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貞操逆転世界なのに思ってたのとちがう?  作者: イコ
歪な世界編
151/223

告白ラッシュ

 最近増えつつある。



 告白ラッシュ。



《邪神様》としてデビューを果たしたことで、知名度が上がり他校の生徒や、OLさん、JD、JC、JSにまで告白されたときは驚いた。


 上はパトロンになりたいと言うマダムまで居たが、その辺は東堂家対応してくれることになったので一安心だ。



 レイナさんに相談をすると笑顔で対応してくれた。

 暗部?っていう人たちを総動員してくれているそうだ。




 そして、本日は新入生から呼び出しを受けた。




 新入生と言っても入学を控える新一年生で、数か月前まではJCだった子なので幼さを残す可愛らしい女の子に呼び出される。



 ツキと同い年の子たちには結構な頻度で告白されているのでいつもの事かと待ち合わせ場所へとやってきた。


 有名税と言えばいいのか……こういうことを蔑ろにすると後で絶対によくないことが起きると思っているので全て対応するようにしている。




「ごめんね。お待たせ」




 他の数名とも待ち合わせをしているので、一人の子を待たせるのはよくあることだ。


 待ち合わせ場所に来ないと思う子も出てきて帰ってしまう子もいる。

 一応連絡先が分かる子には謝罪のメッセージを送るようにしている。



 今回は待っていてくれたようだ。




「いえ、お呼び出ししたのは、わたくしですから気にしません」




 ツユちゃんと同じぐらい身長が低くて可愛らしい女の子。

 ロングの黄色い髪を、ドリルのように巻いて髪を編み込んでいる。

 つい、彼女の髪に視線を向けてしまう。



 手紙には、名前と年齢、見た目の特徴と待ち合わせ場所が記されていて、話したいことがあるので来てほしいという内容だった。



 二人きりというわけにはいかないので、一応姿は見えていない物陰にタエがボディーガードとして控えてくれている。




「今日は話があるっていうことでいいんだよね?」




 俺の問いかけに対してしばし考える素振りを見せる。




「……はい。あなたが黒瀬夜さんでよろしいのですね?」




 そして、逆に質問を投げかけられる。



 告白をするつもりなら、俺の容姿を知っていてもおかしくないのに、話の方向性がおかしいと思いつつ自己紹介をした。




「ああ、俺が黒瀬夜だよ」



「そうですか……それでは、あなたに言っておきたいことがあります」




 言っておきたいこと?ここ最近、告白ばかりされていたので戸惑いを感じながら頷いてみる。




「わたくしは絶対にあなたを許しません!兄様を!わたくしの兄様を害したこと。兄の前で謝罪させます」




 いきなりの許しません。発言に兄と言われて戸惑いを感じる。



 彼女の兄に心当たりが全くない。



 そもそも、俺が交流がある男子は男子応援団の三人と顧問のカオル先生だけだ。



 それ以外の男子と言われて、思い出すのはレイカの婚約者である伊集院是人だが、彼女と伊集院是人の接点が思いつかない。




「お兄さん?」



「はい。兄様はあなたに恥をかかされたと言っていました。わたくしは兄を愛しています。だからこそ、兄様の無念はわたくしが果たしてみせる」



「心当たりがないが、君のお兄さんに悪いことをしたのなら謝罪することは構わないけど。いったい俺は何をしたんだい?」




 本当に心当たりが思いつかない。



「そうですか……無自覚に兄様は眼中にもないと仰るのですね!!!」




 えっ?えっ?俺そんなこと言ってないよ。


 ちゃんと謝る気あるよ。




「いいでしょう!あなたがそういう考えの方であるならば、私はあなたが完全にご自身がなさった悪意を暴き兄様の引きずり出して見せます。それまで首を洗って待っているがいいです」




 言いたいことだけ言って去っていくドリルJCに俺は只々唖然とするしかなかった。




「ヨル。大丈夫?」




 彼女が完全に去ったことを確認したタエが現れて、俺に問いかけてくれる。



 ここまでの告白する子達を見ていたタエも、相手の反応の違いに戸惑っているようだ。




「ああ、大丈夫。でも、あの子のお陰で俺はテングになっていたんだと思い知らされたよ」



「テング?」



「ああ、歌手としてデビューして、有名になって告白をたくさんされて……みんなに好かれるって……でも、俺の知らないところで誰かを傷つけていたのかもしれない」




 俺は周りの凄い子たちの彼氏として恥ずかしくない自分でいようと頑張っていたつもりだった。



 だけど、そのせいで傷ついたり、勘違いする人が出てくるかもしれない。




「ヨルは悪くないよ。全員の人のことなんてヨル一人で見れることじゃない!」



「ありがとう。タエ」




 タエが優しく抱きしめてくれる。



 タエはボディーガードであるが故に、一番側に長くいる時間が長い。



 だからこそ、心を許してしまう。



 弱さを見せてしまう。



 でも、今回の事はいい勉強になった。



 何か大きな事件を引き起こす前に、俺は俺の周りの人を助けられるように考えなければならない。


第5章です。


貞操逆転の歪んだ思想編です。

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