ろうとして、女子生徒と鉢合わせしてしまう。



 ぶつかったわけではないが、女子生徒の声で立ち止まる。



「えっ?」


「あっあの!すいません」




 一人で行動してまずかったかな?と不用心さを食いながら、女生徒を見ると顔にかかるまで伸びた前髪。制服を押し上げる胸部。



 アンバランスな雰囲気を持つ少女を警戒しながら次の言葉を待つ。



「あの!体育館ってどっちですか?」


「へっ?」


「わっ私、しっ新入生で学校に慣れてなくて」



 必死に話そうとするが、ボリュームがおかしい。


 凄い大きな声で内容を伝えてくれるのは嬉しいけど。



「なるほどね。わかったから落ち着いて」



「はっ!すっすいません」



 俯いて申し訳なさそうな姿を見せるのはこちらの方が申し訳なくなる。




「ううん。大丈夫だよ。俺は二年生の黒瀬夜。体育館に向かう途中だから一緒に行こうか」


「いいんですか!!!」


「うん。行こうか」


「あっありがとうございます」




 胸と声量が凄い女の子という印象で、タエの元に戻って体育館へ案内する。



 本来は教室で案内した方がいいかもしれないけど。


 時間的には生徒たちが入場を開始しているので、神崎先生に迷子を伝えて案内してもらった。




「あっありがとうございました」



 体育館の外ではあったけど。

 最後まで大きくてハキハキとした気持ちのいい声で印象的な子だった。




「私達も行きましょう」


「うん」



 タエと共に親族の席へと移動する。



 新入生を迎える入学式に参加したのは、新生徒会長である最上照美の晴れ姿を見るためではあるが、一年生首席合格者である黒瀬月の挨拶を聞くためでもある。



 二人ともその学年の成績トップと言うだけでも凄いことではあるが、それぞれの才能を発揮し始めていた。



「新入生の皆さんご入学おめでとうございます」



 自信に満ち溢れ、気品を感じるテルミの挨拶は最上級生として誇らしく美しい。



 昨年のレイカと比べている者もいるが、テルミも負けないリーダーシップと生徒会業務を素早く処理する手腕。それらはレイカに劣ることはない。




「一年生代表 黒瀬月」



「はい!」




 青葉高校は空前の出願率を誇っていたそうだが、ツキはその中でも飛びぬけた成績で首席合格を果たした。

 最近は、セイ母さんの手伝いでモデル業も始めたそうだ。


 まだまだ発展途上ではあるが、ツキならば必ず成功できると思っている。




「春のうららかな日差しの中で」




 ツキの挨拶が始まって、凛々しい姿に感動してしまう。



 最近はモデル業のお陰なのか、あか抜けて綺麗さに磨きがかかっている。



 二人の晴れ姿に満足しながら、今年も多くの女子生徒が入学している中で、男子生徒の姿はほとんど見かけることはなかった。



 俺たちの世代は250名ほどが入学したそうだが、今回は200名を切っているそうだ。




「さて、二人の挨拶も終わったし避難しようか」


「はい」




 親族席に男性がいるだけで、若干ざわつきを感じていたので、早々に退出して男子応援団の部室へと移動した。



 春休みであっても男子応援団の部室の鍵だけは自由に使ってよいことになっている。



 男子応援団の部室前に来ると、男子生徒が立っていた。




「うん?部室に何か用か?」




 俺が問いかけると、金髪?に碧眼の美少年が振り返る。



 幼い印象はあるものの、セイヤに負けないほど美しい容姿に一瞬驚く。



 昨年も感じたことだが、今年の一年のトップになる子だ。




「男子専用の保健室があると聞いてきました」




 男子応援団の隣にカオル先生が保険医をしている保健室がある。



 よく見れば顔が白くなっている。




「それなら」




 俺はカオル先生がいる保健室を覗いて、姿が見えなかったので彼をベッドで座らせる。




「今、保険の先生呼んでくるから待ってて」


「親切にありがとうございます」




 美少年にお礼を言われるのは悪い気はしない。



 タエに職員室を見に行ってもらい。


 俺は男子応援団の扉を開いた。



 鍵がかかっていなかったので、もしかしたらと思いながら扉を開くと、ベッドにカオル先生が寝転んでいた。




「うわっ!ヨル君どうしたの?」


「先生。入学式で気分を悪くした生徒がいるので、お願いします」


「ああ。男子?入学式は毎年、何人かは来るんだ。大勢の女子に囲まれて気分を悪くしちゃう子がね。待っててすぐ行くよ」




 俺は気分が悪そうな美少年に飲み物を持っていく。



「大丈夫か?これを飲んでちょっとゆっくりしているといい」



 水を手渡して顔色をうかがう。



 休憩したことで先ほどよりも顔色が良くなっていて、ホッとしているとカオル先生がやってきて診察をしてくれる。




「大丈夫そうだね。持病とかはあるかな?」


「いえ、急に気分が悪くなって」


「そっか、安心して休んでいけばいいからね」


「はい。ありがとうございます」




 彼を寝かせたあとは、カオル先生が見てくれるということで、俺は男子応援団の部室でタエを待って一緒にお茶を飲んで過ごした。



 入学式からオリエンテーションが終わると、テルミとツキもやってきて四人で帰るまで外の新入学生を見ながらゆっくりと過ごした。


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