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貞操逆転世界なのに思ってたのとちがう?  作者: イコ
年越しから春へ編
145/223

旅立ち 

 整列する三年生たち……それを見送る二年生と一年生……



 中学の時は、これほど大勢の人はいなかったし、クラスメイト以外の人たちとの面識もなかった。

 今、この高校には大勢の友人がいる。

 顔を知り話をしたことがある知人がいる。



 それは……高校生活が俺にとって充実した日々であったことは言うまでもない。



 壇上にテルミが上がっていく。



「在校生代表 最上照美」



 卒業していく三年生に向けて、次期生徒会長であるテルミが壇上へ送り出すための言葉を述べる。



「多くを教えていただきありがとうございます。皆様の次なる発展を心より応援しております!」



 背筋を伸ばし、凛とした姿はテルミがこの一年で成長を遂げた証である。



 出会った頃は真面目でお堅い先輩だった。

 今ではしっかり者で、みんなをまとめる統率力も持ち合わせる頼れるお姉さんだ。



 そんなテルミの姿は凛々しくてカッコよかった。



 テルミに代わって壇上に上がっていくのはレイカだ。



 こうして同じ学び舎で過ごすのも最後になると思うと感動してしまう。



「卒業生代表、東堂麗華」



 レイカの澄み切った声が卒業生総代として、別れの言葉を読み上げる。



 俺の入学式でも在校生代表として話していたレイカ。

 そのときは自分の彼女になるなんて思ってもいなかったので気にも留めていなかった。


 だけど、こうしてレイカが壇上にあがって挨拶をしている光景を見ると一年の時が流れたことを思い知らされる。



「今日は私たちのために卒業式という素晴らしい式を開いて頂き、ありがとうございます。今日、無事に卒業式を迎えることが出来ました。在校生の送辞など暖かい言葉ありがとうございます」



 レイカは挨拶をして、先生や在校生……来賓や保護者へ礼を述べていく。


 それから生徒会として過ごした日々や、体育祭の思い出……そして、ここで出会った人々への感謝の話をして、学んだことを述べていく。



「最後に皆様に伝えておきたいことがあります」



 挨拶の締めくくりになり、涙を流す三年生や保護者たち。


 そんな人たちに向けてレイカが笑顔で語り出す。



「私達三年生は今日をもってこの学園を去ります。青葉高校は他のどんな学校よりも敷地が多く、たくさんの人との出会いがありました。


 何よりも、私にとっては素晴らしき友や師との出会い……そして、結婚相手を授けてくれた場所です。


 皆さん、男性が減少していく世界の中で、ただ男性に求めるのではなく……心から愛してもらえるように……そして、私達が男子を育てるぐらいに……


 強く!

 賢く!

 美しく!


 花のように咲き誇りましょう!!!」



 レイカの挨拶に会場中で拍手が巻き起こる。


 レイカは、学園内でも人気のある生徒会長だった。


 彼女の言葉は今後の青葉高校に通う女子たちにとって指針になっていくことだろう。




「ヨル~!!!」




 感動して物思いにふけっていると、不意打ちでレイカに名前を呼ばれる。



 壇上から呼ばれるなんて思いもしない。



「大好きだよ~~~!!!」



 最後の最後にやってくれたな!




「以上をもって卒業生代表 東堂麗華の挨拶を終えたいと思います」




 満面の笑みを浮かべたレイカは、大それたことを仕出かしたことなど微塵も感じさせない凛とした態度で壇上を降りていく。



 一瞬、会場全体が静けさに包まれるが、壇上を降りていくレイカに、先ほどと同じぐらい大きな拍手が送られた。



 卒業式。



 もっと感動的で涙に包まれたものだと思っていた。



 だけど、レイカの行動によって多くの者達が笑顔で会場を後にする。



 会場を出て行く先輩方を見送る位置で、男子応援団の四人で並んで先輩たちを送り出す。



 一人一人から握手を求めれた。


 レイカのように彼氏をゲットすると意気込む者。

 俺のファンだと言って、卒業後も応援すると言ってくれた者。

 ワンチャンスあるなら、私も彼女にしてほしいと申し出る者。



 様々な言葉をかけてくれる先輩たちは、明日から青葉高校にはやってこないのだ。



 最後に現れたのはレイカとキヨエさんだった。



「ヨル君。君にはこれまでたくさん楽しませてもらった。高校卒業後はタワーに私もお世話になると思うからよろしく頼むよ」



 キヨエさんは卒業後はレイカと共に大学に進学することが決まっている。

 それ以降はレイカの補佐として、レイカを支え、俺を助けてくれると言ってくれていた。



 三年生、最後となったレイカと握手を交わす。



「ヨル。私と出会ってくれてありがとう。私を助けてくれてありがとう。

 あなたがいたからこそ私は晴れ晴れとした気持ちで青葉高校を去ることが出来るわ」




 本当に清々しい顔をしたレイカは、最後まで高校生活を謳歌したのだろう。




「それと……今晩だけは私だけの彼氏でいてね」




 それは少し前から決まっていたことだ。



 卒業式の日。



 レイカは俺と二人きりで過ごすことを願った。



 他の彼女たちにも了承を取り、レイカの高校生活最後の日を俺と二人で過ごす。




「ああ。分かっているよ。午後からは俺はレイカだけの彼氏だ」




 俺の返事にレイカは、握手で我慢できなくなったのか、思いっきり俺に抱き着いた。




「ありがとう。ヨル。愛しているわ!」


「ああ。俺も愛してるよ」




 それは他の者達に聞こえないような小さな声で告げられた。


 恋人同士の会話。


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